川崎歴史ガイド・中原街道ルート(1)追補編:「丸子の渡し」の歴史伝える2つの碑
財団法人川崎市文化財団の事業に「川崎歴史ガイド」があります。
これは、市内の歴史文化遺産の保存と紹介を目的とした事業で、市内の歴史をたどる9つのルートを設定し、現地にガイドパネルを設置するほか、パンフレットを作成しているものです。
中原区においては、「中原街道」と「二ヶ領用水」がルートに設定されており、弊紙では2009年より長期にわたって「中原街道ルート」のガイドパネルをご紹介してまいりました。
「中原街道ルートは「丸子の渡し」からスタートするのですが、2009年の連載スタート時にすでに「丸子の渡し」のガイドパネルは行方不明となっており、その旨川崎市文化財団のウェブサイトにも記載されていました。
そのため当時は現地周辺の写真のみしかご紹介できていなかったのですが、丸子橋近くの河川敷や土手には川崎北ロータリークラブや、NPO法人多摩川エコミュージアムが設置した碑がありました。
今回はこれらの碑を追補編としてご紹介したいと思います。
■川崎歴史ガイド・中原街道ルート「丸子の渡し場跡」の碑
「丸子の渡し」とは、丸子橋が出来る前に現在の川崎市中原区と東京都大田区を連絡していた渡し船です。
まず、川崎北ロータリークラブが設置した碑は、丸子橋近くの河川敷にありました。
写真奥は丸子橋第一グラウンドで、よく少年サッカークラブなどが試合をしています。
■「丸子の渡船場跡」のガイド
この碑には「丸子の渡船場跡」と題して、説明が記載されていました。
文章は以下の通りです。
近世初期、中原往還には小杉(現中原区)、中原(現平塚市)に将軍の休泊施設である御殿が設けられ、江戸と相模凹面を結ぶ重要な幹線であった。
その後、東海道が整備されるにしたがい、当往還は地域の生活圏を結び、生産物資を運ぶ道に変貌し、殊に、往きは農産物を、復りは農作物の肥料となる下肥えを積んだ荷重で賑わい、又、道の両側には農家や商家が立ち並び、居酒屋などで一休みする人々も多かったと云う。
そして、大正年間の河川改修、昭和十年の丸子橋開通等により今の中原街道の姿へと変わってきたのである。
丸子の渡船は、はじめ上丸子村が運営し、元禄年間に二子村の市郎兵衛の個人経営に、さらに明和二年(西暦1765年)から上丸子・二子・下沼部三村の運営となり明治に至った。
文化七年の資料によれば、渡船場には水主八名、定番一名の九名が詰め、馬船三艘が就航し人馬の往来は頻繁で夜間も通行ができたという。
その一は今の丸子橋の下流、この辺りにあたる。
平成元年三月吉日 建碑
川崎北ロータリークラブ
「丸子の渡し」は公共事業と思っていましたが、一時は個人経営だった時もあったのですね。
平成元年は1989年でしたから、弊紙が2009年に「川崎歴史ガイド・中原街道ルート」の第1回として記事化した際にはすでに設置からちょうど20年にあたりました。
■土手のNPO法人多摩川エコミュージアムによる碑
またこちらは、丸子橋近くの土手の上にある碑です。
NPO法人多摩川エコミュージアムが2008年3月に設置したものです。
ご覧の通り説明はコンパクトですが、当時の渡し船の写真が掲載されています。
1935年の丸子橋の架橋により廃止ということですから、まだ渡し船に乗ったことがある方も、ご存命でいらっしゃることと思います。
■「丸子の渡しまつり」
現在は渡し場の名残りはありませんが、毎年渡し船を再現した「丸子の渡しまつり」が開催されています。
現在は丸子橋が便利ですし、かつて「あばれ川」と呼ばれた時代よりずっと治水も進みましたが、当時の歴史を知ることも大切かと思います。
■川崎歴史ガイドのパンフレット
■武蔵小杉ライフ公式Youtubeチャンネル 川崎&大田区両岸で開催!「第11回丸子の渡し祭り」&「多摩川で和むe体験」
【関連リンク】
・川崎市文化財団ウェブサイト 川崎歴史ガイド・中原街道ルート
(丸子の渡し関連喜い)
・2023/9/23エントリ 「第10回丸子の渡し祭り」「多摩川で和むe体験」で丸子橋両岸を渡し船で繋ぎ賑わい、天然鮎塩焼き販売や走り方教室も
・2024/1/11エントリ 「第11回丸子の渡し祭り」「多摩川で和むe体験」が丸子橋近く多摩川両岸で開催、鮎の塩焼きも美味
(川崎歴史ガイド・中原街道ルート連載)
・2009/9/23エントリ (1):「丸子の渡し」
・2009/10/6エントリ (2):「旧原家母屋跡地」
・2009/11/9エントリ (3):「旧名主家と長屋門」
・2009/11/29エントリ (4):「明治の醤油作りと八百八橋」
・2009/12/21エントリ (番外編):「武蔵小杉駅の八百八橋」
・2010/2/9エントリ (番外編):「丸子の渡しガイドパネル入札不調」
・2010/2/14エントリ (5):「小杉御殿と『カギ』の道」
・2010/3/30エントリ (6):「小杉御殿の御主殿跡」
・2010/5/23エントリ (番外編)「中原区役所の八百八橋」
・2010/6/28エントリ (7):「小杉陣屋と次大夫」
・2010/7/19エントリ (8):「御蔵稲荷と多摩川」
・2010/8/19エントリ (9):「西明寺と小杉学舎」
・2010/11/12エントリ (10):「小杉駅と供養塔」
・2011/2/11エントリ (11):「庚申塔と大師道」
・2011/3/27エントリ (12):「小杉十字路」
・2011/4/7エントリ (番外編):「中原区役所の八百八橋」リニューアル
・2011/5/3エントリ (番外編):「中原区役所の八百八橋」看板設置と石橋ベンチ
・2011/7/9エントリ (13):「二ヶ領用水と神地橋」
・2011/9/4エントリ (14):「泉沢寺と門前市」
・2012/12/1エントリ 「安藤家長屋門」が川崎市指定文化財に、本日12月1日(日)に一般開放
・2013/2/9エントリ 「安藤家長屋門 川崎市重要歴史記念物記念イベント」が2013年3月14日(木)、30日(土)開催
・2013/2/12エントリ 川崎市重要歴史記念物「安藤家長屋門」一般公開レポート
・2013/8/16エントリ (15):「旧中原村役場跡」
・2014/2/10エントリ (16):「木月堀と『くらやみ』」
・2015/12/20エントリ (番外編):旧原家母屋跡地「GATE SQUARE小杉御殿町」の歴史展示
・2016/3/16エントリ (番外編):神明神社と上小田中公園に残る、「くらやみ」の歴史
・2016/4/8エントリ (番外編):旧中原街道「桜坂」から見えるソメイヨシノと、武蔵小杉の高層ビル群
・2016/8/16エントリ (番外編):大田区側「おいと坂」と、「美富士橋」から見る武蔵小杉の高層ビル群
・2021/4/27エントリ 川崎歴史ガイド・中原街道ルート(番外編):子母口富士見台古墳から見た武蔵小杉の高層ビル群と、富士見台からの富士山
・2022/8/30エントリ 川崎歴史ガイド・中原街道ルート(番外編):平塚市の中原御殿跡訪問、「中原小学校」「御殿一丁目」などまるで異世界の中原区を散策 ・2022/9/9エントリ 中原区×平塚市コラボ・中原図書館で中原街道史料展示開始、小杉御殿・川崎フロンターレvs中原御殿・湘南ベルマーレ「中原街道御殿ダービー」も熱戦
・2022/9/29エントリ 中原区・なかはら散策ガイドの会が平塚市コラボの中原街道まち歩きを開催、小杉御殿・中原御殿の歴史を辿る
これは、市内の歴史文化遺産の保存と紹介を目的とした事業で、市内の歴史をたどる9つのルートを設定し、現地にガイドパネルを設置するほか、パンフレットを作成しているものです。
中原区においては、「中原街道」と「二ヶ領用水」がルートに設定されており、弊紙では2009年より長期にわたって「中原街道ルート」のガイドパネルをご紹介してまいりました。
「中原街道ルートは「丸子の渡し」からスタートするのですが、2009年の連載スタート時にすでに「丸子の渡し」のガイドパネルは行方不明となっており、その旨川崎市文化財団のウェブサイトにも記載されていました。
そのため当時は現地周辺の写真のみしかご紹介できていなかったのですが、丸子橋近くの河川敷や土手には川崎北ロータリークラブや、NPO法人多摩川エコミュージアムが設置した碑がありました。
今回はこれらの碑を追補編としてご紹介したいと思います。
■川崎歴史ガイド・中原街道ルート「丸子の渡し場跡」の碑
「丸子の渡し」とは、丸子橋が出来る前に現在の川崎市中原区と東京都大田区を連絡していた渡し船です。
まず、川崎北ロータリークラブが設置した碑は、丸子橋近くの河川敷にありました。
写真奥は丸子橋第一グラウンドで、よく少年サッカークラブなどが試合をしています。
■「丸子の渡船場跡」のガイド
この碑には「丸子の渡船場跡」と題して、説明が記載されていました。
文章は以下の通りです。
近世初期、中原往還には小杉(現中原区)、中原(現平塚市)に将軍の休泊施設である御殿が設けられ、江戸と相模凹面を結ぶ重要な幹線であった。
その後、東海道が整備されるにしたがい、当往還は地域の生活圏を結び、生産物資を運ぶ道に変貌し、殊に、往きは農産物を、復りは農作物の肥料となる下肥えを積んだ荷重で賑わい、又、道の両側には農家や商家が立ち並び、居酒屋などで一休みする人々も多かったと云う。
そして、大正年間の河川改修、昭和十年の丸子橋開通等により今の中原街道の姿へと変わってきたのである。
丸子の渡船は、はじめ上丸子村が運営し、元禄年間に二子村の市郎兵衛の個人経営に、さらに明和二年(西暦1765年)から上丸子・二子・下沼部三村の運営となり明治に至った。
文化七年の資料によれば、渡船場には水主八名、定番一名の九名が詰め、馬船三艘が就航し人馬の往来は頻繁で夜間も通行ができたという。
その一は今の丸子橋の下流、この辺りにあたる。
平成元年三月吉日 建碑
川崎北ロータリークラブ
「丸子の渡し」は公共事業と思っていましたが、一時は個人経営だった時もあったのですね。
平成元年は1989年でしたから、弊紙が2009年に「川崎歴史ガイド・中原街道ルート」の第1回として記事化した際にはすでに設置からちょうど20年にあたりました。
■土手のNPO法人多摩川エコミュージアムによる碑
またこちらは、丸子橋近くの土手の上にある碑です。
NPO法人多摩川エコミュージアムが2008年3月に設置したものです。
ご覧の通り説明はコンパクトですが、当時の渡し船の写真が掲載されています。
1935年の丸子橋の架橋により廃止ということですから、まだ渡し船に乗ったことがある方も、ご存命でいらっしゃることと思います。
■「丸子の渡しまつり」
現在は渡し場の名残りはありませんが、毎年渡し船を再現した「丸子の渡しまつり」が開催されています。
現在は丸子橋が便利ですし、かつて「あばれ川」と呼ばれた時代よりずっと治水も進みましたが、当時の歴史を知ることも大切かと思います。
■川崎歴史ガイドのパンフレット
■武蔵小杉ライフ公式Youtubeチャンネル 川崎&大田区両岸で開催!「第11回丸子の渡し祭り」&「多摩川で和むe体験」
【関連リンク】
・川崎市文化財団ウェブサイト 川崎歴史ガイド・中原街道ルート
(丸子の渡し関連喜い)
・2023/9/23エントリ 「第10回丸子の渡し祭り」「多摩川で和むe体験」で丸子橋両岸を渡し船で繋ぎ賑わい、天然鮎塩焼き販売や走り方教室も
・2024/1/11エントリ 「第11回丸子の渡し祭り」「多摩川で和むe体験」が丸子橋近く多摩川両岸で開催、鮎の塩焼きも美味
(川崎歴史ガイド・中原街道ルート連載)
・2009/9/23エントリ (1):「丸子の渡し」
・2009/10/6エントリ (2):「旧原家母屋跡地」
・2009/11/9エントリ (3):「旧名主家と長屋門」
・2009/11/29エントリ (4):「明治の醤油作りと八百八橋」
・2009/12/21エントリ (番外編):「武蔵小杉駅の八百八橋」
・2010/2/9エントリ (番外編):「丸子の渡しガイドパネル入札不調」
・2010/2/14エントリ (5):「小杉御殿と『カギ』の道」
・2010/3/30エントリ (6):「小杉御殿の御主殿跡」
・2010/5/23エントリ (番外編)「中原区役所の八百八橋」
・2010/6/28エントリ (7):「小杉陣屋と次大夫」
・2010/7/19エントリ (8):「御蔵稲荷と多摩川」
・2010/8/19エントリ (9):「西明寺と小杉学舎」
・2010/11/12エントリ (10):「小杉駅と供養塔」
・2011/2/11エントリ (11):「庚申塔と大師道」
・2011/3/27エントリ (12):「小杉十字路」
・2011/4/7エントリ (番外編):「中原区役所の八百八橋」リニューアル
・2011/5/3エントリ (番外編):「中原区役所の八百八橋」看板設置と石橋ベンチ
・2011/7/9エントリ (13):「二ヶ領用水と神地橋」
・2011/9/4エントリ (14):「泉沢寺と門前市」
・2012/12/1エントリ 「安藤家長屋門」が川崎市指定文化財に、本日12月1日(日)に一般開放
・2013/2/9エントリ 「安藤家長屋門 川崎市重要歴史記念物記念イベント」が2013年3月14日(木)、30日(土)開催
・2013/2/12エントリ 川崎市重要歴史記念物「安藤家長屋門」一般公開レポート
・2013/8/16エントリ (15):「旧中原村役場跡」
・2014/2/10エントリ (16):「木月堀と『くらやみ』」
・2015/12/20エントリ (番外編):旧原家母屋跡地「GATE SQUARE小杉御殿町」の歴史展示
・2016/3/16エントリ (番外編):神明神社と上小田中公園に残る、「くらやみ」の歴史
・2016/4/8エントリ (番外編):旧中原街道「桜坂」から見えるソメイヨシノと、武蔵小杉の高層ビル群
・2016/8/16エントリ (番外編):大田区側「おいと坂」と、「美富士橋」から見る武蔵小杉の高層ビル群
・2021/4/27エントリ 川崎歴史ガイド・中原街道ルート(番外編):子母口富士見台古墳から見た武蔵小杉の高層ビル群と、富士見台からの富士山
・2022/8/30エントリ 川崎歴史ガイド・中原街道ルート(番外編):平塚市の中原御殿跡訪問、「中原小学校」「御殿一丁目」などまるで異世界の中原区を散策 ・2022/9/9エントリ 中原区×平塚市コラボ・中原図書館で中原街道史料展示開始、小杉御殿・川崎フロンターレvs中原御殿・湘南ベルマーレ「中原街道御殿ダービー」も熱戦
・2022/9/29エントリ 中原区・なかはら散策ガイドの会が平塚市コラボの中原街道まち歩きを開催、小杉御殿・中原御殿の歴史を辿る