川崎市が川崎縦貫高速鉄道の計画休止を発表、南武線長編成化を国交省・交通政策審議会に提案へ
【Reporter:はつしも】
2015年7月16日に、川崎市議会のまちづくり委員会が開催されました。
同委員会においては、「新たな総合計画における交通体系」が報告され、長年の懸案だった「川崎縦貫高速鉄道」の計画を休止し、本年度中に開催予定の交通政策審議会への提案を見送ることがあきらかになりました。
同時に、川崎市では川崎縦貫高速鉄道を見送るかわりにJR南武線の長編成化等を同審議会に提案することとしており、今後連続立体交差化とあわせて推進していくことが発表されました。
■川崎縦貫高速鉄道の計画路線図
交通政策審議会は国土交通省の諮問機関であり、概ね15年に1度の開催を予定しています。
新線開業にあたっては同審議会の答申に位置づけられる必要があり、向こう15年間は川崎縦貫高速鉄道は検討の俎上にのぼらないことになります。
また川崎市では今後総合都市交通計画の見直しも予定しており、「川崎縦貫高速鉄道」が近い将来に実現する可能性が現時点でほぼ消滅しました。
■川崎市 平成27年度 まちづくり委員会
http://www.city.kawasaki.jp/980/page/0000067733.html
■2015年7月16日 まちづくり委員会資料
http://www.city.kawasaki.jp/980/cmsfiles/contents/0000067/
67733/270716machi1-1.pdf
まちづくり委員会における報告内容は、上記の川崎市ウェブサイトに資料が掲載されています。
■まちづくり委員会資料 川崎縦貫高速鉄道に関するポイント
<これまでの経緯>
○市民の交通利便性確保や鉄道ネットワークの充実、市内鉄道路線の混雑緩和等を目的に川崎縦貫鉄道計画を策定
<課題と今後の方向性>
○総合都市交通計画に位置付けられている川崎縦貫鉄道計画の必要性は認識
○川崎縦貫鉄道への導入を前提としていた新技術の実用化には、今後長期の時間を要する見込みであるとともに、開業を迎えるころには、超高齢化・人口減少社会が到来し、市民ニーズが変化する可能性がある
○当該鉄道計画は、財政負担が大きい
⇒以上のことから、事業着手できる環境にはないと判断
<今後の進め方>
○必要性はあるものの、事業着手できる環境には無いことから、川崎縦貫鉄道計画については休止とする
○交通政策審議会に対して、川崎縦貫鉄道の提案を見送る
○交通政策審議会の答申(2016年3月予定)を踏まえて、平成29年度を目途に、以下に示す今後の方向性等を基に総合都市交通計画の見直しを行い、川崎縦貫鉄道計画の位置付けを明確にする
○見直した総合都市交通計画に基づき、計画的な取組を推進する
<今後の方向性>
(1)身近な移動を支える地域交通ネットワークの充実
○地域の特性や市民のニーズを踏まえた駅を中心とする持続可能な輸送体系(路線バスを基本)の構築
○路線バスの定時性、速達性向上やバス利用者の利便性向上に向けた取組 等
(2)既存鉄道路線の輸送力増強等による、混雑緩和の促進・広域鉄道ネットワークの充実への貢献
○JR南武線の長編成化に向けた取組を推進
○東急田園都市線、小田急小田原線の複々線化の促進 等
上記の通り、川崎市としては川崎縦貫高速鉄道の必要性は認めるものの、技術的なハードルや巨額の財政負担を勘案し、計画を休止するということです。
提案を見送った交通政策審議会の答申が2016年3月に出ることも踏まえて、川崎市の総合都市交通計画を見直し、あらためて川崎縦貫高速鉄道の位置づけを明確にすることになります。
現時点においては川崎縦貫高速鉄道は「休止」ですが、計画の見直しにより「中止」ないしはそれに近い再定義がなされるのではないでしょうか。
一方、川崎市は2015年1月29日にJR東日本と包括連携協定締結を発表しました。
本協定は川崎市内における地域と鉄道の持続的な発展に向けて両者が連携・協力を推進することを目的としたもので、南武線の利便性向上が施策として位置づけられています。
その中で南武支線に「(仮称)小田栄新駅」を設置することについても検討を進めることが合意されていまして、協定内容の詳細は2015/2/5エントリでもお伝えしておりました。
■川崎市とJR東日本の包括連携協定調印式
※川崎市報道発表資料より
■川崎市報道発表 川崎市と東日本旅客鉄道株式会社との包括連携協定の締結について
http://www.city.kawasaki.jp/templates/press/500/0000064646.html
■南武線に導入された新型車両「E233系」
また本協定に先立って、南武線に快速電車が復活したほか、新型車両「E233系」が導入されるなど利便性の向上がはかられるようになってきました。
新型車両は従来よりも幅広で定員が約1割増加し、川崎縦貫高速鉄道の目的であった「南武線の混雑緩和」に寄与するものです。
■連続立体交差化された武蔵小杉付近の南武線
さらに将来的には武蔵小杉駅—尻手駅間の南武線連続立体交差化事業も具体化を控えており、これは川崎市の負担により実施される事業です。
川崎市としては川崎縦貫高速鉄道よりも、既存の南武線に投資をしていくということでしょう。
一方、冒頭で申しあげたとおり川崎市では、今回の交通政策審議会に対して横浜市営地下鉄のあざみ野延伸など新線整備のほか、既存路線の改良として「南武線の長編成化」を提案する方針であることがあわせて発表されました。
■川崎市まちづくり委員会が交通政策審議会に提案する事業
<新線>
○横浜市営地下鉄3号線延伸(あざみ野〜新百合ヶ丘)
○川崎アプローチ線(川崎〜浜川崎)
○東海道貨物支線貨客併用化(品川・東京テレポート〜桜木町)
<線増>
○小田急小田原線複々線化(登戸〜新百合ヶ丘)
○東急田園都市線複々線化(溝の口〜鷺沼)
<改良>
○JR南武線輸送力増強(長編成化)
長編成化とは、現在6両編成である南武線を7両以上の編成に拡張するということです。
長編成化のためには各駅のホームを拡張する必要がありますので、これはこれで大きな事業です。
■優等列車が10両編成になった東急東横線
2013年には、東急東横線が副都心線などと相互直通運転を開始するのに伴い、従来8両編成だったものが急行・通勤特急・特急電車に限って10両編成になりました。
そのため、東急東横線では急行停車駅のみでホーム拡張が行われています。
南武線の長編成化がどのような形になるものか、現段階ではわかりません。
ただ武蔵小杉駅−尻手駅間の連続立体交差化は各駅の仕様を拡張するかつてないチャンスであり、長編成化の大きな契機となるものと思います。
日本全体ではすでに人口減が始まっているとはいえ、南武線沿線はまだまだ長期にわたって人口増が続くことが予想されています。
通勤ラッシュ時に利用される方にとっては、長編成化が実現するならば朗報かと思います。
【関連リンク】
武蔵小杉ライフ:再開発情報:川崎縦貫高速鉄道
2007/9/28エントリ 南武線の車庫・中原電車区
2009/2/8エントリ 中原電車区の早咲き八重桜
2010/3/13エントリ 横須賀線武蔵小杉駅本日開業、記念イベント開催
2010/3/14エントリ 横須賀線武蔵小杉駅、初の平日ラッシュ
2011/4/13エントリ 南武線快速電車が運行開始
2012/3/22エントリ 二ヶ領用水の桜のつぼみと、中原電車区の早咲きの桜
2012/5/30エントリ 中原電車区の鶴見線車両と、クモヤ145形
2013/1/24エントリ JR武蔵中原駅の発車メロディがフロンターレの応援歌に
2013/7/3エントリ JR東日本が南武線新型車両導入と各駅乗車人員を発表、武蔵小杉駅は28位に
2014/2/26エントリ JR南武線武蔵小杉駅の発車メロディが本日よりフロンターレ応援歌の原曲、ザ・クロマニヨンズ「ナンバーワン野郎!」に
2014/7/25エントリ 川崎市制90周年ヘッドマーク付の南武線が3編成運行中、デザインに「パークシティ武蔵小杉」が登場
2014/7/20エントリ JR南武線向河原駅前の踏切拡幅工事が完了し供用開始
2014/8/6エントリ JR南武線新型車両「E233系」が2014年10月導入、新型車両で叶える「あなたの夢」募集中
2014/8/16エントリ 向河原公園リニューアルで登場、「南武線車両ベンチ」
2014/10/4エントリ JR南武線新型車両「E233系」本日投入、武蔵小杉駅等で記念商品販売と「懐かしの写真展」がスタート
2014/10/23エントリ 南武線エキナカで、地産地消。「多摩川梨ジャム」使用商品を販売中
2014/10/30エントリ JR武蔵小杉駅の連絡通路で新キャラクター「多摩川梨くん」が南武線新型車両「E233系」を紹介中
2014/11/5エントリ JR南武線新型車両「E233系」乗車レポート
2015/1/19エントリ 八丁畷から、無人改札乗り換え。南武支線乗車レポート
2015/2/5エントリ 川崎市とJR東日本が包括連携協定を締結、南武支線に「(仮称)小田栄新駅」を2016年3月開業へ
2015年7月16日に、川崎市議会のまちづくり委員会が開催されました。
同委員会においては、「新たな総合計画における交通体系」が報告され、長年の懸案だった「川崎縦貫高速鉄道」の計画を休止し、本年度中に開催予定の交通政策審議会への提案を見送ることがあきらかになりました。
同時に、川崎市では川崎縦貫高速鉄道を見送るかわりにJR南武線の長編成化等を同審議会に提案することとしており、今後連続立体交差化とあわせて推進していくことが発表されました。
■川崎縦貫高速鉄道の計画路線図
交通政策審議会は国土交通省の諮問機関であり、概ね15年に1度の開催を予定しています。
新線開業にあたっては同審議会の答申に位置づけられる必要があり、向こう15年間は川崎縦貫高速鉄道は検討の俎上にのぼらないことになります。
また川崎市では今後総合都市交通計画の見直しも予定しており、「川崎縦貫高速鉄道」が近い将来に実現する可能性が現時点でほぼ消滅しました。
■川崎市 平成27年度 まちづくり委員会
http://www.city.kawasaki.jp/980/page/0000067733.html
■2015年7月16日 まちづくり委員会資料
http://www.city.kawasaki.jp/980/cmsfiles/contents/0000067/
67733/270716machi1-1.pdf
まちづくり委員会における報告内容は、上記の川崎市ウェブサイトに資料が掲載されています。
■まちづくり委員会資料 川崎縦貫高速鉄道に関するポイント
<これまでの経緯>
○市民の交通利便性確保や鉄道ネットワークの充実、市内鉄道路線の混雑緩和等を目的に川崎縦貫鉄道計画を策定
<課題と今後の方向性>
○総合都市交通計画に位置付けられている川崎縦貫鉄道計画の必要性は認識
○川崎縦貫鉄道への導入を前提としていた新技術の実用化には、今後長期の時間を要する見込みであるとともに、開業を迎えるころには、超高齢化・人口減少社会が到来し、市民ニーズが変化する可能性がある
○当該鉄道計画は、財政負担が大きい
⇒以上のことから、事業着手できる環境にはないと判断
<今後の進め方>
○必要性はあるものの、事業着手できる環境には無いことから、川崎縦貫鉄道計画については休止とする
○交通政策審議会に対して、川崎縦貫鉄道の提案を見送る
○交通政策審議会の答申(2016年3月予定)を踏まえて、平成29年度を目途に、以下に示す今後の方向性等を基に総合都市交通計画の見直しを行い、川崎縦貫鉄道計画の位置付けを明確にする
○見直した総合都市交通計画に基づき、計画的な取組を推進する
<今後の方向性>
(1)身近な移動を支える地域交通ネットワークの充実
○地域の特性や市民のニーズを踏まえた駅を中心とする持続可能な輸送体系(路線バスを基本)の構築
○路線バスの定時性、速達性向上やバス利用者の利便性向上に向けた取組 等
(2)既存鉄道路線の輸送力増強等による、混雑緩和の促進・広域鉄道ネットワークの充実への貢献
○JR南武線の長編成化に向けた取組を推進
○東急田園都市線、小田急小田原線の複々線化の促進 等
上記の通り、川崎市としては川崎縦貫高速鉄道の必要性は認めるものの、技術的なハードルや巨額の財政負担を勘案し、計画を休止するということです。
提案を見送った交通政策審議会の答申が2016年3月に出ることも踏まえて、川崎市の総合都市交通計画を見直し、あらためて川崎縦貫高速鉄道の位置づけを明確にすることになります。
現時点においては川崎縦貫高速鉄道は「休止」ですが、計画の見直しにより「中止」ないしはそれに近い再定義がなされるのではないでしょうか。
一方、川崎市は2015年1月29日にJR東日本と包括連携協定締結を発表しました。
本協定は川崎市内における地域と鉄道の持続的な発展に向けて両者が連携・協力を推進することを目的としたもので、南武線の利便性向上が施策として位置づけられています。
その中で南武支線に「(仮称)小田栄新駅」を設置することについても検討を進めることが合意されていまして、協定内容の詳細は2015/2/5エントリでもお伝えしておりました。
■川崎市とJR東日本の包括連携協定調印式
※川崎市報道発表資料より
■川崎市報道発表 川崎市と東日本旅客鉄道株式会社との包括連携協定の締結について
http://www.city.kawasaki.jp/templates/press/500/0000064646.html
■南武線に導入された新型車両「E233系」
また本協定に先立って、南武線に快速電車が復活したほか、新型車両「E233系」が導入されるなど利便性の向上がはかられるようになってきました。
新型車両は従来よりも幅広で定員が約1割増加し、川崎縦貫高速鉄道の目的であった「南武線の混雑緩和」に寄与するものです。
■連続立体交差化された武蔵小杉付近の南武線
さらに将来的には武蔵小杉駅—尻手駅間の南武線連続立体交差化事業も具体化を控えており、これは川崎市の負担により実施される事業です。
川崎市としては川崎縦貫高速鉄道よりも、既存の南武線に投資をしていくということでしょう。
一方、冒頭で申しあげたとおり川崎市では、今回の交通政策審議会に対して横浜市営地下鉄のあざみ野延伸など新線整備のほか、既存路線の改良として「南武線の長編成化」を提案する方針であることがあわせて発表されました。
■川崎市まちづくり委員会が交通政策審議会に提案する事業
<新線>
○横浜市営地下鉄3号線延伸(あざみ野〜新百合ヶ丘)
○川崎アプローチ線(川崎〜浜川崎)
○東海道貨物支線貨客併用化(品川・東京テレポート〜桜木町)
<線増>
○小田急小田原線複々線化(登戸〜新百合ヶ丘)
○東急田園都市線複々線化(溝の口〜鷺沼)
<改良>
○JR南武線輸送力増強(長編成化)
長編成化とは、現在6両編成である南武線を7両以上の編成に拡張するということです。
長編成化のためには各駅のホームを拡張する必要がありますので、これはこれで大きな事業です。
■優等列車が10両編成になった東急東横線
2013年には、東急東横線が副都心線などと相互直通運転を開始するのに伴い、従来8両編成だったものが急行・通勤特急・特急電車に限って10両編成になりました。
そのため、東急東横線では急行停車駅のみでホーム拡張が行われています。
南武線の長編成化がどのような形になるものか、現段階ではわかりません。
ただ武蔵小杉駅−尻手駅間の連続立体交差化は各駅の仕様を拡張するかつてないチャンスであり、長編成化の大きな契機となるものと思います。
日本全体ではすでに人口減が始まっているとはいえ、南武線沿線はまだまだ長期にわたって人口増が続くことが予想されています。
通勤ラッシュ時に利用される方にとっては、長編成化が実現するならば朗報かと思います。
【関連リンク】
武蔵小杉ライフ:再開発情報:川崎縦貫高速鉄道
2007/9/28エントリ 南武線の車庫・中原電車区
2009/2/8エントリ 中原電車区の早咲き八重桜
2010/3/13エントリ 横須賀線武蔵小杉駅本日開業、記念イベント開催
2010/3/14エントリ 横須賀線武蔵小杉駅、初の平日ラッシュ
2011/4/13エントリ 南武線快速電車が運行開始
2012/3/22エントリ 二ヶ領用水の桜のつぼみと、中原電車区の早咲きの桜
2012/5/30エントリ 中原電車区の鶴見線車両と、クモヤ145形
2013/1/24エントリ JR武蔵中原駅の発車メロディがフロンターレの応援歌に
2013/7/3エントリ JR東日本が南武線新型車両導入と各駅乗車人員を発表、武蔵小杉駅は28位に
2014/2/26エントリ JR南武線武蔵小杉駅の発車メロディが本日よりフロンターレ応援歌の原曲、ザ・クロマニヨンズ「ナンバーワン野郎!」に
2014/7/25エントリ 川崎市制90周年ヘッドマーク付の南武線が3編成運行中、デザインに「パークシティ武蔵小杉」が登場
2014/7/20エントリ JR南武線向河原駅前の踏切拡幅工事が完了し供用開始
2014/8/6エントリ JR南武線新型車両「E233系」が2014年10月導入、新型車両で叶える「あなたの夢」募集中
2014/8/16エントリ 向河原公園リニューアルで登場、「南武線車両ベンチ」
2014/10/4エントリ JR南武線新型車両「E233系」本日投入、武蔵小杉駅等で記念商品販売と「懐かしの写真展」がスタート
2014/10/23エントリ 南武線エキナカで、地産地消。「多摩川梨ジャム」使用商品を販売中
2014/10/30エントリ JR武蔵小杉駅の連絡通路で新キャラクター「多摩川梨くん」が南武線新型車両「E233系」を紹介中
2014/11/5エントリ JR南武線新型車両「E233系」乗車レポート
2015/1/19エントリ 八丁畷から、無人改札乗り換え。南武支線乗車レポート
2015/2/5エントリ 川崎市とJR東日本が包括連携協定を締結、南武支線に「(仮称)小田栄新駅」を2016年3月開業へ