中原平和公園の「彫刻展示広場」に並ぶ、7か国の彫刻家による9つの作品
【Reporter:はつしも】
「中原平和公園」は、その名前の通り平和を祈念する公園です。
同公園の用地はかつては「東京航空計器」の軍需工場だったものが戦後に米軍に接収され、米軍の出版センターが設置されていました。
1975年に日本に返還された際、隣接地にあった中原公園・木月住吉公園を統合し、現在の中原平和公園が1983年に開園しました。
このようなまとまった土地利用の転換が行われたことで、中原平和公園は武蔵小杉周辺において、等々力緑地に次ぐ40,740㎡の大規模公園として誕生しています。
■中原平和公園の彫刻展示広場
今回ご紹介するのは、中原平和公園の綱島街道側にある「彫刻展示広場」です。
ここには中原平和公園の開園年に開催された「緑と彫刻 国際彫刻シンポジウム」によりつくられた彫刻が展示されています。
■「緑と彫刻 国際彫刻シンポジウム」の記念碑
彫刻展示広場の中央には、「緑と彫刻 国際彫刻シンポジウム」の記念碑があります。
ここには9体の彫刻を作り上げた、7か国の彫刻家の名前が記されていました。
■(1)「太陽」(イバン・アバスカン フランス)
まずこちらは、「太陽」という作品です。
その名前の通り丸い太陽のようなかたちで、丘の上から広場を照らしています。
■(2)「ここより…」(秋山礼巳 日本)
そして「太陽」の近くには、「ここより…」という作品があります。
まるで「どこでもドア」のように、彫刻の中を通ってどこかに行けそうです。
写真は「ここより…」の先が、「太陽」につながるイメージで撮影してみました。
■(3)「門」(リュボミール・カリナ クロアチア)
たいへん重厚感のある作品「門」です。
門ではありますが間口はたいへん狭く、隙間から向こう側を覗く感じです。
■門の向こうに見える、犬の散歩
「門」の向こうを覗いてみると…、散歩中の犬が見えました。
この彫刻展示広場は愛犬家の皆さんが多く、自然発生的なコミュニティスペースのようになっています。
■(4)「戦争と平和」(ジム・サンボーン アメリカ)
2つのタワーが並ぶこの作品は、「戦争と平和」という題がつけられています。
左側の、ヒビが大きく入った黒い塔が「戦争」、白い方が「平和」でしょうか。
■(5)「亜空の環」(岡本敦生 日本)
続いて「亜空の環」という作品です。
これを作成した岡本敦生氏は、当時の初歩的なコンピュータプログラムによって時空のはじまりを表現することを試み、近いコンセプトの作品群を生み出しています。
■岡本敦生氏ウェブサイト アーカイブス 亜空間に興味があった時代2
http://atsuo-okamoto.com/arc/j/jikuu.html
作者である岡本敦生氏のウェブサイトには、1983年当時の「亜空の環」の写真が掲載されています。
開園当時の中原平和公園の様子も見えますが、今のような丘ではなく、平地に展示されているのがわかります。
現在の丘はその後に造成されたものです。
■「亜空の環」の間に見えるプラウドタワー武蔵小杉
見る角度を変えると、「亜空の環」の向こうにプラウドタワー武蔵小杉が見えました。
1983年当時にはなかった風景が、亜空間の向こうに出現しました。
中原平和公園の時間の流れを、ふと感じます。
■(6)大地に生きる母子(細井良雄 日本)
彫刻展示広場の綱島街道側のはずれには、「大地を生きる母子」がありました。
半人半獣のような母が子供を背負う、神話的な風景です。
■武蔵小杉の再開発ビルを見つめる母子
この母子像は、はからずも武蔵小杉の再開発ビルを遠く見つめるような構図になっていました。
これも1983年当時には、想像しなかった風景でしょう。
■(7)「川崎のアーテミス」(フランツ・クサバア・オルツァン オーストリア)
母子像が見つめる先、武蔵小杉の再開発ビルの手前には、「川崎のアーテミス」があります。
「アーテミス」=「アルテミス」とすると、、ギリシア神話の狩猟・貞潔の女神ですね。
また狩猟を由来にしたものかどうか、アメリカの高級ドッグフードにも同名の「アーテミス」というものがあります。
この彫刻が示す「アーテミス」が何か、正確なことはかわかりませんが、この周囲は前述の通り愛犬家のコミュニティスペースになっていまして、そこに「川崎のアーテミス」という彫刻があるのはたいへん奇遇であります。
■(8)平和と人間(レオ・コロンブルスト ドイツ)
丘のふもとの方には、「平和と人間」という作品がありました。
中原平和公園は平和を祈念して開園した公園ですので、彫刻も平和をテーマにしたものが多くなっています。
全体を通して、なんとなくタワーのような形状の作品が多いですけれども、一大高層タワーエリアとなった武蔵小杉の将来を見通していたかのようです。
■(9)琵琶を奏でる少女(揚美応 中国)
最後は住吉高校側のはずれにある、「琵琶を奏でる少女」です。
これはわかりやすい作品ですね。
以上の9作品が、1983年の「緑と彫刻 国際彫刻シンポジウム」においてつくられた彫刻です。
基本的には平和がテーマになっていますが、それだけに固定されずさまざまな見方ができたり、あるいは子供たちにとっての遊び場所になったりするのが、このような開かれた公園に置かれた作品の良いところではないかと思います。
中原平和公園には、他にも平和をテーマにした彫刻が多数展示されています。
そちらはまた別途、第2弾としてご紹介したいと思います。
【関連リンク】
・川崎市 緑と公園 中原平和公園
・2015/12/2エントリ 戦火に消えた、南武線の駅。玉川中学校・橘高校前の「武蔵中丸子駅」跡地探訪
「中原平和公園」は、その名前の通り平和を祈念する公園です。
同公園の用地はかつては「東京航空計器」の軍需工場だったものが戦後に米軍に接収され、米軍の出版センターが設置されていました。
1975年に日本に返還された際、隣接地にあった中原公園・木月住吉公園を統合し、現在の中原平和公園が1983年に開園しました。
このようなまとまった土地利用の転換が行われたことで、中原平和公園は武蔵小杉周辺において、等々力緑地に次ぐ40,740㎡の大規模公園として誕生しています。
■中原平和公園の彫刻展示広場
今回ご紹介するのは、中原平和公園の綱島街道側にある「彫刻展示広場」です。
ここには中原平和公園の開園年に開催された「緑と彫刻 国際彫刻シンポジウム」によりつくられた彫刻が展示されています。
■「緑と彫刻 国際彫刻シンポジウム」の記念碑
彫刻展示広場の中央には、「緑と彫刻 国際彫刻シンポジウム」の記念碑があります。
ここには9体の彫刻を作り上げた、7か国の彫刻家の名前が記されていました。
■(1)「太陽」(イバン・アバスカン フランス)
まずこちらは、「太陽」という作品です。
その名前の通り丸い太陽のようなかたちで、丘の上から広場を照らしています。
■(2)「ここより…」(秋山礼巳 日本)
そして「太陽」の近くには、「ここより…」という作品があります。
まるで「どこでもドア」のように、彫刻の中を通ってどこかに行けそうです。
写真は「ここより…」の先が、「太陽」につながるイメージで撮影してみました。
■(3)「門」(リュボミール・カリナ クロアチア)
たいへん重厚感のある作品「門」です。
門ではありますが間口はたいへん狭く、隙間から向こう側を覗く感じです。
■門の向こうに見える、犬の散歩
「門」の向こうを覗いてみると…、散歩中の犬が見えました。
この彫刻展示広場は愛犬家の皆さんが多く、自然発生的なコミュニティスペースのようになっています。
■(4)「戦争と平和」(ジム・サンボーン アメリカ)
2つのタワーが並ぶこの作品は、「戦争と平和」という題がつけられています。
左側の、ヒビが大きく入った黒い塔が「戦争」、白い方が「平和」でしょうか。
■(5)「亜空の環」(岡本敦生 日本)
続いて「亜空の環」という作品です。
これを作成した岡本敦生氏は、当時の初歩的なコンピュータプログラムによって時空のはじまりを表現することを試み、近いコンセプトの作品群を生み出しています。
■岡本敦生氏ウェブサイト アーカイブス 亜空間に興味があった時代2
http://atsuo-okamoto.com/arc/j/jikuu.html
作者である岡本敦生氏のウェブサイトには、1983年当時の「亜空の環」の写真が掲載されています。
開園当時の中原平和公園の様子も見えますが、今のような丘ではなく、平地に展示されているのがわかります。
現在の丘はその後に造成されたものです。
■「亜空の環」の間に見えるプラウドタワー武蔵小杉
見る角度を変えると、「亜空の環」の向こうにプラウドタワー武蔵小杉が見えました。
1983年当時にはなかった風景が、亜空間の向こうに出現しました。
中原平和公園の時間の流れを、ふと感じます。
■(6)大地に生きる母子(細井良雄 日本)
彫刻展示広場の綱島街道側のはずれには、「大地を生きる母子」がありました。
半人半獣のような母が子供を背負う、神話的な風景です。
■武蔵小杉の再開発ビルを見つめる母子
この母子像は、はからずも武蔵小杉の再開発ビルを遠く見つめるような構図になっていました。
これも1983年当時には、想像しなかった風景でしょう。
■(7)「川崎のアーテミス」(フランツ・クサバア・オルツァン オーストリア)
母子像が見つめる先、武蔵小杉の再開発ビルの手前には、「川崎のアーテミス」があります。
「アーテミス」=「アルテミス」とすると、、ギリシア神話の狩猟・貞潔の女神ですね。
また狩猟を由来にしたものかどうか、アメリカの高級ドッグフードにも同名の「アーテミス」というものがあります。
この彫刻が示す「アーテミス」が何か、正確なことはかわかりませんが、この周囲は前述の通り愛犬家のコミュニティスペースになっていまして、そこに「川崎のアーテミス」という彫刻があるのはたいへん奇遇であります。
■(8)平和と人間(レオ・コロンブルスト ドイツ)
丘のふもとの方には、「平和と人間」という作品がありました。
中原平和公園は平和を祈念して開園した公園ですので、彫刻も平和をテーマにしたものが多くなっています。
全体を通して、なんとなくタワーのような形状の作品が多いですけれども、一大高層タワーエリアとなった武蔵小杉の将来を見通していたかのようです。
■(9)琵琶を奏でる少女(揚美応 中国)
最後は住吉高校側のはずれにある、「琵琶を奏でる少女」です。
これはわかりやすい作品ですね。
以上の9作品が、1983年の「緑と彫刻 国際彫刻シンポジウム」においてつくられた彫刻です。
基本的には平和がテーマになっていますが、それだけに固定されずさまざまな見方ができたり、あるいは子供たちにとっての遊び場所になったりするのが、このような開かれた公園に置かれた作品の良いところではないかと思います。
中原平和公園には、他にも平和をテーマにした彫刻が多数展示されています。
そちらはまた別途、第2弾としてご紹介したいと思います。
【関連リンク】
・川崎市 緑と公園 中原平和公園
・2015/12/2エントリ 戦火に消えた、南武線の駅。玉川中学校・橘高校前の「武蔵中丸子駅」跡地探訪