川崎市が「国道409号(小杉工区)沿道まちづくり」を発表、総合自治会館跡地に商業・住居複合ビルを構想
川崎市が、2014年8月27日付で「国道409号(小杉工区)沿道まちづくりの基本的な考え方」を発表しました。
■川崎市報道発表資料 国道409号(小杉工区)沿道まちづくりの基本的な考え方について
http://www.city.kawasaki.jp/templates/press/500/0000060751.html
「国道409号(小杉工区)沿道まちづくり」とは、国道409号(府中街道)の拡幅や総合自治会館の移転等に伴い、沿道地域の総合的なまちづくりの方向性を検討するものです。
本案件については、2012/8/16エントリにおいて、都市再生機構が同地域を「小杉3丁目南地区」とした都市整備事業の検討をスタートしたことをお伝えしておりました。
その後同機構による事業化検討が進み、川崎市からの発表となったものと思います。
■「国道409号(小杉工区)沿道まちづくり」のマップ
■総合自治会館跡地周辺のまちづくり方向性
今回発表された構想では、「国道409号(小杉工区)沿道まちづくり」の区域を下記の3つのゾーンに分けています。
①「シビックゾーン」(区役所暫定駐車場)
②「沿道複合利用ゾーン」(総合自治会館用地周辺)
③「にぎわい誘導ゾーン」(小杉駅入口交差点付近)
<①「シビックゾーン」(区役所暫定駐車場)>
「シビックゾーン」は、中原区役所周辺のエリアです。
旧中原消防署跡地の一部が区役所の暫定駐車場として運用されていますが、この暫定駐車場は小杉町3丁目中央地区の再開発ビルに移転するため、2014年度中にその役割を終える予定です。
また隣接する残りの用地も、JR武蔵小杉駅連絡通路をバリアフリー化するために取り壊した民間ビルの代替用地として一旦は提供されたものの、その後何も活用はされず塩漬けのままになっています。川崎市では、この民間に提供した用地を買い戻すことを検討しています。
結果として、このまま川崎市の意図通りに推移しますと、旧中原消防署跡地はふたたびそっくりそのまま川崎市の市有地として未利用の状態で戻ってくる形になります。
■中原休日急患診療所
■中原保健所(中原区役所別館)
その一方で、中原区役所の敷地内には、人口増加に比して施設の老朽化や狭隘化が進んだ中原休日急患診療所、中原保健所など行政サービス機能が集中しています。
この建て替え候補地として旧中原消防署跡地が浮上していることを、2013/12/30エントリにおいてすでにお伝えしておりました。
今回発表された「国道409号(小杉工区)沿道まちづくりの基本的な考え方」においても、明確には書かれていないものの、
「多くの市民が幅広く利用しやすいシビックゾーンの実現に向け、土地利用転換の機会を捉えた公共公益機能の効率的・効果的な再編整備を進める」
とあり、ほぼ同じ内容を行政的な言葉で伝えるものになっています。
<②「沿道複合利用ゾーン」(総合自治会館用地周辺)>
「沿道複合利用ゾーン」は、総合自治会館周辺のエリアです。
2013/1/31エントリでお伝えしたように、総合自治会館は小杉町3丁目東地区の再開発ビルへの移転が決定しており、2019年頃には国道409号(府中街道)沿いに大きな用地が空くことになります。
一方で周辺の沿道には既存店舗や住居が密集しており、拡幅にあたっても多くの地権者が沿道への残留を希望されているということです。
この「沿道複合利用ゾーン」については、多少具体化されたビジョンが報道発表資料内で示されています。
それによると、総合自治会館跡地には広場を備えた共同ビルを建設し、低層部には店舗、上層部には沿道地権者の移転先に資する共同住宅を導入することが方向性として定められています。
■共同ビルのイメージ
こちらはあくまでも事業として具体化される前のイメージパースですが、1~2階が店舗、3階以上が住宅という想定になっているようです。
この共同ビルは旧中原消防署跡地に移転が想定される行政施設(休日急患診療所・保健所)との連続性を保つこととされています。
府中街道側は歩道が拡幅され、反対側は二ヶ領用水の遊歩道空間と一体化する形になりますので、歩行者導線としても従来より改善されることになるでしょう。
<③「にぎわい誘導ゾーン」(小杉駅入口交差点付近)>
最後の「にぎわい誘導ゾーン」は、府中街道の小杉駅入口交差点付近(法政通り商店街入口)のエリアです。
この交差点は東急武蔵小杉駅や法政通り商店街への入口でもあり、歩行者の通行量も多い一方で、十分な歩行スペースが確保されていない現状があります。
このゾーンについてはあまり具体的なビジョンは示されておらず、
「民間活力を活かし、沿道のにぎわい・駅前商業との連続性や安全な歩行空間の創出を適切に誘導する」
とされています。
これは府中街道の拡幅に伴う既存ビルの建て替え等にあたって、行政の立場として歩道状空地を誘導したり、商業の連続性が失われないように低層部には店舗が入るような計画を誘導していくということかと思います。
今回発表された「国道409号(小杉工区)沿道まちづくりの基本的な考え方」は、要点をまとめると以上のようになります。
■今後のスケジュール(予定)
2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | |
国道409号沿道まちづくり | ●敷地整理の調整 ●自治会館用地の土地利用検討 |
●敷地整理の実施 ●自治会館用地の共同化に係る取組 |
●敷地整理の完了 ●共同化着工(2019) |
|
小杉町3丁目東地区 | 権利変換認可 | 着工 | 完成(2019) |
全体のスケジュールとしては、小杉町3丁目東地区再開発事業が2018年度(2019年)に完成するまでに国道409号(府中街道)の敷地整理や共同化事業の調整を進め、2019年の総合自治会館の移転をもって共同化事業を着工させるものとしています。
もっとも、こればかりは沿道の多くの地権者が絡むことでもありますし、この通りに進むものかどうかはわかりませんね。
中原街道など、道路拡幅は当初の想定よりも遅れるのが常となっています。
ただ、川崎市から国道409号沿道(小杉3丁目南地区)のまちづくりの方針が示されたことは、まずはひとつの大きなステップといえるでしょう。
特に歩行者導線など安全面で課題がある一方、二ヶ領用水という地域の魅力ある資産もある地域ですので、より暮らしやすいまちづくりが今後具体化されていくことを期待しています。
■総合自治会館裏手の二ヶ領用水遊歩道
【関連リンク】
武蔵小杉ライフ:再開発情報:その他関連情報 府中街道
2008/4/21エントリ 中原消防署 新庁舎移転
2009/5/22エントリ 中原消防署跡地の中原区役所暫定駐車場
2009/11/13エントリ 中原区の休日急患診療所
2010/6/14エントリ 東京機械製作所跡地再開発始動と、府中街道と二ヶ領用水の一体整備案
2011/10/1エントリ 川崎市が旧中原消防署跡地をJR東日本に売却、新駅連絡通路跨線橋バリアフリー化のための隣接ビル代替地活用へ
2012/8/6エントリ 都市再生機構が「小杉3丁目南地区」の事業化を検討開始
2013/12/30エントリ 旧中原消防署跡地が「中原休日急患診療所」「中原保健所」の移転候補地に