武蔵小杉ブログ(武蔵小杉ライフ 公式ブログ)

川崎市中原区の再開発で変貌する街・武蔵小杉のタウン情報サイト『武蔵小杉ライフ』の公式ニュースブログ。街の最新情報やさまざまな話題をご紹介します。

2010年
07月04日

武蔵小杉の「ひと」(1):カワサキミュージックキャスト・反町充宏さん(前編)

karejishi.gif

武蔵小杉ライフではこのたび地域活動に関わり合いのある方々への
インタビュー
を始めました。今後、地域活動に携わる「気になる方々」
訪問し、お話を伺う記事を不定期で掲載していきます。

第1回は、以前本ブログのIn Unityの記事でもご紹介したことのある
NPO法人カワサキミュージックキャストの反町充宏理事長にお話を
伺いました。(以下敬称略)

■NPO法人カワサキミュージックキャスト 事務所
NPO法人カワサキミュージックキャスト 事務所

--本日はよろしくお願いします。

反町充宏さん1

--まず設立の経緯を教えてください。

反町:私自身はピアノ教師をしていた母の影響もあって、幼いころ
からころから音楽に携わっていました。
自分自身もピアノをやったり
中学生時代は同級生とバンドを結成して活動をしていました。
当時徐々に演奏が出来るようになってくるとライブをやりたいのです
が、いざやろうとなったときにライブハウスというものはあっても費用
や集客の面から簡単ではありませんでした。

他にそれにかわる場所があるかというとそれもなくて。
もっと気軽に音楽を演奏できる場所がないものかと考えるようになり
ました。

そこで、同世代(当時17歳)の仲間とともに自主企画の無料コンサ
ートを地元「西丸子小学校」の体育館で企画
しました。
当時高校生でイベントの段取りとかもわからない中で、どうにかして
できないかということで、ほんとに地域のいろんな方の助言と協力を
得て、なんとか無料のコンサートを高校生だけで開催することが
できました。

結果として成功させることができて、それがこういったイベントごとに
関わる私の原点
だったのですが、その時に地域の方の暖かさとか
地元でなにかやるぞ、という目的意識を共有できた時の、エネルギ
ーというものをすごく感じました。ほんとにその時の感動はいまでも
忘れられないんですが、イベントをつくるということはすごいことなん
だと、また実際に成功して多くの方に喜んでいただいて、すごい
やりがいのあることだと感じました。


それでまだ10代ですから同世代の音楽活動をしている人たちは
プロデビューを目指して走り始めるわけですね。
そんな中で私はプロミュージシャンになることの難しさを実感する
と同時に裏方の仕事を学びたいという想いが強くなっていきます。
まだ何も分からなかったのですがとりあえずバンド活動をしながら
平行してイベントの企画というものを少しずつ学んでいきました。
たまたま地域にそういうことを教えてくださる方がいらっしゃって、
その方の存在も大きかったと思います。

反町充宏さん2

それで2~3年は自分達で企画する、そして自分も出演するみた
いな割とよくある形での活動をしていきます。しかし、ある時、両方
やるのは良くない、本気でやろうとしたら両立できることではない

と感じるようになりました。
そこでその時自分は何をやりたいかと考えた時は、やはり
やりたいことは裏方のこと
で、「これはこの地域に必要だ」って
思ったんですよ。
小さい範囲だといっても、この中原区、武蔵小杉地区ですか、さらに
視野を川崎というエリアまで広げたとしても、音楽環境というんですか
若者が力を発揮できる、好きなだけ演奏できる、あるいは一般の
お客さんがそういう音楽を見たいという場所が足りないな
、という
ことで。当時まだストリートライブのポイントもなかったですし。

それで裏方に専念しようということでやり始めるわけなんですが、
当時私は普通の音楽と関係ないサラリーマンをやっていまして週末
が休みの仕事でしたので、平日は普通のサラリーマンをして日曜は
全部イベント系の自分の企画だったり、手を貸して欲しいという
いろんなイベント
をやっていました。徐々にそういう依頼や、あるいは
川崎市の特に中原区の事業から声がかかるようになってきました。

同時に一緒に活動する仲間もどんどん増えていくようになって
いつからか任意団体という形で一応組織として活動を始めたのです
が、その形で4年ぐらいやったと思うんですけど、そんな中で川崎市
が音楽のまちづくりという市をあげて街ぐるみでやっていく
ということに
なりまして、いままで積み重ねてきたところもあって、ミュージック
キャストとして仕事のお願いをされる頻度がどんどん増えてきました。
まだサラリーマンだったのですが、悩むようになってきたんですね。
これはもう平行してやるのは限界かなと。

当時はサラリーマンとしての仕事も高い意識で取り組んでいましたの
で、音楽の方に切り替えるという気持ちは固まっていたのですけど、
いざそれを行動に移す最後の一歩を踏み出すのに時間がかかりました。
しかし、カワサキミュージックキャストをNPO法人化してきちんとした
社会的役割と責任を果たしていく
ということと、NPOじゃなければ
できないことをやっていくという考えのもと、必要な仲間や支援者が
集まったとことで法人化という運びとなりました。
なお、選択肢としては株式会社というものもあったのですが、やはり
NPO法人が適切であるということで、多くの方のアドバイスも頂戴して
納得して決まりました。

団体名のカワサキミュージックキャスト
 カワサキを拠点にやっていくということと
 やはり音楽のことをやっていくということでミュージック、
 キャストは仲間・共演者などという意味を含めて
そういう名前にしました。

--いま現在の主な活動内容を教えて下さい。

反町:カワサキミュージックキャストが法人として掲げている
目的は主に3つあります。

   1)音楽イベントの開催事業
   2)音楽イベントの開催支援事業
   3)アーティストの支援事業

一番に掲げているのが、「音楽の開催事業」なんですね。
開催事業というのは自分達が主催で考えて企画をして開催すると言う
ことなのですが、実は業務の割合としてはすごく小さくて、最近ですと
中原区の市民提案型事業でオープンカフェをやらせていただきました。

■なかはらオープンカフェ
なかはらオープンカフェ

いま圧倒的に多いのは「開催支援事業」という自分達の企画や主催
ではなくて、その中身としての業務自体は広くイベントのなんでも
お手伝いをする
というものです。
それが圧倒的で、イベントの本数としては、昨年度(2009年度)で
約200件、今年度(2010年度)は300件に届く勢いで仕事を頂いて
います。

実際は最初の段階で、それが本当にミュージックキャストとして
お手伝いするのに適切なイベントかどうかということを判断
させて
いただいています。
私どもはあくまで川崎を拠点に活動するNPO法人ですから一応
公益法人でもあるのであまりその考え方や趣旨に馴染まないイベ
ントというものはやるわけにはいきません。
また正直申し上げますと去年の200件でもなかなか忙しいところが
ありまして、関わる全てのイベントを大切にし、皆さんにご満足いた
だくためにはなんでも引き受けるわけにもいきません。
ですので、最初の段階でこのイベントには本当にミュージックキャス
トが必要か、地域の方などに喜ばれるか、公共性があるか、今後育て
ていくべきものか
などという基準で確かめさせていただいています。
それでぜひということになりましたら出来る限りのお手伝いをさせ
ていただいています。

ある時は人ひとりとかマイク1本というケースから、企画はあるが
でもそれを形にする力がないのでやってもらいたいという、いわゆる
企画の丸投げに近いような形でいただいて、実際の企画の目的達成の
ために、私どもの言葉で制作(イベント制作)というのですが
段取りを組む仕事、段取りを組んで実際にいろんな人・物の手配を
する仕事、そういったのを制作と言っているのですけど、それですね。

--人ひとりとか、マイク1本とかそんなに単純な仕事からやるとは
驚きです。


反町:ありますね。
最近ですと初めて年間を通しての仕事を頂きまして川崎のある
商業施設なのですが、毎週末開催されるライブなどのイベントを
ミュージックキャストのほうで年間を通してお手伝いさせていた
だくことになりました。

--そういった支援事業から、先ほどのその企画の段取りからやる
制作業務と言われましたけど、一から作ると言うのは結構人とか
手間がかかるのではないでしょうか?


反町:いまうちのほうで現場に出るスタッフは20人ぐらいです。
登録メンバーとしてはなかなかそれが一度に集まることってないん
ですけど(笑)

あくまで現場要員であるところが強くて、制作業務という意味では
私以外にそれをきちっとやれるスタッフはごく一部なんでして
その大半を私がやらせていただいているのは現状です。
時間とか手間はすごくかかるところはありますね。

抜けがゆるされないのとそれ自体がお金を頂いてやるということ
ですから、なかなかほんとに気が抜けないし、そこそこの作業量が
あるのですが、今は一定のマニュアルと言うか雛形的なもの
あるんですけど組んでいくテーブルというものがあるので、それに
添った形で進めていく、それプラスイベント特有のなにか内容とか
性格と言うものがありますけど、それを絶対忘れないように大切に
してやっていく感じ
ですね。

反町充宏さん3

--最初の話に戻るのですが、いろいろな話が来てそれを選定する
という話がありましたけど、あまり適正でないというのはどういう
ものですか?商用に偏っているとかそういう話ですか?


反町:まず一つはそうです。あきらかに利益重視の内容であったり
閉鎖的な会場やごく一部の方を対象としているものである場合

お断りすることがあります。それからチケット代などが有料の時は
内容などをより慎重に確認させていただいています。
決して入場料などの設定があるからすべて断るということではあり
ません。できるだけ費用を抑え、その分を地域やお客さんへ還元し
ようという工夫や努力
を感じ取れれば、もちろんやらせていただき
ます。
もう一つは特定のミュージシャンのイベントっていうんですか。

--ずばりコンサートみたいなものですか?

反町:そうですね。
これはミュージックキャストのすごく基本的な考え方なんですけど、
いわゆるプロダクションみたいな業務というのはやってないんですね。
ミュージシャンを抱えてとか、契約をして預かってというのは一切
やらないし、当面はそうゆうのをやる予定はないんですが。

このあと3つ目の事業でアーティストの支援事業というカテゴリが
あるのですが、それはあくまで広くアーティストの支援をするという
ところで、特定のミュージシャンに偏った支援ってやらない
んですよ。
それは実はやらないということにこだわっていまして、そういう意味で
明らかにもう特定のミュージシャンのいわゆるワンマンライブとか、
それが有料であったりとかということになると考えますね。

それでもどうしても例えばそのミュージシャンが川崎で特別な実績が
あって、またなにかそのワンマンコンサートがその後の市の音楽環境
を盛り上げていくために必要な何かであるとか、あるいは川崎市の
後援がついているとかあればまた別ですが。ただ、そういうケースは
ごくまれです。

単純にミュージックキャストに頼めば安くやってもらえる、なあなあ
でいける、みたいな雰囲気であればまずお断りするか、限定的な支援
という形となります。例えば、アドバイスや広報のお手伝いのみなど。
ミュージシャン自身の力と責任でライブを行うということも必要です
から。まずは全力でやれるだけやってもらって、それでどうしても解決
できないような状況になった時に相談をしてもらいたいです。

反町充宏さん4

--それではあともう一つ支援事業のほうをお願いします。

反町:そうですね。
アーティストの支援事業ということで先ほどイベントの開催支援事業
のところでは、他の企画されている方とかイベンターさんのお困りの
ことで、とりあえずミュージックキャストにまず相談してください、
というスタンスでしたが、このアーティスト支援事業に関しても
ミュージシャンが川崎で活動していて、あるいはこれから活動しようと
思っている方で、とりあえず何かわからないこと、不安なことが
あったらなんでも相談してくださいというスタンス
です。

例えばこれから音楽を始めたいと思う人が楽器をどこで買ったら
いいのかわからないとか(笑)、川崎ってどのぐらい楽器屋さんが
あるかわからないとか、それはミュージックキャストにはデータベース
がありますので、例えばギターだったらどこの品揃えが多いとか
ドラム関係の素材はここだよとか、いろいろあるわけですね。
そういった情報提供といったところが一つ。

それからあと活動されるに当たって、ちょっと腕も付いてきたから、
川崎でライブやりたい、とりあえずライブハウスは検索すれば
なんとなく出てくるんだけどストリートライブ、川崎駅前とかで
やっているみたいなことってどうなんですか?
どうやったらでられるんですか?といった相談内容などです。

実はその川崎のストリートライブのポイントのいくつかって
きちんとしたエントリ制だったりする
んですよ。フリーじゃなくて。
きちっと管理者がいて、シフトがあるんですよ。

--それは知らなかったですね。

反町:ルールとかすごく厳しいものがあって、それを守ってやって
いたりするんですね。
それのはしりというか、先駆的な取り組みをされた場所というのが
川崎の西口のミューザという建物がありまして、駅の改札をでて
デッキを歩いて行ってちょうどミューザの入り口のところにレンガ状
の壁があるちょっとしたオブジェとかもあるスペースがあるんですが、
そこは「ミューザゲートプラザ前」って呼んでいるんですが、そこで
約5年前、ストリートライブがスタート
したんです。

これは会場管理者からキチンと許可を頂いて、ミュージシャンが
ちゃんと登録して事前に面接をして、これを通過したアーティスト
だけが出られる
んです。管理している方が別にいらっしゃってその方に
毎月翌月のスケジュールをあらかじめ連絡して、そのまとめ役の方が
シフトを組んで、アーティストは決められた時間通りにやる。
一日あたりで3~4組出演するんですが、準備から片づけまで
ミュージシャン同士で全部やる。マナーがしっかり守られているか
というのもお互いでしっかりチェックする。そういうシステムなん
ですよ。

反町充宏さん5

で、そのミューザ前の取り組みはすばらしいことなんですよね。
やはり、まず場所がなければ出来ないということで、ミューザさんが
正式な形で貸していただいているということ、またそれを管理する、
シフトとか組むまとめ役というのは、また別の中原区の方
なんですが
平間のお花屋さんをやっている方なんですけど、おそらく民間で音楽の
まちづくりに協力している個人としては川崎No.1クラスの方でして、
ミュージックキャストとしてもすごくお世話になっているんです。

それで、その方がやられているんですけど、場所があって管理する方が
いてミュージシャンが集まってきちんとルールを守ってやっているわけ
ですね。すばらしいことです。

それこそまさに先ほど申し上げたような今後もっともっと育てていく
イベントであり、場所であり
というところで、ミュージックキャストとしても
このミューザゲートプラザ前に関しては全面支援というスタンスです。
開始当時はすべての機材をミュージシャンの持込というやり方で
3年ほど経ったところで共用に使える音響機器や楽器をミュージック
キャストから提供
させていただきました。

--ちなみにこの武蔵小杉とか丸子・中原周辺というのはそういった
場所というのはどうなのですか?

反町:それこそ小杉の北口でもフリーでやっているじゃないですか。
でもいまきちんした許可制・登録制で公式にできているところは私が
知る限りではないですね。でもあれも面白いんですよ。
他のストリートライブでは溝の口とかもそうなんですけど、
ミュージシャン同士である程度常連というか何度か顔を出すように
なると、きちっと自然に時間とか場所とか調整
するんですよね。

--住み分けができているのですか。早い者勝ちとかそういう話
ではなくて?

反町:基本的にそうですね。
確かに毎週同じ曜日、同じ時間帯にはここにはあの人、そこには
この人っていう感じです。ただ何年間も継続してという方は相当
少ない
ですよね。何ヶ月か続いているかなと思うとこなくなっちゃっ
たりとか。
ただ、基本的にはみなさん、ミュージシャン同士、近隣の店舗や
通行人の方に配慮しているところは良いことだと思います。
一方でごく一部ですが、自分にことだけしか考えず場所、音量
時間帯などを無視してやってしまっている人がいることはとても
残念です。

--中原だとインユニティとか大きなイベントをやっている
じゃないですか。この辺でも場所があればいいんじゃないかとも
思うのですが、なかなか難しいですか?


反町:いいですね、ぜひそれは私が今後やっていきたいことの一つ
です。小杉というのはいろんな意味での、アクセスであったり
ある意味の中心
というところで、そこにやはりストリートライブの
拠点になるような場所が必要
ですよね、私は欲しいですね。
しかもミュージックキャストの事務所がある武蔵小杉ですから。
ぜひ欲しいですね。

反町充宏さん6

(後編に続く) 

【関連リンク】
NPO法人カワサキミュージックキャスト 公式ウェブサイト
In Unity2010 公式ウェブサイト
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