リニア中央新幹線の環境アセスメント説明会(中原区)開催
2011年10月16日および18日に、JR東海によるリニア中央新幹線の
環境アセスメント説明会が開催されました。
■国際交流センター内の説明会看板
会場は川崎市国際交流センターで、説明会の正式名称はご覧の
看板の通り、「中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価
方法書(神奈川県)説明会」という非常に長いものです。
2011/9/27エントリでも申し上げたとおり、説明会内容はウェブ上で
開示されている環境影響評価方法書の範囲を超えるものでは
なく、配布された要約資料とスライドをもとに方法書についての
説明を行うものでした。
■JR東海 中央新幹線(東京・名古屋市間)法対象条例環境影響
評価方法書(川崎市)
http://company.jr-central.co.jp/company/others/
assessment/kawasaki/index.html
■当日の配布資料(方法書の要約)
リニア中央新幹線については、現時点では具体的な工事内容(立抗
の位置など)が未確定の状況であり、「これからこういった側面を調査
していきます」という段階です。
ただそれでも事業範囲内の住民としては気になるいくつかの点に
ついて、質疑応答が行われていました。
その要点について、以下にまとめてみたいと思います。おおまかな
主旨を要約したものですので、実際の言葉遣いとは異なることを
ご了承ください。
<2011年10月18日 中原区開催説明会の質疑応答>
■質問1 リニアの消費電力はどのくらいか。
(回答)
リニアの消費電力は、走行時において従来の新幹線の約3倍である。
ただし目的地までの到達時間が短いため、目的地まで走行するのに
かかる電力は単純に3倍ではない。
■質問2 神奈川県内の地下区間はどこになるか。
(回答)
相模川までは地下トンネルを予定している。基本的には大深度地下を
通すことになるが、駅を設置予定の相模原付近では一部例外あり。
具体的には今後協議検討していく。
■質問3 トンネル掘削による発生土はどう処分するのか。 (回答)
発生土はなるべく事業内で再利用することを想定している。また、
それ以外も公共の用途に再利用できるよう協議していきたい。
それでも活用しきれない場合、処分が必要になるが、それにあたっ
ては環境に十分配慮する。
現段階において、発生土の量は未確定である。
■質問4 ルート内において、断層はどこにあるのか。
(回答)
神奈川県内では、「藤野木愛川構造線」と呼ばれる断層がある。
ここは最短距離で通過するルートとする。断層は周辺にいくつか
あるが、なるべく回避するルート設定を行っている。
■質問5 事業区域内に井田杉山町は含まれているか。
(回答)
井田杉山町は含まれていない。
■質問6 今回のスライドがほしいが、ダウンロードできるか。
(回答)
スライドは説明会用であり、配布はしていない。ただし使用している
図面等はいずれも環境影響評価方法書から引用しているものなので、
そちらをJR東海のウェブサイト等でご参照いただきたい。
■質問7 阪神大震災では高架が倒壊したが、大丈夫か。
(回答)
阪神大震災以降、耐震対策を強化している。東日本大震災でも大きな
被害はなく、対策は有効であったと考えている。中央新幹線の建設に
あたっても、それ以上の基準で対策を講じていく。
■質問8 神奈川県の駅について報道もあったが、どこになるか。
(回答)
一部報道もあったが、神奈川県駅の位置については関係機関と
協議中である。
■質問9 リニア建設により川崎市の地下鉄ルートに影響があるか。
(回答)
リニアのルート検討にあたっては、川崎市を含む関係自治体との
協議をしていく。ただ、リニアは大深度地下であり難しい協議には
ならないと考えている。
■質問10 開業予定次期はいつか。
(回答)
開業時期は、東京―名古屋間について2027年を目標としている。
■質問11 立抗の位置はどこになるのか。
(回答)
立坑位置は具体的に決まっていない。今後関係各位と協議していく。
■質問12 上部で、あとから建物が建てられなくなったりしないか。
(回答)
厳しい審査があり基本的に大丈夫である。地盤が弱く、ビルを建て
るのに深い杭が必要となるような場所も、あらかじめさまざまな方法
で地盤調査を行う。
調査の結果地盤が弱い部分は、杭に干渉しない深さにトンネルが
建設されることになる。
■質問13 リニアは営業時において地上で震動が体感されるか。
(回答)
これまでの実験結果も踏まえ、基本的には振動は問題とならないと
考えている。トンネルは大深度地下であり、リニアは浮上して走行
するため、震動は起こりにくい構造になっている。
■質問14 電磁波は健康に悪影響が無いか。
(回答)
電磁波の問題は当社としても当初から慎重に検証を行ってきた。
リニアの磁界は小さく、健康上の問題はないと考えている。
■質問15 停電で全電源が失われても安全か。
(回答)
停電の場合にも、車両は落下したりはせず浮上走行を続ける。
一定スピードでタイヤが出てタイヤ走行に移行し、無停電電源で
稼動するバックアップブレーキ、ディスクブレーキで停車する。
■質問16 路線の位置はどのくらいの時期に決定するのか。
(回答)
路線のセンター位置は、環境影響評価準備書を提出する時期には
決定できるものと考えている。準備書がどのくらいの時期になるか
は、アセスメントにどの程度時間を要するかに依存する。
アセスメントでもっとも時間を要するのは、猛禽類の調査で、
巣の調査を2シーズン行う必要がある。
現段階での見込みとして、2年くらいの期間を想定している。
■質問17 全体の事業費、神奈川県内での事業費はいくらか。
(回答)
全体の事業費は約5兆円。神奈川県では個別に分析していない
ため、お答えすることができない。
※ ※ ※
質疑応答は以上です。
中原区内の話として気になるのは具体的なルートの位置とその
決定時期ですが、質問16への回答として、「およそ2年後」という
目安が示されました。
アセスメントの調査進捗次第ということになりますが、所要期間を
左右する最大の要素は猛禽類の巣の調査ということです。
アセスメントにあたっては、実にさまざまな側面での調査があるもの
ですね。
■現在公表されている対象事業実施区域
現在、上記の通りリニア中央新幹線の事業範囲が公表されてい
ますが、この範囲のどこかに路線が設定されます。
路線の中心位置が決定されると、その後は立抗の位置の協議
など、具体的に中原区内での工事内容が決まってくることに
なるでしょう。
2027年に完成するとしてもまだこれから16年の時間を要するわけ
で、その頃の中原区はどのようになっているか、ふと想像が膨らみ
ます。
【関連リンク】
JR東海 事業紹介 超電導リニアによる中央新幹線の推進
2011/9/27エントリ JR東海がリニア中央新幹線の環境アセスメント
手続を開始:中原区内の事業区域縦覧と説明会開催