市民向け川崎市債投資セミナー・2009年
2009年8月20日(木)、武蔵中原駅前のエポックなかはらにおいて
「川崎市債投資セミナー」が開催されました。川崎市が発行する
地方債についての市民の理解を深めることで、投資をしてもらおうと
いう主旨で行われるもので、投資家向け広報、いわゆるIR(インベス
ター・リレーションズ)活動と呼ばれるものです。
武蔵小杉ライフは昨年に続いて参加してまいりまして、今回はその
川崎市債投資セミナーに関するレポートです。
■川崎総合福祉センター エポックなかはら
■川崎市債投資セミナー
120名の定員ですが、非常に盛況で満席になっていました。どちら
かというと、年配の方が多かったようです。
セミナーの構成は昨年とほぼ同様であり、前半に阿部市長による
川崎市の財政面等のプレゼンテーションが行われ、後半は三菱UFJ
証券による投資の基礎知識の講義が行われました。
地方債についての簡単な説明は昨年のエントリに書いておりますの
で、そちらをご参照ください。今回は、阿部市長によるプレゼンテー
ションの内容の一部について簡単にまとめてみようと思います。
■阿部市長によるプレゼンテーション
【プレゼンテーションのうち、川崎市の強みに関する部分の要旨】
■ポイント① 川崎市の経済は活発である
・市内製造品出荷額が伸びている=モノづくりが活発
・市内大型小売店商品販売額が伸びている=まちに活気がある
・市内非居住用建築着工床面積が伸びている=経済活動が活発
※ハイテクラインである南武線沿線に200超の研究開発拠点が集積
■ポイント② 川崎市は個人市民税の基盤が強固である
・川崎市では2025年頃まで人口増加が続く
・川崎市は人口1人あたりの課税対象所得額が政令指定都市トップ
・他の政令指定都市に比べ税収の割合が高い反面、まだ人件費の
水準も高い
■ポイント③ 川崎市は都市拠点や臨海部の整備を行っている
・川崎駅、新川崎駅、武蔵小杉駅等周辺地区の整備を実施
・臨海部の羽田空港神奈川口構想を推進
・横須賀線武蔵小杉駅を2010年3月に開業
・川崎縦貫高速鉄道整備事業の取り組み
■ポイント④ 川崎市は環境配慮型の地域社会づくりをしている
・カーボンチャレンジ川崎エコ戦略の推進
・ごみ減量化と分別、リサイクルの推進
・・・だいたいこんなところでした。プレゼンテーションの内容自体は
昨年とほとんど同じであり、パワーポイントのデザインだけブラッシュ
アップしたかたちでした。
内容についてですが、川崎市債への投資を促すことが目的であり、
おのずと川崎市の財政基盤の強さ等をアピールするものになって
います。
上場企業と異なり、地方自治体には統一された情報開示基準が
存在していないため、それぞれの自治体がそれぞれの自治体に
とってアピールしやすい数字をピックアップしてくることになります。
以前、地方債IRを支援する地方債協会の方にお話を聞いた際にも、
「どうしても『お国自慢』の域を出ないものになりがちなんですよね」
という話を聞いたことがあります。
もちろん、提示されているデータは事実ですので、参考になる内容
です。個人的には、昨年も出ていたデータだったのですが、「川崎市
は人口1人あたりの課税対象所得額が政令指定都市トップ」という
データは興味深かったですね(2位は横浜市、3位は名古屋市)。
川崎市は政令指定都市で最も市民の所得が高く、その人口が2025
年まで増加しつづけるため個人市民税は安泰である、という主旨の
プレゼンテーションですが、これは確かに最近の川崎市の財政を
見ても強みのひとつとなっているようです。
■川崎市のプレゼンテーション資料
■川崎市債のパンフレット
その人口増による税収アップの一要因であった武蔵小杉再開発は、
川崎市としても主要なアピールポイントのようで、今回のIRセミナー
のプレゼンテーション資料および川崎市債パンフレットの表紙には
武蔵小杉の再開発地区の写真が使用されていました。
■生田の天然水 恵水(めぐみ)
会場に用意されたミネラルウォーターも昨年と同様で、川崎市水道
局が販売している「生田の天然水 恵水(めぐみ)」です。
■川崎市水道局 「生田の天然水 恵水」の販売について
http://www.city.kawasaki.jp/80/80syomu/home/megumi.htm
川崎市の水源地である多摩区の井戸からくみ上げたもので、中原区
では、区役所の自販機のほか、上小田中のセブンイレブン川崎大ヶ
谷戸店、井田2丁目の井田病院で販売されています。
■セミナーの動画配信のための撮影
この川崎市債投資セミナーは、例年動画配信が行われています。
従来は日興シティグループ証券系のIR支援会社、日興アイ・アール
が受託していましたが、日興シティグループ全体のリストラのあおり
を受け、現在では別の映像制作会社が入っています。
本日時点ではまだ川崎市のIRウェブサイトに動画はアップされて
いませんが、数日でどなたでも視聴できるようになるものと思います。
川崎市のIRは地方自治体の中でもかなり積極的な方ですが、一般
事業会社のIRに比べて地方債IR全体がまだまだ成熟しきれていない
現状があります。
プレゼンテーションの内容も前回の焼き直しではなく、やはりその年
に発行する地方債で実施を予定している事業の説明など、市民が
関心を持てるような独自のコンテンツを検討できるとよいかな、と思い
ました。
公会計制度の検討も途上であるなど、制度的な面の成熟も必要なの
は当然ですが、情報開示・IRに対する自治体自身の姿勢の成熟が
待たれるところです。
【関連リンク】
川崎市公式ウェブサイト 投資家情報
2008/8/27エントリ 市民向け川崎市債投資セミナー