犯罪のないまちづくり
7月の始めごろに新聞で特定非営利活動法人防犯ネットワークの
紹介がされていました。
このNPO法人の活動はもともとお隣の高津区で始まった模様で、
同団体のホームページによると、
「日常生活の中で行える防犯運動を展開することにより、誰もが
生き生きと安心して暮らせる町の実現を目指す。」という目的の
元に活動しているとのことです。
■特定非営利活動法人防犯ネットワーク 公式ウェブサイト
http://www.bouhan-network.com
(ホームページより)
<理念>
子ども、女性、お年寄り、誰もが安心して生き生きと暮らせる町の実現。
<スローガン>
情報を共有する。
見て見ぬふりはしない。
自分に出来ることから実際に行動する。
6月末にこの団体の中原支部が立ち上がり、「中原区犯罪発生状況」
というメールマガジンの配信を始めました。
同メールマガジンによると9月16日現在の登録者数は
NPO法人防犯ネットワーク会員数7,202名
(中原321名・高津4,752名・宮前1,894名・麻生235名)
となっており、まだ中原区での認知度は低い模様です。
さてこのメールマガジンに登録すると週に3回ほど中原区内の
犯罪発生状況をまとめたメールが送られてきます。
情報の提供は恐らく警察の協力を得ているのだと思われますが、
ごく身近な場所で、かつ直近の日付の犯罪履歴が記されており
非常にリアルなものを感じます。
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【メール一部引用】
ここ数日間の夕刻に数回、丸子通1丁目・新丸子町・新丸子東
1丁目付近で、スタンガンを持った男性が、暴言を吐きながら
徘徊しているという事案が発生し中原警察署に届けました。
事務所荒らし発生。
9月14日18:30~9月15日10:00の間に上新城2丁目で、
1階店舗のガラスを割られて侵入されましたが、盗まれた
物はありませんでした。(未遂)
9月14日18:45~9月15日9:20の間に上小田中6丁目で、
1階店舗のガラスを割られて侵入され、室内から現金が
盗まれました。
*補助錠をつけましょう。
自転車盗3件発生。
9月14日3件/9月15日0件
木月祇園町、新城5丁目、下小田中1丁目
*路上放置はせず、頑丈なダブルロックをかけましょう。
*自宅や会社の駐輪場だからと安心しないで、確実な施錠と
ダブルロックをかけましょう。
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内容は空き巣、車上ねらい、住宅侵入などの窃盗犯が多いですが
自分の知っている身近な町名が出てくるたびにドキリとします。
特に自転車盗については毎日のように発生しており、こんなにも
身近で犯罪が起きているという事実を突きつけられるとショックを
感じ得ません。
しかしその一方で毎日のように送られてくるメールマガジンを
見ているとまた別の感覚に襲われます。
始めのうちは、「気をつけなくては」とか、「自転車にはカギを
かけよう」などと思っていましたが、日がたつにつれていつの
間にか、「ああ、またか」と軽く流してしまっているような自分に、
ふと気がつきます。いわゆる狼少年効果というものでしょうか。
いくら気をつけるといっても毎日のようにあれこれ心配していた
のでは身が持ちません。
犯罪というものは実はこれほど身近で発生していながら、自分が
被害者になるまで気がつかないもの、ということを改めて考え
させられたような気がします。
私達はこのような情報とどのように向き合っていけばよいので
しょうか?この街は安全なのでしょうか?
そこで川崎市の防犯情報のページに掲載されているデータを
見てみました。
■犯罪のないまちづくり
http://www.city.kawasaki.jp/25/25tiiki/home/bouhan/
bouhan1.htm
このページには川崎市内の刑法犯の認知状況が掲載されています。
この中で、まず過去7年間の推移を見てみると、
■川崎市内刑法犯認知件数(過去7年間の推移) 確定値
http://www.city.kawasaki.jp/25/25tiiki/home/bouhan/
keihouhantoukei(H14-H20).pdf
~川崎市内における刑法犯認知件数の推移を見ますと、平成14年
(2002)年の3万102件をピークに6年連続で減少し、
平成20(2008)年は1万7,641件(-41.4%)
となっています。~
とあります。犯罪の件数全体は近年減少傾向にあるようです。
次に区別の発生状況のデータを見てみると、
■川崎市内刑法犯認知件数(区別対前年比)
http://www.city.kawasaki.jp/25/25tiiki/home/bouhan/
(H21.6)kubetuhikaku.pdf
平成20年中の認知件数17,641件のうち
件数 | 平成14年比 | 増減率(%) | |
川崎市総計 | 17,641 | -12,461 | -41.4 |
川崎区 | 5,124 | -3,202 | -38.5 |
中原区 | 2,966 | -2,368 | -44.4 |
高津区 | 2,508 | -1,422 | -36.2 |
の順番となっています。
件数を見ただけでは中原区の年間約3千件という数字が多いのか
少ないのか素人にはわかりませんが、事実と傾向は理解することが
できます。
犯罪の発生地域については繁華街や人口の多さなどが影響している
のだと思われますが、いずれも平成14年比で見ると大幅に下がって
いることが見て取れます。
ではその内訳はどうなっているかというと
■川崎市内刑法犯認知件数(主な罪種別対前年比)
http://www.city.kawasaki.jp/25/25tiiki/home/bouhan/(H21.6)
zaisyubetuhikaku.pdf
刑法犯総数17,641件のうち自転車盗5,316件(30.1%)がもっとも
多くついで万引き1,685件(9.6%)の順となっています。
防犯ネットワークのメールマガジンをみて、自転車盗は毎日のように
発生していると書きましたが、実際のデータとも合致しているようです。
■放置自転車を撤去する川崎市のトラック
ご存知のように武蔵小杉駅周辺では現在再開発により駐輪場の確保と
放置自転車の撤去、が大きな課題になっています。
駅前には十分な駐輪場が確保されているとは言いがたく、あとしばらく
は現在のような状況が続くと予想されます。
■武蔵小杉-元住吉駅間にある関東労災病院裏の無料駐輪場、遠い。
放置自転車を残す、ということは言い換えれば犯罪の温床を育てて
いる、と言えるのかも知れません。
先日開催された、なかはらっぱ祭りでもNPO法人小杉駅周辺エリア
マネジメントによる自転車放置防止活動や、自転車と共生するまち
づくり委員会の活動が紹介されていました。
■中原区公式ウェブサイト 自転車と共生するまちづくり
http://www.city.kawasaki.jp/65/65tisin/home/tisin26/tisin26_01.htm
NPO法人防犯ネットワークのページには
「ブロークンウィンドウズ理論」というものが紹介されています。
その意味は
~住民が地域に関心を持っていないというサインは、その地域を
どんどん荒れさせる原因となり、犯罪が連鎖して増えていくと
いうものです。~
と説明されています。
小さな犯罪を放置することはより重大な犯罪へつながる可能性を
残すことになる、という話を聞いたことがあります。
防犯意識を持つということは、単に発生状況をみていたずらに
不安を感じることではなく、自分達の日ごろの行動がどのように
犯罪の発生に関わっているのか?という意識を持つべきなのでは
ないかと思いました。
街が変わり住民が増え、見知らぬ人が多くなったいまだからこそ
まずこのようなことに関心をもつ、ということが我々一般市民の
できる第一歩ではないでしょうか?
【関連リンク】
特定非営利活動法人防犯ネットワーク 公式ウェブサイト
2008/12/26エントリ 武蔵小杉駅周辺の放置自転車撤去
2009/7/20エントリ 第5回なかはらっぱ祭りと、実行委員会