武蔵小杉の「ひと」(1):カワサキミュージックキャスト・反町充宏さん(後編)
(前編より続き)
--では次にIn Unity(インユニティ)との関わりを教えてください。
反町:まずミュージックキャストとはまったく別の存在なのですが、
私の原点でもありまして、先ほど最初にお話をした私が17才の
ときにイベントをやって、それを地域の方々にお手伝いをいただい
たのですが、その際に行政に対して、
「地元にそういう頑張っている子たちがいるよ」という情報を入れて
いただいた方、働きかけていただいた方がいらっしゃったようなん
ですね。
それで実際にイベントも成功して、地域の方、区民の方もいっぱい
足を運んで頂いたということで、だったら行政としても何かやらなけ
ればいけないんじゃないのか、というのが本当のきっかけだとという
ことを聞いています。
これは中原区の協働推進事業といって行政と区民が一緒になって
同じ目標の元で役割分担をしてやる、という事業ですから。
それで当時いざやるぞとなったのが、私が19才の時でして、
そういうのをやるからぜひということでお話を頂きまして、それが
第一回目In Unity2000で、これに声をかけて頂いて、それで
実行委員と言う立場で入らせていただきました。
3年目のIn Unity2002から今年3月に開催した2010までは実行委員長
をやらせて頂きました。また来年にむけて動き出すのですが、2011も
また実行委員会が立ち上がったら、実行委員長に立候補はしようとは
思っています。
ただ同じ人間が同じ事業の委員長やるのも、もう次やったら
10年連続なんですね。やはり後任をきっちり育てて、退いてもその
イベントがそれまで以上の形で動き続けていくことこそがいいイベント
であり、私自身の仕事かと思いますので、まあそうしたいなと思います。
■In Unity 2010
--先ほどカワサキミュージックキャストさんの目的の一つで音楽を
やりたい人に場を提供するとか、情報を提供するというのと、
In Unityのイベントの目標というのは、方向性としてはあっていると
思うのですが、そういう意味での今後の関わり合いというのは
どうでしょう?
反町:まずIn Unityというのが中原区の事業なんですよね。
私の立場としてはIn Unity関しては、ミュージックキャストの代表
としてではなくて、一区民として参加させていただいています。
しかし、いまミュージックキャストがあることはIn Unityの影響と
いうのはすごく大きいです。
In Unityがなければ私もミュージックキャストとしてNPO法人化は
していなかった、出来ていなかったかもしれないと思います。
それぐらい大きな存在ではあるんですが、あくまで区民として参加
していること。ただまあ同時に代表であることは変わりないので、
ミュージックキャストとしてはお手伝いをさせていただくという
立場ですね。
先ほど申し上げた育てるイベント、支援していくイベント、
もっともっと成長していきたいイベントの一つがIn Unityです。
--話が変わりまして、カワサキミュージックキャストの今後の
方向性とか課題みたいなものをお聞かせください。
反町:ミュージックキャストとしての課題はやはり人が足りないです。
全てにおいて。
--20人ぐらいいるという話でしたが?
反町:これがいまの20人というのは、半分は法人立ち上げの時の
初期からのメンバーで、それを含めてイメージとしては登録制
みたいな形ですか。名前をいれておいてもらって、仕事がある時に
一括してメールで投げて、必要な人数を埋めていく、
そういうやりかたなんですよ、基本的には。
もちろん一人ひとりが他の仕事をやっているわけです。
ミュージックキャストに登録する人って基本無職は禁止なんですよ。
ミュージックキャスト自体は生活費を稼ぐために集まる場所では
絶対に無いので。最近ではそれなりの謝礼があるときも多いのですが、
いずれにしても目的は間違えてはいけない、大切なところですね。
学生なら学生でもいいですが、そうでなければ、最低限アルバイト
でもなんでもいいので必ず仕事を持っていただいて、それをしっかり
やっていただいた上で残りの時間をミュージックキャストに使って
いただくというのは、全部のスタッフに徹底していただいている
ところです。
--NPO法人の性格としてノンプロフィットは分かりますが、
逆にいうとそういうスタッフのみなさんは、いわゆるボランティア
じゃないですか。そういう立場でこの活動に携わるモチベーション
というのはどういうところからくるのでしょうか?
反町:一つはやはり私自身が代表者であり、基本的にはお願いとか
仕事があるよ、という連絡もさせていただいているので、
やはり私自身が実際の仕事をお願いするにあたって一人ひとりに
感謝をします。そしてその感謝の気持ちをきちっと伝えるように
しているというのがまず一つ。
それからスタッフがやりがいをもてるイベントと逆にそうじゃない
イベントというのもあるので難しいところですが、出来るだけ
あらかじめ伝えるようにしているんですよ。
ほんとにこれは仕事をくださる方からはお願いしますと頼まれて、
こちらとしてもお手伝いをしたいイベントだったりするんですが、
でも実際の業務としてはすごく単純作業を10時間とかだったり
するんですよ。例えばひたすら案内係でたちっぱなしとかで。
実際に入るスタッフの立場だと、それで現場のモチベーションを
維持しろって言ってもなかなか難しいじゃないですか。
--そうですね(笑)
反町:それはやはりあらかじめそういうのを伝えて、それでそういう
のをやってもらったスタッフには、それ以外でやはりやりがいのある
仕事を回す、バランスをうまく取ってやるわけなんですが。
次にこれはIn Unityともつながるんですが出会いなんですね。
ミュージックキャストはほんとに出会いにだけは恵まれています。
ミュージックキャストに関わることによって、イベントを通じて
出会う内外の方々ともすごくなじんで仲良くやっています。
ただ、若い男女が集まるのでいろいろあり困ることもありますが(笑)
反町:スタッフの課題の話に戻りまして、モチベーションの点に
ついてはとにかくイベントという場をきちっと提供して、
ミュージックキャストを通じて生まれる出会いというものがお互いの
プラスになってもらいたい。
あとはもちろん経験的なところで単にイベントのお手伝いだけを
やってたとえばそれを1年間やって振り返ったときに、とりあえず
現場は楽しかったけど、でも自分に何も身についていないというのは
ダメだと思います。
1年間やってその先別の道にいくにしても、ここでの1年間
というのは人と人とのつながりというところと、それから単純に知識
とか技術とか、一つでも二つでも身につけて学んでいってもらいたい
と思っています。
実際にはイベントの仕事って結構業界以外のところでも役に立つ
ところがすごくあって元々人生にイベントってすごいあふれてる
じゃないですか。
ほんとに一番身近なところだと、例えば社会人だとちょっとした
飲み会から始まり、忘年会とかその類の会社のイベント、それから
ちゃんとした結婚式だったり、また二次会だったりいろいろあるじゃ
ないですか。でイベントの段取りを組むというのは重要なところは
すごく共通しているので、段取りの組み方みたいなところというのは
自然に覚えてもらえるように教えると言うこと。
もしほんとに学びたいと言ってきたらきちっと教えますけど。
イベントの世界でケーブル巻きって作業があって、一番よく使うのが
音響のマイクのケーブルがあるんですが、それって決められた巻き方
のルールがあるんですよ。それとかも知っていて損はないんですね。
ようは長いものの巻き方の話なんですね。でも誰かに教わらなければ
できないものなので、例えばそれを知っているだけで庭の水道の
ホースみたいなものにも使えますし、あとでお見せしますよ。(笑)
■後ほど見せていただいたケーブル巻き
あとはやっぱり紐のしばり方、ロープの使い方、電気の知識とか
知っているといざというときに意外と役に立つことって意外とあるので
別に業界にいなくても、そういうことをどんどん教えて本人がなにか
勉強になったなって思ってもらえればこちらとしてはほんとに幸せな
ことはない、そう思われなくても自然に教える叩き込むぐらいの勢い
です。
--厳しそうですね。
反町:結構ボランティアといっても厳しいんでしょうねうちは。
基本的には甘いんですけど厳しいところは厳しくて、例えば
ボランティアで応募してきているのにダメだと思ったら、普通に
やめてもらうというのはあります。とにかく怪我したら終わりの
世界なんでそういう部分でちょっとでも不安を感じてびしっと言って
それでダメだと思ったら、やっぱり一緒にはできないということに
なりますよね。
まあそんな形でスタッフのモチベーションという意味では、今最後に
言ったことを含めて、ボランティアだから何でもウェルカムではなくて、
その先というか一歩上のものを目指している。
実際にそれで仕事もたくさんもらえるようになってきている、
というのもあると思います。
--みなさん音楽が好きだったりとか、イベントを作ったり実行する
ことが好きなのでしょうね。その割には制作スタッフが少ないのは
なぜかな?と思うのですが。難しいのですか?特殊なことがある?
反町:それですね、すごく微妙なところなんですけど。
難しくはないんですけど、例えば制作スタッフを外から雇った場合
日当1万ぐらいする内容なんですね。そんなに難しいとは思わないの
ですけど、今ミュージックキャストとして受けた制作内容をやるのに
段取りを組むのが核なので、現状は私がやるのが間違いないって
いうのと、私自身も安心できる、あとまだ私がなんとか出来ちゃって
いるので、やってしまっているっていうのが正直なところあると
思いますね。
ただ今後は少しずつそれを分担して、私の代わりが務まる人を育てて
いくというのも仕事じゃないですか。それをやりたいですけどただ
当面はまだ私がメインでやっていき、現場の仕事も重要なんです
けどどっちが人に任せられるかというとやはり現場なんですね。
制作の仕事というのはすごく性格もでるので、調整ごとってすごく
多いじゃないですか。そういうところできちっとした人材の育成の
体制を作る時間もない、でもそれはやっていかなければしょうがない
と思っています。
いま基本ボランティアなんでイベント要員としてきてもらっている
スタッフの皆さんは平日仕事、土日休みなんですね。
それで制作の仕事って完全に平日なので、その辺をうまくやるのって
難しいですね。
--キャストのみなさんには生活の基盤を持っていて欲しいのだけど
そうはいってもという感じですか?
反町:ほんとに制作の仕事も増えて、私一人では完全に無理っていう
ことになった時には必然的にそういう人が必要になりますよね。
たぶん今後そうなっていくのでそれに併せてそういうスタッフを
きちっと配置していきたいと思います。
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ここで一旦電話が入りインタビュー中断。
当日川崎駅でイベントにでるドラマーさんがシンバルを忘れたとの
ことで急遽お願いの電話が・・・
快く引き受ける反町さん。
反町:日曜の昼間に電話がかかってくるとドキっとしますね。
トラブル発生の連絡である確率が高いですから。
一つは忘れ物しました、もう一つが機材から音が出ませんとか、
そんなのが多いです。
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--話が変わりまして、武蔵小杉はいますごく変わっていますが、
反町さんからみてどう思われますか?
反町:私は生まれも育ちもここなんですね。人口が増えていくことに
関してはすごくいい街だと思っているので、今のところいまその中に
いるわけで、それも含めてすごく良いことだなとは思います。
ただ課題の話になりますがそういう増える人たちがどちらから来て
いるのか知りませんが、従来から住まわれている方との、意識と
言うか温度差と言うかきっとあるのではないかと感じていますので、
そういうなにか架け橋となるような地域に目を向けていただくような
仕掛けはなにかしなくちゃいけないのかな、そういう気持ちです。
--武蔵小杉ライフでも武蔵小杉の街の移り変わりをテーマに
しているのですが、最近になってオープンカフェみたいなものも
増えてきましたがどう思われますか?
反町:そういう仕掛けと言うか絶対に必要だと思うんですよね。
少なくとも何もやらなくていいという考えはないので、やっぱり
出来る人やるべき人というか、オープンカフェというのは手法の
一つに過ぎないと思うんですけど、新しく来た方と従来から暮らす
人とをつなぐ何かがないとよくないですし、やはり街づくり
というものを進めていく上で、何万人と新しく住まわれている方々の
意識を地域に向けていただくということは絶対に必要なことだと
思うんですよね。
そのために何かやる、それで、たまたまうちの話でいえばその時は
オープンカフェが出来ることだったんですよね。音楽とカフェという
憩いの場、交流の空間ということで。
だけどもっともっと改良して中身を工夫して、また開催時期を定着
させて、住民の方のことを考えたらほんとはもう平日の毎週何曜日の
この時間がみたいな感じで出来たらベストかも知れないですよね。
私個人的にはやりたいんですよ。普通に小杉にカフェ作りたいぐらい。
毎回仮設でやるのって、単発には仮設のよさもあるんですけど
固定でやったほうがいいような気もするんですよね。
--住民の参加もイベントがあって、その日だけ特別に行く
というのではなくてそこに行けばあるというほうが定着しますよね。
反町:絶対そうですね。
あとオープンカフェの場所とか内容についてももちろんそうですし
それ以外のことについてもどんどんなにかこういったことをやって
もらいたいという要望を欲しいですね。ミュージックキャストが
できそうなことであれば。
例えばキャンドルナイトとかどこかでやってみたいんですよね。
まだ小杉ではやっているという話はきいたことがないので。
--最後に武蔵小杉ライフ読者のみなさんに一言お願いします。
反町:カワサキミュージックキャストは川崎を拠点に音楽環境の
拡充を目的に活動しています。広い意味でいろいろな立場の方々
が身近に音楽を表現したり楽しんだりできる環境を作るという
ことです。
音楽は基本的には皆さんになんらかの縁がある、例えばテレビを
つければ音楽は流れてくるわけですし携帯電話ひとつにしても。
そういう意味でなにかしら関わりのある音楽というもののなかで
みなさんに合ったよりよい音楽環境を作っていくのを目的とした
法人です。
その法人の事務所が実は武蔵小杉にあります。
例えば実際に演奏をやっていて、まさにこの武蔵小杉に引っ越して
きてこっちでもやりたいのだけど、みたいな要望があればもちろん
相談していただきたいですし、音楽を聴きたいとかあるいは
スタッフをやってみたいとかそういう興味があったらぜひ気軽に
ご連絡をいただきたいと思います。
--本日はどうもありがとうございました。
【関連リンク】
NPO法人カワサキミュージックキャスト 公式ウェブサイト
In Unity2010 公式ウェブサイト
2008/9/27エントリ なかはらオープンカフェ、リエトコートで開催
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