「かわさきのむかし話を語ろう」で巡る昔話:「化かす狐」を鎮めたピンスケ・権九郎・おひなの「下小田中三稲荷」
2023/11/20エントリにおいて、川崎市の市民活動団体が集まる見本市「ごえん楽市2023」をご紹介しました。
その中で注目団体としてピックアップした「むかし話を語ろう会・かわさき」では、北野書店刊「かわさきのむかし話を語ろう」(小澤俊夫編・再話)をもとに、川崎市内に残る昔話を語り継いでいく活動をされていました。
そのようなわけで、さっそく同書を購入し、掲載されている昔話の舞台を訪問してみることにしました。
■「かわさきのむかし話を語ろう」(小澤俊夫編・再話、北野書店)
「かわさきのむかし話を語ろう」は、幸区・鹿島田駅前にある地域密着型書店「北野書店」が刊行しています。
川崎市内に残る昔話を昔話研究科・小澤俊夫さんが監修して再話収録したもので、これまでにいくつかの版がありましたが、本書は2022年に復刻版として刊行されたものです。
この中には中原区に残る昔話も多数収録されており、今回はその中で「下小田中のきつね」の舞台を訪れてみました。
<「下小田中のきつね」のあらすじ>
●下小田中には「おつな」「ぴんすけ」「ごんごろ」という3匹のきつねがいた
●「おつな」は人をばかすのが得意で、「井田村の松衛門のむすめ」と名乗ってなれなれしく近づいては弁当を奪うなど、人々を困らせていた
●困った人々がお稲荷さんを作って祀ったところばかされなくなった
●新城の「六兵衛稲荷」の「六兵衛」も人を化かすのが上手だった
下小田中には、大戸小学校近くの3匹のきつねのお稲荷さんが「下小田中三稲荷」としてかつて作られており、現在ではそのうち「ぴんすけ(ピンスケ)」「ごんごろ(権九郎)」のお稲荷さんが残されています。
また「おつな」のお稲荷さんも現存はしていなものの、かつて近隣「おひな(おつな)稲荷」に存在していたようです。
■大戸小学校前の「ピンスケ稲荷」と「権九郎(ごんごろ)稲荷」
こちらは、下小田中の川崎市立大戸小学校前です。
写真右手に大戸小学校とピンスケ稲荷の鳥居、左手に権九郎稲荷の鳥居が見えます。
■大戸小学校前の「ピンスケ稲荷」
まずこちらが、「ピンスケ稲荷」です。
正式には「大戸稲荷大明神」という立派な名前がついています。
「正一位」とは、日本古来からあり現在も存続している位階です。
正一位はその中でも最高位であり、太政大臣、関白、征夷大将軍など最高レベルの地位にある人間が叙されてきました。
「神階」として神社が叙されるもののほか、人物については多くが死後に叙されるもので、1917年の織田信長が最後に正一位を与えられた人物となっています。
そうそう与えられる位階ではないのですが、稲荷神社の多くは「正一位」を冠しています。
これは、稲荷神社の総本社である伏見稲荷大社が正一位であることから、その傘下にある日本全国の稲荷神社も正一位を名乗っているためです。
本来は分祀先が名乗れるものではなかったのですが、徐々にうやむやになってしまったようで、稲荷神社での「正一位」は若干有難味が薄いといえるでしょう。
「ピンスケ稲荷」は、おおよそ1850年頃の祀られたものだそうです。
■「権九郎(ごんごろ)稲荷」
そして「ピンスケ稲荷」の向かいにあるのが「権九郎稲荷」です。
「かわさきのむかし話を語ろう」では「ごんごろ」と表記されていますが、これは言葉がなまった・転じたものでしょう。
下小田中三稲荷のうち、現存しているのがこれらの「ピンスケ稲荷」「権九郎稲荷」です。
「かわさきのむかし話を語ろう」に出てくる「ぴんすけ」「ごんごろ」は名前だけで、「おつな」のように人を化かしていたのかどうか、行状は語られていません。
ただ、地域に残る伝承では「ごんごろ(権九郎)」と「おつな(おひな)」が夫婦、その子供が「ピンスケ」だったようで、家族で仲良く下小田中に祀られていたかたちです。
■「権九郎稲荷」から向かいに見える「ピンスケ稲荷」
「ピンスケ稲荷」「権九郎稲荷」については、今から約11年近く前にも一度ご掲載をしていたのですが、その際には単に「変わった名前の稲荷神社が2つ並んでいるが詳細は不明」というご紹介にとどまっていました。
今回、「かわさきのむかし話を語ろう」を読んで、バックグラウンドにある地域の物語を知ることができました。
■「おひな稲荷」が周辺にあったとされる上小田中南公園
昔話に出てくる「おつな」の「おひな稲荷」は残念ながら無くなってしまったのですが、もう人間を化かしに出てくることはないでしょうかね。
また同じく言及のある武蔵新城の「六兵衛稲荷」も今のところ確認ができませんが、見つかることがあればまたお伝えしたいと思います。
■鹿島田にある北野書店
地域密着型書店「北野書店」は、JR南武線の鹿島田駅前、ペデストリアンデッキ直結の場所にあります。
「かわさきのむかし話を語ろう」も旧版と一緒に販売されていますので、ご関心ある方はどうぞ。
また本書内に出てくる「昔話スポット」を、巡ってみたいと思います。
【関連リンク】
・北野書店 ウェブサイト
・川崎市教育委員会 かわさきの文化財 ピンスケ大戸稲荷神社
・武蔵小杉ライフ:タウンガイド:生活情報 神社・仏閣
・2009/7/25エントリ 伏見稲荷神社に、108体のご神使
・2010/1/2エントリ NEC玉川ルネッサンスシティの玉川稲荷神社
・2010/7/19エントリ (8):「御蔵稲荷と多摩川」
・2013/1/18エントリ 大戸小学校前の「ピンスケ稲荷」と「権九郎稲荷」
・2013/8/18エントリ 京浜伏見稲荷神社の富士山
・2017/7/17エントリ 元住吉・オズ通り商店街の「正一伏見稲荷」
・2023/11/20 「ごえん楽市2023」開催レポート:「抱っこdeダンスの輪」や「かわさきのむかし話」など市民活動64団体が集結
その中で注目団体としてピックアップした「むかし話を語ろう会・かわさき」では、北野書店刊「かわさきのむかし話を語ろう」(小澤俊夫編・再話)をもとに、川崎市内に残る昔話を語り継いでいく活動をされていました。
そのようなわけで、さっそく同書を購入し、掲載されている昔話の舞台を訪問してみることにしました。
■「かわさきのむかし話を語ろう」(小澤俊夫編・再話、北野書店)
「かわさきのむかし話を語ろう」は、幸区・鹿島田駅前にある地域密着型書店「北野書店」が刊行しています。
川崎市内に残る昔話を昔話研究科・小澤俊夫さんが監修して再話収録したもので、これまでにいくつかの版がありましたが、本書は2022年に復刻版として刊行されたものです。
この中には中原区に残る昔話も多数収録されており、今回はその中で「下小田中のきつね」の舞台を訪れてみました。
<「下小田中のきつね」のあらすじ>
●下小田中には「おつな」「ぴんすけ」「ごんごろ」という3匹のきつねがいた
●「おつな」は人をばかすのが得意で、「井田村の松衛門のむすめ」と名乗ってなれなれしく近づいては弁当を奪うなど、人々を困らせていた
●困った人々がお稲荷さんを作って祀ったところばかされなくなった
●新城の「六兵衛稲荷」の「六兵衛」も人を化かすのが上手だった
下小田中には、大戸小学校近くの3匹のきつねのお稲荷さんが「下小田中三稲荷」としてかつて作られており、現在ではそのうち「ぴんすけ(ピンスケ)」「ごんごろ(権九郎)」のお稲荷さんが残されています。
また「おつな」のお稲荷さんも現存はしていなものの、かつて近隣「おひな(おつな)稲荷」に存在していたようです。
■大戸小学校前の「ピンスケ稲荷」と「権九郎(ごんごろ)稲荷」
こちらは、下小田中の川崎市立大戸小学校前です。
写真右手に大戸小学校とピンスケ稲荷の鳥居、左手に権九郎稲荷の鳥居が見えます。
■大戸小学校前の「ピンスケ稲荷」
まずこちらが、「ピンスケ稲荷」です。
正式には「大戸稲荷大明神」という立派な名前がついています。
「正一位」とは、日本古来からあり現在も存続している位階です。
正一位はその中でも最高位であり、太政大臣、関白、征夷大将軍など最高レベルの地位にある人間が叙されてきました。
「神階」として神社が叙されるもののほか、人物については多くが死後に叙されるもので、1917年の織田信長が最後に正一位を与えられた人物となっています。
そうそう与えられる位階ではないのですが、稲荷神社の多くは「正一位」を冠しています。
これは、稲荷神社の総本社である伏見稲荷大社が正一位であることから、その傘下にある日本全国の稲荷神社も正一位を名乗っているためです。
本来は分祀先が名乗れるものではなかったのですが、徐々にうやむやになってしまったようで、稲荷神社での「正一位」は若干有難味が薄いといえるでしょう。
「ピンスケ稲荷」は、おおよそ1850年頃の祀られたものだそうです。
■「権九郎(ごんごろ)稲荷」
そして「ピンスケ稲荷」の向かいにあるのが「権九郎稲荷」です。
「かわさきのむかし話を語ろう」では「ごんごろ」と表記されていますが、これは言葉がなまった・転じたものでしょう。
下小田中三稲荷のうち、現存しているのがこれらの「ピンスケ稲荷」「権九郎稲荷」です。
「かわさきのむかし話を語ろう」に出てくる「ぴんすけ」「ごんごろ」は名前だけで、「おつな」のように人を化かしていたのかどうか、行状は語られていません。
ただ、地域に残る伝承では「ごんごろ(権九郎)」と「おつな(おひな)」が夫婦、その子供が「ピンスケ」だったようで、家族で仲良く下小田中に祀られていたかたちです。
■「権九郎稲荷」から向かいに見える「ピンスケ稲荷」
「ピンスケ稲荷」「権九郎稲荷」については、今から約11年近く前にも一度ご掲載をしていたのですが、その際には単に「変わった名前の稲荷神社が2つ並んでいるが詳細は不明」というご紹介にとどまっていました。
今回、「かわさきのむかし話を語ろう」を読んで、バックグラウンドにある地域の物語を知ることができました。
■「おひな稲荷」が周辺にあったとされる上小田中南公園
昔話に出てくる「おつな」の「おひな稲荷」は残念ながら無くなってしまったのですが、もう人間を化かしに出てくることはないでしょうかね。
また同じく言及のある武蔵新城の「六兵衛稲荷」も今のところ確認ができませんが、見つかることがあればまたお伝えしたいと思います。
■鹿島田にある北野書店
地域密着型書店「北野書店」は、JR南武線の鹿島田駅前、ペデストリアンデッキ直結の場所にあります。
「かわさきのむかし話を語ろう」も旧版と一緒に販売されていますので、ご関心ある方はどうぞ。
また本書内に出てくる「昔話スポット」を、巡ってみたいと思います。
【関連リンク】
・北野書店 ウェブサイト
・川崎市教育委員会 かわさきの文化財 ピンスケ大戸稲荷神社
・武蔵小杉ライフ:タウンガイド:生活情報 神社・仏閣
・2009/7/25エントリ 伏見稲荷神社に、108体のご神使
・2010/1/2エントリ NEC玉川ルネッサンスシティの玉川稲荷神社
・2010/7/19エントリ (8):「御蔵稲荷と多摩川」
・2013/1/18エントリ 大戸小学校前の「ピンスケ稲荷」と「権九郎稲荷」
・2013/8/18エントリ 京浜伏見稲荷神社の富士山
・2017/7/17エントリ 元住吉・オズ通り商店街の「正一伏見稲荷」
・2023/11/20 「ごえん楽市2023」開催レポート:「抱っこdeダンスの輪」や「かわさきのむかし話」など市民活動64団体が集結