武蔵小杉ブログ(武蔵小杉ライフ 公式ブログ)

川崎市中原区の再開発で変貌する街・武蔵小杉のタウン情報サイト『武蔵小杉ライフ』の公式ニュースブログ。街の最新情報やさまざまな話題をご紹介します。

2024年
11月09日

川崎市最古・7世紀創建「影向寺」が指定文化財を特別公開、木造薬師如来・十二神将などが迫力

川崎市高津区千年周辺には、「橘樹官衙遺跡群」と呼ばれる飛鳥時代にさかのぼる遺跡が残されています。
この地区には律令制における郡家(役所)があり、千年の高台に米の貯蔵を行っていた倉庫跡が発掘されており、その一部が復元されて「橘樹歴史公園」として整備・期間限定で一般公開されたことを2024/6/20エントリでお伝えしておりました。

また同地区には川崎市最古の寺院「影向寺(ようごうじ)」があります。

川崎市では「橘樹歴史公園」の完成を記念して、影向寺の協力を得て同寺院の国指定重要文化財や川崎市重要歴史記念物の特別公開を11月8日(金)から10日(日)までの3日間実施していますので、ご紹介いたします。

■川崎市最古!影向寺指定文化財特別公開
影向寺の文化財

■影向寺の山門
影向寺の文化財

影向寺は、7世紀後半に開かれた川崎市最古の寺院です。
言い伝えでは、下記のような縁起があります。

●天平11年(739年)に光明皇后が眼病を患った
●聖武天皇の御夢の中に一人の僧が現れ、「武蔵の国橘樹郡橘郷(現在の影向寺周辺)に不思議な霊石があり、聖浄な水をたたえている。そこに伽藍を建立し薬師如来を安置すれば皇后の病も治癒する」と述べた
●聖武天皇が早速行基を遣わして祈願したところ皇后の病は快癒された
●翌年、聖武天皇の名により立派な伽藍が建立され、影向寺のはじまりとなった

上記の縁起によれば8世紀の創建ということになりますが、現在では研究が進んで前述の通り7世紀後半に創建されたことが分かっています。

■神奈川県指定重要文化財 影向寺薬師堂
影向寺の文化財

境内の中心にあるのが、神奈川県指定重要文化財の「影向寺薬師堂」です。

現在の薬師堂は元禄7年(1694年)に再建されたものですが、地下には奈良時代の金堂の基壇が眠っています。

■奈良時代の礎石を再利用した部分
影向寺の文化財

境内の裏側には3か所、奈良時代の金堂の礎石を再利用した部分があります。
こうした部分も、薬師堂の歴史的価値を示すものとなっています。

■薬師堂の宮殿(くうでん)
影向寺の文化財

薬師堂の宮殿に安置されているのは勿論薬師如来ですが、現在あるのは新しいもので、影向寺の歴史ある薬師如来は、別途裏手の安置堂に所蔵されています。

■見事な天井画
影向寺の文化財

影向寺の文化財

薬師堂で見上げると、見事な天井画がありました。
左右両側にあり、まだ鮮やかな色彩が残されています。

■影向寺の歴史を証明した文字瓦
影向寺の文化財

影向寺の文化財

こちらは、薬師堂で展示されていた文字瓦で、境内から発掘されたものです。

「无射志国荏原評(むさしのくにえばらこおり)」とありますが、「国」と「評(こおり)」が並べて書かれていることから、大宝律令(701年)より前に作られたものであることがわかりました。

これにより、影向寺のはじまりが伝承にある8世紀よりも古く、7世紀後半であることが特定されたというわけです。

■「め」の治癒を願う絵馬
影向寺の文化財

前述のように、影向寺には光明皇后の眼病を治癒したという言い伝えがあります。

薬師如来は病の治癒を祈願するものですが、薬師堂の中には、特に眼病の治癒を祈願する「め」の絵馬が多く残されていました。

■さまざまな絵柄の絵馬
影向寺の文化財

「め」の絵馬のほかにも、さまざまな絵柄がありましたので、ひとつひとつ見ていると興味深いものがありました。

■安置堂も公開
影向寺の文化財

 ■国指定重要文化財 木造薬師如来および両脇侍像
影向寺の文化財

そして今回は薬師堂裏手の安置堂も公開されました。
こちらが国指定重要文化財の木造薬師如来および両脇侍像です。

影向寺の本尊で、11世紀後半の制作と考えられています。

■穏やかな表情の薬師如来
影向寺の文化財

木造薬師如来は、伏し目で穏やかな表情が特徴です。

また両脇侍像(木造薬師如来両脇士像)は、月光菩薩立像・日光菩薩立像の対になっています。
同じく11世紀後半の制作と考えられ、薬師如来とあわせて三尊一具(3体セット)です。

■川崎市重要歴史記念物 木造二天立像
影向寺の文化財

影向寺の文化財

こちらは、憤怒相の木造二天立像です。
平安時代後期の作品とみられますが、面部などは後世の削り直しも施されています。

また彩色されたあとも、少し残っていますね。
もともとは鮮やかな姿だったのではないでしょうか。

■川崎市重要歴史記念物 木造十二神将立像
影向寺の文化財

影向寺の文化財

十二神将は、薬師如来の眷属である12尊の総称です。

これまで南北朝時代の制作と考えられていましたが、研究の進展にともなって年代は再検討の余地がでてきているようです。

■薬師如来胎内女神座像と伝えられる像
影向寺の文化財

また安置堂には、薬師如来胎内女神座像と伝えられる像もケース内に展示されていました。
仏像内には、こうしたものを収めておく場合がありますね。

■聖徳太子堂
影向寺の文化財

■川崎市重要歴史記念物 木造聖徳太子立像
影向寺の文化財

そしてこちらは、川崎市重要歴史記念物の木造聖徳太子立像です。
劣化が進んだため、2022年度に修理が行われて現在の姿になりました。

■木造聖徳太子胎内木札墨書銘
影向寺の文化財

この胎内には、寛文2年(1662年)に修理を行った際の記録が収められており、その写真もあわせて展示されていました。

■影向石
影向寺の文化財

なお、境内には眼病治癒の伝承が残る「影向石」が安置されています。
中央のくぼみが、霊水をたたえるとされていた場所ですね。

今回の影向寺の文化財特別公開は、11月10日(日)まで行われています。
10:00~15:00で予約等なしでどなたでも観覧できますので、この機会に訪問してみるのも良いと思います。

■武蔵小杉ライフ公式Youtubeチャンネル 川崎市最古!影向寺が指定文化財特別公開、木造薬師如来や十二神将など迫力


今回も、武蔵小杉ライフ公式Youtubeチャンネルで影向寺指定文化財特別公開を動画レポートで公開しております。

また「橘樹官衙遺跡群」の「橘樹歴史公園」については、関連リンクの過去記事もご参照ください。

■「橘樹歴史公園」で復元された倉庫
復元された倉庫

■武蔵小杉ライフ公式Youtubeチャンネル 飛鳥時代の復元倉庫を一般公開!国史跡「橘樹官衙遺跡群」


■影向寺のマップ


なお、影向寺のアクセスは駅からかなり遠く、高台の上で歩くと結構大変です。
武蔵中原駅などから「ハローサイクリング」で電動アシスト付き自転車をレンタルしていくと便利かもしれません。

また中原街道沿いのバス停「影向寺(ようごうじ)」で下車するのも良さそうです。

【関連リンク】
川崎市教育委員会 橘樹官衙遺跡群
川崎市教育委員会 令和6年度 指定文化財等現地特別公開 影向寺の文化財
影向寺 ウェブサイト
2021/4/27エントリ 川崎歴史ガイド・中原街道ルート(番外編):子母口富士見台古墳から見た武蔵小杉の高層ビル群と、富士見台からの富士山
2024/6/10エントリ 「かわさきのむかし話」探訪、現地で分かる影向寺裏「井戸坂」(高津区)にむじなが出る理由
2024/6/20エントリ 川崎市の国史跡「橘樹官衙遺跡群」で飛鳥時代の倉庫を復元、6/21まで一般公開も

Comment(0)