【Reporter:はつしも】
2007年9月に、川崎市より
「川崎再生フロンティアプラン 新実行計画素案」、「新行財政改革プラン素案」が公表されています。2008年度から2010年度までの川崎市の中期計画をまとめたものです。
その内容に関して、阿部市長が市民と意見交換を行う
「タウンミーティング」が2007年10月に各区で開催されまして、今回はそのうち中原区で行われたものの議事録から、
阿部市長が武蔵小杉再開発の商業施設に関して言及している部分を取り上げてみたいと思います。
まずは議事録の一部から阿部市長の発言を抜粋します。
商店街関係者の方から、
武蔵小杉再開発で整備される商業施設と既存商店の競合について質問を受けたことに答弁しているものです。
また少し長いですがご覧ください。
特に武蔵小杉の商業施設に関連する部分は
赤文字にしてあります。
(以下抜粋)
■阿部市長
まず商店街の活性化についてでございますけれども、私、いつも申し上げているんですが、お客さんは目の前に無限に近くいる中で、商店が成り立つようにどうするかということなんで、こちらで、行政は素人でございますので、そういう中で、過疎対策なんかでもお客さんが近くまで来るようにという対策はできるんですね。だけど、目の前にいるお客さんに「買い物してください」という行政施策というのはないんですよ、残念ながら。
ですから、ラゾーナ川崎プラザについても、我々にとってできたことは、地元の商店街とできるだけ競合しないで、遠くのお客さんを招き寄せるような、そういう商店街にしてもらうということは、口を酸っぱくして申し上げました。その結果、もちろん競合する部分もあるので、従来からあったアゼリアとか東口の商店街には若干影響が出てきています。
ただ、西口は人の流れが良くなっているので、お客さんが増えてきているということなので、それだけ良くなっているというか、だからあとは、どのようにして遠くから見えたお客さんに買ってもらうかという工夫次第だという意見に今なってきております。
ですから、小杉に1万5,000 人の、かなり所得の高い家庭が増えるということは、それだけ可能性が高くなるということです。当然それを狙ってお店も出てくるだろうと思うんですが、これについても、実は地元の商店街からお客さんを奪うような形じゃなくて、東京や、渋谷や横浜からお客さんを連れてこれるような、そういう施設が望ましいんだよというお話ししているんですね。
実際、新しく移ってこられる方は横浜だとか渋谷のあたり、かなり慣れている人たちだと思うので、おそらく中途半端な商店街を作ったら、地元の人でさえもそこには行かないというように私は思っています。ですから新城なんかについても、やっぱり商売のやり方は時代とともに変わってきているので、ぜひ新しい時代の商売のやり方というのをみなさんで議論して工夫していただきたいし、個別のお店では、やって儲かっているところもあると思うのですが、やっぱり商店街としてどういうやり方をしたらいいか。
例えば高齢化が進んだ時には、お店を構えていてお客さん、いらっしゃいって言って待っているのではなくて、お客さんのところまで出かけて行く、コンシェルジェと言うんですよね、そういう機能を組み込んだ形での商店経営をやっていく。だから逆に言うと、お店に品物がなくても商売ができるようになってくるんですね。
ですから、そういう新しい時代の商売のやり方をぜひやっていただきたいと思うんです。もちろん、人口が増えたりお店が新しく、大型のお店ができると、お客さんも来るけれども、近くのお客さんも奪われる可能性があります。競争は激しくなりますので、しかし、総枠としてパイは増えるんですね。総枠としてはパイが増えるわけですから。その増えるパイを狙って、自分のところがどこをターゲットにしてお客さんになってもらうのか、買い物してもらうのかということを考えていく必要があると思うんです。
今、小杉地区広域商業ビジョン検討委員会を設置して、商業ビジョンづくりを行っているということでありますので、こういった中で十分に議論をしていただきたいと思うんです。イベントなんかも非常に効果があるし、「丸子・小杉桜まつり」なども支援しておりますので、そういった仕掛けを考えていただいて、行政から見ても、ああ、それはいけそうだなと思ったら支援してまいりますので。
ただ、行政は、商売は素人ですので、行政がやってそのままお金を出して、それでやってという支援の仕方はできません。ぜひ、知恵を出し合って、いい方向をめざしていただきたいと思います。
ラゾーナについては外からのお客さんが増えてますよね。あれは溝の口については、私は丸井さんに、こういうこと言っちゃ悪いんだけど、高島屋だったら競合しなくてお客さんが増えたと思うんですよ。丸井さんだと地元と相当、競合しているのではないでしょうか。私はそう思っているんです。
ですから、競争にはなるんだけれども、よそからお客さんがたくさん入ってくるような、そういう商業施策をとらないといけないと私は思います。
川崎駅東口の西武が撤退したの、いい例ですよね。あの西武の店に行くと、池袋の西武とか渋谷のほうがもっといいよってみんな思うから、川崎は便利ですから、みんなあっちへ行くんです。中途半端だったためにですね。あれも、つぶれるのが当然だったんですね、私はそう思います。
(抜粋終わり)
・・・と、いうことで、質問者の商店街関係の方にとってはなかなかシビアな答弁をされていますが、阿部市長が武蔵小杉再開発で想定している商業施設のイメージがわかりますね。
要約すると、武蔵小杉再開発の商業施設像に関して、
1.既存商店は新しい時代に対応して知恵を絞ってほしい
2.再開発で作る商業施設は、既存商店と競合するラインでは駄目。東京や横浜からも集客できるものであるべき
3.ラゾーナは外部から集客できている。溝の口は、丸井では既存商店と競合している。高島屋だったらお客さんは増えたはず。川崎駅東口の西武も同様の失敗。
ということを阿部市長は答弁されています。
阿部市長としては、
中途半端な商業施設ではなく、既存の商店とはターゲットの異なる、外部集客のできるハイクラスなテナントを想定していることがわかります。
武蔵小杉で詳細が未公表になっている大規模な商業施設はいくつかあります。
■小杉駅南部地区A地区(こすぎFROM・中原変電所跡地)
■小杉駅南部地区C地区(中小企業婦人会館跡地)
■小杉町3丁目中央地区(中原市民館等跡地)
■東京機械製作所地区(東京機械製作所玉川製造所跡地)
このようなところですね。このほか、小杉駅北部地区(ホテル・ザ・エルシィや日本医科大学付属武蔵小杉病院など)など追加になる可能性もありますが、さしあたり置いておきましょう。
とりあえず4つはある程度の規模の商業施設が予定されているわけですが、少なくとも川崎市としては阿部市長の答弁されているイメージのテナントを誘致しているということになるのでしょう。
小杉駅南部地区A地区の一部には
高級スーパーが入ることが判明しており、とりあえず阿部市長の見解と矛盾は無いようです。
もちろん、民間事業者側は商売ですので、行政の意向で全てが強制できるものではありません。
箱を作って、必ず行政が求めるテナントで埋められるという保証は無いでしょう。そこには景気動向や、個別企業の業績や戦略などさまざまな要素が絡んできますので、一概には言えないところです。
しかし、行政側がどのような商業施設のイメージを持っているのか、公式に出てきたことは今まであまりなかったのではないでしょうか。
それぞれの計画が内々に進捗している以上、
この段階で市長の答弁している内容が進行中の現実と乖離しているとは考えにくいですから、大筋は市長の語っている方向性で検討はされているのでしょう。
一部の百貨店の固有名詞まで出して失敗例や望ましいテナントとして挙げたりされているわけですから、市長としては自信をお持ちなのでしょうね。
【関連リンク】
川崎市 川崎再生フロンティアプラン
武蔵小杉ライフ:再開発情報:小杉駅南部地区A地区
武蔵小杉ライフ:再開発情報:小杉駅南部地区C地区
武蔵小杉ライフ:再開発情報:小杉町3丁目地区中央地区
武蔵小杉ライフ:再開発情報:東京機械製作所地区