武蔵小杉ブログ(武蔵小杉ライフ 公式ブログ)

川崎市中原区の再開発で変貌する街・武蔵小杉のタウン情報サイト『武蔵小杉ライフ』の公式ニュースブログ。街の最新情報やさまざまな話題をご紹介します。

2009年
11月29日

川崎歴史ガイド・中原街道ルート(4):「明治の醤油作りと八百八橋」

hatsushimo.gif

川崎歴史ガイド・中原街道ルートをめぐる連載第4回目は、「明治の
醤油作りと八百八橋」
です。
これは、川崎歴史ガイドのオフィシャルガイド上においては、中原街道
において明治3年(1870年)から醤油の醸造を行っていた石橋醤油店
のみを取り上げたものですが、本エントリでは「八百八橋」の歴史に
ついてもあわせてご紹介します。

■石橋醤油店(現在は営業していません)
石橋醤油店(現在は営業していません)

■「明治の醤油作り」のガイドパネル
「明治の醤油作り」のガイドパネル

前回の「旧名主家と長屋門」からさらに歩いていくと、西明寺のカギ
道よりも手前に石橋醤油店の建物が見えてきます。その近くにガイド
パネル
が立っているのですが、この後ろの広い敷地が、石橋醤油店
がかつて醸造をしていた場所
です。

ガイドパネルの後ろにはちょっとしたスペースがありまして、そこに
展示されているのは・・・、

■移設された八百八橋と記念碑
移設された八百八橋と記念碑

これは、別の場所から移設された八百八橋の一部と、記念碑です。
「八百八橋」とは、1772年から1781年にかけて上丸子で「ほしか屋」
という肥料店を営んでいた野村文左衛門が私財を投じて中原街道
沿いの各地に架けた石橋
のことです。
実際に808もの橋があったかどうかわかりませんが、野村文左衛門は
「人々のために1,000の橋を架ける」という志を持っていたようです。
その功績を讃えて、後年「八百八橋」と呼ばれるようになりました。

1964年には武蔵中原観光協会が八百八橋の顕彰碑とともに石橋を
一部復元し、武蔵小杉駅北口駅前広場に展示
しましたが、広場の
拡張により顕彰碑と歩道に埋め込まれた石橋の一部が残されるだけ

になってしまいました。
日常的に通行されていても、「え、どこのこと?」と思われる方もいら
っしゃるのではないでしょうか?
(これについてはまた後日エントリします)

そこで、NPO法人小杉駅周辺エリアマネジメントが、2008年2月16
日に「八百八橋を探せ」というワークショップを企画し、地域の子ども
たちと街に残された八百八橋を探し出し、関係各所の協力を得て
保存
を行いました。

■「こすぎこども探検隊」八百八橋を探せ! ワークショップのまとめ
http://musashikosugi.or.jp/media/PDF/workshop-808-0.pdf

エリマネによる上記のまとめにも記載されていますが、発見された
石橋の保存に当たっては、鹿島建設が施工協力したほか、石橋醤油
店が無償で場所の提供
を行っています。

・・・ん? 石橋醤油店・・・「石橋」?
そうです。実は、石橋醤油店も、かつて地域に多くの石橋を寄贈した
ことに由来して石橋醤油店という屋号になっている
もので、中原街道
周辺で数多く設置された石橋には深いゆかりをもっています。
野村文左衛門が架けた石橋を保存するのには、まさにふさわしい
場所ではないかと思います。
この石橋の保存にあたり、石橋醤油店も「子どもたちのためなら」と
快く場所を提供され、2008年5月18日には移設展示記念セレモニー
が実施されました。

■八百八橋移設展示記念セレモニー
八百八橋移設展示記念セレモニー

このセレモニーでは醤油の醸造所を利用した音楽イベントも行われ、
本ブログでもたびたび登場しているNPO法人カワサキミュージック
キャスト
が運営を行っていました。

■醸造所での「ちょっきんず」ライブ
醸造所での「ちょっきんず」ライブ

ライブを行ったのは、こちらもおなじみ「ちょっきんず」。川崎生まれの
三人姉妹のバンドです。
写真右奥には、醤油を醸造するための巨大な樽が見えますね。

■巨大な樽
巨大な樽

人の身長よりも高い樽には、梯子がかけられています。天井に頭を
ぶつけそうな高さです。

■並べられた樽
並べられた樽

樽はひとつではなく、醸造所のなかにいくつも並べられています。
この写真は音楽イベントの設営をしているところですが、手前で
機材の調整をしていらっしゃるのはカワサキミュージックキャスト
理事長の反町充宏さん
です。
(関連リンクのインタビューなどもご参照ください)

■頭上の樽
頭上に見える樽

頭上を見上げると、天井近くの高いところにも樽が並べられていま
す。この醸造所で、たくさんの醤油がつくられていたことが偲ばれ
ますね。

■醸造の道具
醸造の道具

一方足元を見ると、醤油の醸造に使われたと思われる古い道具
たくさん残されています。具体的にどのような使い方をしていたのか
わかりませんが、いずれも歴史を感じさせる古いものです。

■「石橋醤油店」
「石橋醤油店」

壁際の桶には、はっきりと「石橋醤油店」の文字がありました。写真
にはありませんが、石橋醤油店は当時「キッコー文山」という商標を
使用していまして、そのマークが今でも残っています。

さて、歴史ある石橋醤油店も、現在では営業を行っていません。
川崎市文化財団のウェブサイトに記載がありますが、川崎歴史ガイド
を探訪されている方やガイドパネルをご覧になった方が何かと質問
をされて、ご迷惑になったりもしているようです。

■川崎市文化財団 川崎歴史ガイド 中原街道ルート
http://homepage2.nifty.com/k-bunkazaidan/guide/03.htm
(※ページ下部に注意書きがあります)

こういった歴史めぐりをされる方は探究心豊かでいらっしゃることが
多いのだと思いますが、歴史ガイドをめぐるにあたってはあくまで
パネルと旧跡を眺める程度に留めておくのが良いですね。

・・・というわけで、第4回は石橋醤油店と八百八橋についてあわせて
ご紹介いたしました。八百八橋移設展示記念セレモニーと醸造所の
写真につきましては、中原区およびNPO法人カワサキミュージック
キャストよりご提供
をいただきました。ありがとうございました。

次回の第5回は、「小杉御殿と『カギ』の道」です。

■旧石橋醤油店 マップ
旧石橋醤油店

【関連リンク】
NPO法人小杉駅周辺エリアマネジメント 公式ウェブサイト
NPO法人カワサキミュージックキャスト 公式ウェブサイト
2008/8/8エントリ 中原街道のカギ道(前編) 小杉御殿と西明寺
2009/2/11エントリ In Unity2009 反町充宏実行委員長インタビュー(前編)
2009/2/12エントリ In Unity2009 反町充宏実行委員長インタビュー(後編)
2009/9/23エントリ 川崎歴史ガイド・中原街道ルート(1):「丸子の渡し」
2009/10/6エントリ 川崎歴史ガイド・中原街道ルート(2):「旧原家母屋跡地」
2009/11/9エントリ 川崎歴史ガイド・中原街道ルート(3):「旧名主家と長屋門」

Comment(1)