川崎フロンターレ×JICA連携事業でJリーグ社会貢献モデルをベトナム展開、「算数ドリル」ベトナム語版も
川崎フロンターレと公益財団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)、独立行政法人国際協力機構(JICA)が、ベトナムでの社会課題解決に取り組む共同事業「SDGs及び社会課題に挑むスクール事業の海外展開ーボールでつなぐ、人、まち、信頼ー」を推進しています。
2023年7月8日、日本・ベトナム外交関係樹立50周年を機会に駐日本ベトナム社会主義共和国参事官・政務担当副部長のグエン・ミン・ハン氏を迎えて、等々力陸上競技場において川崎フロンターレら4者による報道機関向けの事業説明会が行われました。
■事業説明会見に登壇したグエン・ミン・ハン氏ら4氏
今回の事業説明会見に登壇したのは、下記の4氏です。
駐日本ベトナム社会主義共和国 参事官・政務担当副部長 グエン・ミン・ハン氏(左から3番目)
JICA青年海外協力隊事務局 事務局長 橘秀治氏(同2番目)
公益財団法人日本プロサッカーリーグ 事業本部海外事業部 大矢丈之氏(同1番目)
株式会社川崎フロンターレ 事業本部管理部長 山田直弘氏(同4番目)
Jリーグでは、スローガン「Jリーグ百年構想~スポーツで、もっと、幸せな国へ。~」を掲げ、全国60のクラブが各地でスポーツ文化の振興や地域課題解決に取り組んでいます。
日本国内だけでなく世界にも目を向けて、サッカー人気が高い東南アジア地域を中心に、Jリーグが培ってきたノウハウを提供することで、各国の競技力向上、さらいはアジアのサッカー市場の成長を目指してアジア戦略を推進しています。
一方、JICAは開発途上国の発展に長く尽力し、人材育成やインフラ等の社会基盤整備に注力してきました。近年では人々の基礎適生活を支える「スポーツ」にも注目し、重要な開発支援分野として活動しています。
今回説明が行われた事業は両団体の強みとニーズを掛けあわせた共同事業です。
Jリーグが日本国内で推進している社会貢献・地域貢献の事業モデルが開発途上国にも展開可能か、調査およびパイロット(試験的)事業を実施することを目的としています。
共同事業の実施に当たっては、これまで健康増進や教育分野での地域課題解決において実績を積み上げ、高い評価を受けている川崎フロンターレが対象クラブとなりました。
川崎フロンターレが国内で実践してきたスクール事業を通じた社会貢献モデルをパイロット事業としてベトナムに導入し、ベトナムの社会課題解決に貢献するとともに、事業終了後に川崎フロンターレが自律的に活動を継続・発展させていくための基盤を確立することを企図しています。
事業実施期間は2024年3月までで、主に「健康増進事業」としてベトナムビンズオン省でのサッカースクール事業や老若男女を対象とした健康増進プログラムを提供し、またベトナム語版「川崎フロンターレ算数ドリル」を作成して同省での補助教材として展開します。
ベトナム語版のドリルはさらに日本国内在住のベトナム人で、日本語での勉強に課題を抱える児童にも提供することを予定しているということです。
■ベトナム語版 川崎フロンターレ算数ドリル表紙デザイン
©KAWASAKI FRONTALE
以下、登壇したグエン・ミン・ハン氏によるご挨拶、また川崎フロンターレら各氏による事業説明の会見のうち、質疑応答を除く全文を掲載いたします。
■駐日本ベトナム社会主義共和国参事官 グエン・ミン・ハン氏
(グエン・ミン・ハン氏)
みなさん、こんにちは。世界で圧倒的に人気なスポーツ、私もサッカーのファンです。だからこそ本日等々力上競技場に来ることができて大変嬉しいです。
川崎フロンターレは10年前にベトナムでの活動が始まり、国際親善試合からU-13 世代での国際サッカー大会であるユースカップ開催、リーグクラブ、またベトナムのビンズオン省でのサッカースクールを開校など、活躍を聞いてたいへん感動しております。
今年は1月に(日越)外交関係樹立50周年で、両国はさまざまな行事を行います。要人往来をはじめ、相互訪問を含め相互の協力計画の効果的な実施、政治・外交から国防・安全保障、貿易・投資、労働者教育、文化・医療・科学技術、観光協力、地方間の国民間交流などを強化します。
JICA では人々の基盤的な生活を支えるスポーツを重要な開発分野として事業を促進することや、川崎フロンターレのベトナムビンズオン省でのスポーツ実施にて、サッカースクールを事業展開し、さまざまなプログラムを提供するベトナムでの健康増進事業に貢献することはとても有意義です。50周年のためにそんなに準備をしてくれて、まことに感謝しております。
両国の関係 50周年の重要な節目に皆様のご貢献、役割をずっと記憶していると思います。
みなさま、ベトナム最大級のパートナーとしての日本としての関係の重要性を両国のリーダーが確認しました。その越日の広範な戦略的なパートナーシップの強化のために全力をコミットし、皆様と一緒に50周年記念のお祝いをしましょう。是非、一緒に協力してください。
■川崎フロンターレ 事業本部管理部長 山田直弘氏
(川崎フロンターレ 山田直弘氏)
みなさん、こんにちは。川崎フロンターレの山田でございます。本日は代表取締役社長の吉田に別件が入りまして、私が代理でご説明をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
まずグエン・ミン・ハン様、ご祝辞をいただきまして、ありがとうございました。ようこそ等々力へおこしくださいました。ありがとうございます。また、JICA の立花様、Jリーグの大矢様、ご来場ありがとうございます。
さきほどご紹介にありましたが、今年は日越外交関係樹立50周年の記念すべき年になります。川崎フロンターレもさまざまなベトナムでの活動を行う予定でございます。これまでのベトナムでの活動も含めてご紹介させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ベトナムでの活動は、日越友好の周年事業と共に事業の幅を広げております。
パートナー企業である東急さんと連携させていただきまして、日越外交関係樹立40周年となる 2013年にトップチームによる国際親善試合からスタートさせていただいております。
日越外交関係樹立45周年、これが 2018 年になるのですが、こちらからはU-13世代の国際サッカー大会であるベトナム・日本国際ユースカップ U-13 を継続して開催をさせていただいております。ベトナムと日本両国のU-13世代の選手がサッカーを通じて切礎球磨し、国際交流を育んでいるという状況でございます。
2021年12月からはリーグクラブとしては初となる、ベトナムでのサッカースクールを開校いたしました。現在では1週間延べ人数で約200名を超える生徒が川崎フロンターレのコーチから日々指導を受け、汗を流しているという状況になっております。
また 2022年からはJICA さんと連携させていただいて、ベトナムの社会課題を解決する取り組みをスタートいたしました。これは川崎フロンターレが日本で行う健康増進プログラムの実施であるとか、サッカードリルの実践事業であるとか、またこちらのサッカードリルをベトナム語に翻訳させていただいてお配りするといったことも実施しております。
サッカー以外でも現地に住む方の健康面・教育面、ベトナムの社会課題、社会貢献にも取り組んでいるということでございます。
我々が持つサッカーに関するノウハウ、地域と連携した事業活動のノウハウを活かしてこれからもスポーツ、サッカーを通じてベトナムと日本をつなぐ役割を果たしていきたいと考えております。
日越外交関係樹立50周年の記念事業といたしましては、昨年ではございますが 2022 年 11月にトップチームのベトナム遠征と、ベトナムビンズオン FC との国際親善試合を行っております。また今年の12月には5回目となるベトナム・日本国際ユースカップ U-13 をベトナムビンズン省で開催する運びとなってございます。
新型コロナウイルスの影響によりしばらくこの大会も日本チームが参加できない状況でございましたが、今年はコロナウイルスも落ち着きましたので、3年ぶりに日本からのチームも参加するかたちでいま調整をしております。
さらに2023年は日・ASEAN 友好協力50周年ということで、タイ・マレーシアのチームにも参加いただきまして、今まで以上にパワーアップした大会になっております。
川崎フロンターレでは単にサッカーを教えるということではなく、スポーツを通じてまちづくりに参画することを考えております。多くの方のご協力をいたださながら、ベトナムの社会課題の解決やスポーツの振興、こういったことに少しでもお役に立ちたいと思っております。皆様のご協力のほど、引き続きよろしくお願い致したいと思います。
■日本プロサッカーリーグ 大矢丈之氏
(日本プロサッカーリーグ 大矢丈之氏)
みなさま、改めましてありがとうございます。Jリーグ海外事業部の大矢と申します。本日はこのような場をいただきまして、誠にありがとうございます。JICAの皆様とサッカー界のつながりは、日本代表を含めさまざまな活動を海外でするなかで、各地のJICA の事務所の皆様に非常にお世話になっておりました。
2015 年に日本サッカー協会(JFA)さんとリーグと、JICA の皆様と、3者の連携協定を結ばせていただきまして、その後 2021 年に女子サッカーの WEリーグも加わって連携協定を更新させていただいたという流れでございます。
我々としましてはアジア戦路を進めている中で、ASEAN の選手、こちらに在籍しておりましたチャナティップ選手ですとか、北海道コンサドーレ札幌のスパチョーク選手、彼らに次ぐような選手がJリーグで活躍することを目指しているわけですけれども、60 クラブが日本全国でさまざまな地域課題活動をしている中で、ASEAN をはじめとした開発途上国もさまざまな社会課題を抱えておられました。
何かJリーグクラブの事例が日本を出て、他の国の社会課題の解決につながることはできないか、ということをJICAの皆様とご相談させていただく中で、今回こういった事業がスタートしております。
我々としましては、ベトナムと川崎フロンターレさんにとどまらず、他のクラブ、他の国といった事業展開も考えたいですし、そういった活動を通して、フロンターレが川崎で、街で欠かせない存在になっているように、ベトナム、あるいはビンズオンでも欠かせないような存在になっていく、Jリーグがアジアの中で欠かせない存在になっていけるように、活動を展開・発展させていけたらと考えております。
■JICA青年海外協力隊事務局長 橘秀治氏
(JICA 橘氏)
皆さん、改めまして、JICA 責年海外協力隊事務局長の橘と申します。本日はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私の方からは、いま川崎フロンターレ様と共同して取り組んでいるベトナム事業について少し具体的にご紹介させていただきたいと思います。まず JICAは長年開発途上国の経済・社会の発展のためにその国の発展を支える人財の育成ですとか、道路などのインフラの整備、社会基盤の整備ということを長年実施してまいりました。
最近はスポーツの持つ力に非常に注目しておりまして、スポーツを通じた開発、あるいはスポーツそのものを普及するということに力を入れております。
例えば私が今担当しております青年海外協力隊事業ではサッカーをはじめ野球、柔道、剣道、水泳、いろんなスポーツの隊員を世界各国に派遣しているということがございます。
開発課題について、従来に比べて非常に複雑性が増しておりまして、JICAだけではいろんなことに対応できなくなっているということがございまして、さまざまなパートナーの皆さんと一緒になってその課題に取り組んでいく。我々は今キーワードとして「共創パートナー」と皆さんを呼ばせていただいておりますますけれども、まさにJリーグさん、川崎フロンターレさんはこの共創パートナーだと我々は思っておりまして、こういった事業に取り組ませていただいているということでございます。
なぜこの事業を開始することになったのかということを、少しご紹介させていただきたいと思いますけれども、私共はいろんな課題に新しい方法で取り組んでいかなければならないということで、JICA の中で新しいアイデアを募る「新規事業アイデアコンテスト」を数年前から始めておりました。
このアイデア募集の中で、我々の若手職員と、Jリーグさんがまさに 「SDGs 及び社会課題に挑むスクール事業の海外展開ーボールでつなぐ人、まち、信頼ー」というこういった事業のアイデアを提案してくれまして、これが2020年に採択され、2021年に調査を始めて、今に至っているというわけでございます。
皆さんご承知の通り、Jリーグさんはスクール事業のかたわら、先ほどお話のありました通り、教育・健康・防災等、地域の社会課題の解決に向けたホームタウン活動を広く実施されています。いわばこの事業は、そういったJリーグ様、あるいはJリーグの各団体の皆様の、地域に根差した課題活動のノウハウを活用させていただいて、一緒になって途上国で社会青献モデルを作っていくということを試みる事業でございます。
次に具体的に川崎フロンターレさんと何をしているかということをご紹介させていただきたいと思います。まず、Jリーグ様との共同事業の枠組みを利用しながら、川崎フロンターレ様とは、地域に根差した地域ホームタウン活動に定評がございましたので、皆さんもご承知の通り、フロンタウンがサッカースクールだけではなく、川崎市民の皆様にヨガですとか、ポールウォーキングといった、健康増進プログラムをご提供されています。こういった取り組みをベトナムのビンズン省において実施していくというものでございます。
この取り組みはまさにフロンタウンのような拠点をベトナムのビンズン省に作って、社会の課題解決に取り組んでいくということで、具体的には2つの柱があります。
ひとつめは健康増進プログラムというものでございます。ベトナムも非常に発展著しい国でございまして、いまや中心となっております。特にピンズン省では急速な発展がございまして、子どもの肥満ですとか、成人の運動不足というような、健康に関する問題が顕在化してきている、というような状況で、この健康増進プログラムとして、サッカー教室に加え、ポールウォーキングですとか、シェイプアップトレーニング等を、提供することでベトナム市民の健康意識の向上ですとか、あるいは健康状態そのものの改善に取り組んでいくということでございます。
これまでパイロット活動の中で、420名以上の方がこのプログラムにご参加いただきまして、参加いただいた方からは運動の頻度を高めていきたいとか、正しい運動の仕方を学びたいといった声が聞こえております。
また参加された方の半数以上が、今後有料でもこのプログラムを受けたい、ということを回答してくださっておりまして、我々としては手ごたえを感じているところでございます。
ふたつめの柱は、サッカードリル、算数のドリルでございます。これは川崎フロンターレさんが川崎市の小学6年生に向けて毎年作成されている算数のドリルの、いわばベトナム語版を作るということです。
ベトナムは反復ドリルなどの補助教材はそれほど普及しておりませんで、小学校の子どもたちもこういった算数ドリルはまだあまりやったことがないという子が多くいまして、そういった子にこういったサッカードリルを提供することで、より意欲的に勉強してもらうということを期待している取り組みです。
また皆さんもご承知の通りいま日本にはベトナムの方が非常に増えています。最近の数字では日本に滞在されるベトナム人の方は 47 万人いらっしゃるということでございまして、まさに日本にいらっしゃるベトナムの方にもこのドリルをご提供させていただいて、まさに日本にいらっしゃってもしっかり勉強していただけるようなことも、副次的な効果としては期待している取り組みでございます。
この健康プログラムと、算数ドリルの取り組みを通じて、私ども JICAは、川崎フロンターレさん、Jリーグさんと一緒になって、スポーツを起点に人々が集まり、年齢を問わず男女が集まりスポーツを楽しめる環境を整備し、その結果心身の健康推進と教育の質の向上に貢献してまいりたいと思います。
このパイロット事業は2021年に立ち上げ、2022年9月から現地調査から活動がスタートしています。
今年もまだ9月、12月に活動実施予定で、前述の「健康増進事業」(サッカースクールおよび老若男女向けの健康プログラム提供)、「川崎フロンターレ算数ドリル」を軸に展開していく予定です。
コンセプトとしては国内での地域貢献活動の「成功モデル」をアジアに展開していくかたちですが、現地で自立的に発展していくフェーズになれば、「海外で培った経験」を日本、川崎に還元していくこともできるのではないでしょうか。
「地域、社会に欠かせない存在になる」川崎フロンターレのビジョンをもとに、今後も活動を発展させていくことと思います。
【関連リンク】
・日越外交関係樹立50周年記念特設サイト
・独立行政法人国際協力機構(JICA)スポーツと開発
・川崎フロンターレウェブサイト 川崎フロンターレSDGs
・2022/4/3エントリ 川崎フロンターレが抗菌・防カビ等技術企業「染めQテクノロジィ」とSDGs協業に調印、6/18「かわさきSDGsランド」出展など活動推進
・2022/8/9エントリ 川崎市・川崎フロンターレがSDGs協定締結し会見、地域社会のインフラ目指し「かわさきこども食堂ネットワーク」をパートナーと支援
・2022/9/1エントリ 武蔵小杉で創業「コールドクター」が川崎フロンターレ・川崎市消防局と「救急車の適正利用」取り組み会見、小林悠選手からもメッセージ
・2023/6/9エントリ 川崎フロンターレの「かわさきこども食堂ネットワーク」支援にウエインズトヨタ神奈川が参画、営業所を寄贈品置き場に提供
2023年7月8日、日本・ベトナム外交関係樹立50周年を機会に駐日本ベトナム社会主義共和国参事官・政務担当副部長のグエン・ミン・ハン氏を迎えて、等々力陸上競技場において川崎フロンターレら4者による報道機関向けの事業説明会が行われました。
■事業説明会見に登壇したグエン・ミン・ハン氏ら4氏
今回の事業説明会見に登壇したのは、下記の4氏です。
駐日本ベトナム社会主義共和国 参事官・政務担当副部長 グエン・ミン・ハン氏(左から3番目)
JICA青年海外協力隊事務局 事務局長 橘秀治氏(同2番目)
公益財団法人日本プロサッカーリーグ 事業本部海外事業部 大矢丈之氏(同1番目)
株式会社川崎フロンターレ 事業本部管理部長 山田直弘氏(同4番目)
Jリーグでは、スローガン「Jリーグ百年構想~スポーツで、もっと、幸せな国へ。~」を掲げ、全国60のクラブが各地でスポーツ文化の振興や地域課題解決に取り組んでいます。
日本国内だけでなく世界にも目を向けて、サッカー人気が高い東南アジア地域を中心に、Jリーグが培ってきたノウハウを提供することで、各国の競技力向上、さらいはアジアのサッカー市場の成長を目指してアジア戦略を推進しています。
一方、JICAは開発途上国の発展に長く尽力し、人材育成やインフラ等の社会基盤整備に注力してきました。近年では人々の基礎適生活を支える「スポーツ」にも注目し、重要な開発支援分野として活動しています。
今回説明が行われた事業は両団体の強みとニーズを掛けあわせた共同事業です。
Jリーグが日本国内で推進している社会貢献・地域貢献の事業モデルが開発途上国にも展開可能か、調査およびパイロット(試験的)事業を実施することを目的としています。
共同事業の実施に当たっては、これまで健康増進や教育分野での地域課題解決において実績を積み上げ、高い評価を受けている川崎フロンターレが対象クラブとなりました。
川崎フロンターレが国内で実践してきたスクール事業を通じた社会貢献モデルをパイロット事業としてベトナムに導入し、ベトナムの社会課題解決に貢献するとともに、事業終了後に川崎フロンターレが自律的に活動を継続・発展させていくための基盤を確立することを企図しています。
事業実施期間は2024年3月までで、主に「健康増進事業」としてベトナムビンズオン省でのサッカースクール事業や老若男女を対象とした健康増進プログラムを提供し、またベトナム語版「川崎フロンターレ算数ドリル」を作成して同省での補助教材として展開します。
ベトナム語版のドリルはさらに日本国内在住のベトナム人で、日本語での勉強に課題を抱える児童にも提供することを予定しているということです。
■ベトナム語版 川崎フロンターレ算数ドリル表紙デザイン
©KAWASAKI FRONTALE
以下、登壇したグエン・ミン・ハン氏によるご挨拶、また川崎フロンターレら各氏による事業説明の会見のうち、質疑応答を除く全文を掲載いたします。
■駐日本ベトナム社会主義共和国参事官 グエン・ミン・ハン氏
(グエン・ミン・ハン氏)
みなさん、こんにちは。世界で圧倒的に人気なスポーツ、私もサッカーのファンです。だからこそ本日等々力上競技場に来ることができて大変嬉しいです。
川崎フロンターレは10年前にベトナムでの活動が始まり、国際親善試合からU-13 世代での国際サッカー大会であるユースカップ開催、リーグクラブ、またベトナムのビンズオン省でのサッカースクールを開校など、活躍を聞いてたいへん感動しております。
今年は1月に(日越)外交関係樹立50周年で、両国はさまざまな行事を行います。要人往来をはじめ、相互訪問を含め相互の協力計画の効果的な実施、政治・外交から国防・安全保障、貿易・投資、労働者教育、文化・医療・科学技術、観光協力、地方間の国民間交流などを強化します。
JICA では人々の基盤的な生活を支えるスポーツを重要な開発分野として事業を促進することや、川崎フロンターレのベトナムビンズオン省でのスポーツ実施にて、サッカースクールを事業展開し、さまざまなプログラムを提供するベトナムでの健康増進事業に貢献することはとても有意義です。50周年のためにそんなに準備をしてくれて、まことに感謝しております。
両国の関係 50周年の重要な節目に皆様のご貢献、役割をずっと記憶していると思います。
みなさま、ベトナム最大級のパートナーとしての日本としての関係の重要性を両国のリーダーが確認しました。その越日の広範な戦略的なパートナーシップの強化のために全力をコミットし、皆様と一緒に50周年記念のお祝いをしましょう。是非、一緒に協力してください。
■川崎フロンターレ 事業本部管理部長 山田直弘氏
(川崎フロンターレ 山田直弘氏)
みなさん、こんにちは。川崎フロンターレの山田でございます。本日は代表取締役社長の吉田に別件が入りまして、私が代理でご説明をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
まずグエン・ミン・ハン様、ご祝辞をいただきまして、ありがとうございました。ようこそ等々力へおこしくださいました。ありがとうございます。また、JICA の立花様、Jリーグの大矢様、ご来場ありがとうございます。
さきほどご紹介にありましたが、今年は日越外交関係樹立50周年の記念すべき年になります。川崎フロンターレもさまざまなベトナムでの活動を行う予定でございます。これまでのベトナムでの活動も含めてご紹介させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ベトナムでの活動は、日越友好の周年事業と共に事業の幅を広げております。
パートナー企業である東急さんと連携させていただきまして、日越外交関係樹立40周年となる 2013年にトップチームによる国際親善試合からスタートさせていただいております。
日越外交関係樹立45周年、これが 2018 年になるのですが、こちらからはU-13世代の国際サッカー大会であるベトナム・日本国際ユースカップ U-13 を継続して開催をさせていただいております。ベトナムと日本両国のU-13世代の選手がサッカーを通じて切礎球磨し、国際交流を育んでいるという状況でございます。
2021年12月からはリーグクラブとしては初となる、ベトナムでのサッカースクールを開校いたしました。現在では1週間延べ人数で約200名を超える生徒が川崎フロンターレのコーチから日々指導を受け、汗を流しているという状況になっております。
また 2022年からはJICA さんと連携させていただいて、ベトナムの社会課題を解決する取り組みをスタートいたしました。これは川崎フロンターレが日本で行う健康増進プログラムの実施であるとか、サッカードリルの実践事業であるとか、またこちらのサッカードリルをベトナム語に翻訳させていただいてお配りするといったことも実施しております。
サッカー以外でも現地に住む方の健康面・教育面、ベトナムの社会課題、社会貢献にも取り組んでいるということでございます。
我々が持つサッカーに関するノウハウ、地域と連携した事業活動のノウハウを活かしてこれからもスポーツ、サッカーを通じてベトナムと日本をつなぐ役割を果たしていきたいと考えております。
日越外交関係樹立50周年の記念事業といたしましては、昨年ではございますが 2022 年 11月にトップチームのベトナム遠征と、ベトナムビンズオン FC との国際親善試合を行っております。また今年の12月には5回目となるベトナム・日本国際ユースカップ U-13 をベトナムビンズン省で開催する運びとなってございます。
新型コロナウイルスの影響によりしばらくこの大会も日本チームが参加できない状況でございましたが、今年はコロナウイルスも落ち着きましたので、3年ぶりに日本からのチームも参加するかたちでいま調整をしております。
さらに2023年は日・ASEAN 友好協力50周年ということで、タイ・マレーシアのチームにも参加いただきまして、今まで以上にパワーアップした大会になっております。
川崎フロンターレでは単にサッカーを教えるということではなく、スポーツを通じてまちづくりに参画することを考えております。多くの方のご協力をいたださながら、ベトナムの社会課題の解決やスポーツの振興、こういったことに少しでもお役に立ちたいと思っております。皆様のご協力のほど、引き続きよろしくお願い致したいと思います。
■日本プロサッカーリーグ 大矢丈之氏
(日本プロサッカーリーグ 大矢丈之氏)
みなさま、改めましてありがとうございます。Jリーグ海外事業部の大矢と申します。本日はこのような場をいただきまして、誠にありがとうございます。JICAの皆様とサッカー界のつながりは、日本代表を含めさまざまな活動を海外でするなかで、各地のJICA の事務所の皆様に非常にお世話になっておりました。
2015 年に日本サッカー協会(JFA)さんとリーグと、JICA の皆様と、3者の連携協定を結ばせていただきまして、その後 2021 年に女子サッカーの WEリーグも加わって連携協定を更新させていただいたという流れでございます。
我々としましてはアジア戦路を進めている中で、ASEAN の選手、こちらに在籍しておりましたチャナティップ選手ですとか、北海道コンサドーレ札幌のスパチョーク選手、彼らに次ぐような選手がJリーグで活躍することを目指しているわけですけれども、60 クラブが日本全国でさまざまな地域課題活動をしている中で、ASEAN をはじめとした開発途上国もさまざまな社会課題を抱えておられました。
何かJリーグクラブの事例が日本を出て、他の国の社会課題の解決につながることはできないか、ということをJICAの皆様とご相談させていただく中で、今回こういった事業がスタートしております。
我々としましては、ベトナムと川崎フロンターレさんにとどまらず、他のクラブ、他の国といった事業展開も考えたいですし、そういった活動を通して、フロンターレが川崎で、街で欠かせない存在になっているように、ベトナム、あるいはビンズオンでも欠かせないような存在になっていく、Jリーグがアジアの中で欠かせない存在になっていけるように、活動を展開・発展させていけたらと考えております。
■JICA青年海外協力隊事務局長 橘秀治氏
(JICA 橘氏)
皆さん、改めまして、JICA 責年海外協力隊事務局長の橘と申します。本日はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
私の方からは、いま川崎フロンターレ様と共同して取り組んでいるベトナム事業について少し具体的にご紹介させていただきたいと思います。まず JICAは長年開発途上国の経済・社会の発展のためにその国の発展を支える人財の育成ですとか、道路などのインフラの整備、社会基盤の整備ということを長年実施してまいりました。
最近はスポーツの持つ力に非常に注目しておりまして、スポーツを通じた開発、あるいはスポーツそのものを普及するということに力を入れております。
例えば私が今担当しております青年海外協力隊事業ではサッカーをはじめ野球、柔道、剣道、水泳、いろんなスポーツの隊員を世界各国に派遣しているということがございます。
開発課題について、従来に比べて非常に複雑性が増しておりまして、JICAだけではいろんなことに対応できなくなっているということがございまして、さまざまなパートナーの皆さんと一緒になってその課題に取り組んでいく。我々は今キーワードとして「共創パートナー」と皆さんを呼ばせていただいておりますますけれども、まさにJリーグさん、川崎フロンターレさんはこの共創パートナーだと我々は思っておりまして、こういった事業に取り組ませていただいているということでございます。
なぜこの事業を開始することになったのかということを、少しご紹介させていただきたいと思いますけれども、私共はいろんな課題に新しい方法で取り組んでいかなければならないということで、JICA の中で新しいアイデアを募る「新規事業アイデアコンテスト」を数年前から始めておりました。
このアイデア募集の中で、我々の若手職員と、Jリーグさんがまさに 「SDGs 及び社会課題に挑むスクール事業の海外展開ーボールでつなぐ人、まち、信頼ー」というこういった事業のアイデアを提案してくれまして、これが2020年に採択され、2021年に調査を始めて、今に至っているというわけでございます。
皆さんご承知の通り、Jリーグさんはスクール事業のかたわら、先ほどお話のありました通り、教育・健康・防災等、地域の社会課題の解決に向けたホームタウン活動を広く実施されています。いわばこの事業は、そういったJリーグ様、あるいはJリーグの各団体の皆様の、地域に根差した課題活動のノウハウを活用させていただいて、一緒になって途上国で社会青献モデルを作っていくということを試みる事業でございます。
次に具体的に川崎フロンターレさんと何をしているかということをご紹介させていただきたいと思います。まず、Jリーグ様との共同事業の枠組みを利用しながら、川崎フロンターレ様とは、地域に根差した地域ホームタウン活動に定評がございましたので、皆さんもご承知の通り、フロンタウンがサッカースクールだけではなく、川崎市民の皆様にヨガですとか、ポールウォーキングといった、健康増進プログラムをご提供されています。こういった取り組みをベトナムのビンズン省において実施していくというものでございます。
この取り組みはまさにフロンタウンのような拠点をベトナムのビンズン省に作って、社会の課題解決に取り組んでいくということで、具体的には2つの柱があります。
ひとつめは健康増進プログラムというものでございます。ベトナムも非常に発展著しい国でございまして、いまや中心となっております。特にピンズン省では急速な発展がございまして、子どもの肥満ですとか、成人の運動不足というような、健康に関する問題が顕在化してきている、というような状況で、この健康増進プログラムとして、サッカー教室に加え、ポールウォーキングですとか、シェイプアップトレーニング等を、提供することでベトナム市民の健康意識の向上ですとか、あるいは健康状態そのものの改善に取り組んでいくということでございます。
これまでパイロット活動の中で、420名以上の方がこのプログラムにご参加いただきまして、参加いただいた方からは運動の頻度を高めていきたいとか、正しい運動の仕方を学びたいといった声が聞こえております。
また参加された方の半数以上が、今後有料でもこのプログラムを受けたい、ということを回答してくださっておりまして、我々としては手ごたえを感じているところでございます。
ふたつめの柱は、サッカードリル、算数のドリルでございます。これは川崎フロンターレさんが川崎市の小学6年生に向けて毎年作成されている算数のドリルの、いわばベトナム語版を作るということです。
ベトナムは反復ドリルなどの補助教材はそれほど普及しておりませんで、小学校の子どもたちもこういった算数ドリルはまだあまりやったことがないという子が多くいまして、そういった子にこういったサッカードリルを提供することで、より意欲的に勉強してもらうということを期待している取り組みです。
また皆さんもご承知の通りいま日本にはベトナムの方が非常に増えています。最近の数字では日本に滞在されるベトナム人の方は 47 万人いらっしゃるということでございまして、まさに日本にいらっしゃるベトナムの方にもこのドリルをご提供させていただいて、まさに日本にいらっしゃってもしっかり勉強していただけるようなことも、副次的な効果としては期待している取り組みでございます。
この健康プログラムと、算数ドリルの取り組みを通じて、私ども JICAは、川崎フロンターレさん、Jリーグさんと一緒になって、スポーツを起点に人々が集まり、年齢を問わず男女が集まりスポーツを楽しめる環境を整備し、その結果心身の健康推進と教育の質の向上に貢献してまいりたいと思います。
このパイロット事業は2021年に立ち上げ、2022年9月から現地調査から活動がスタートしています。
今年もまだ9月、12月に活動実施予定で、前述の「健康増進事業」(サッカースクールおよび老若男女向けの健康プログラム提供)、「川崎フロンターレ算数ドリル」を軸に展開していく予定です。
コンセプトとしては国内での地域貢献活動の「成功モデル」をアジアに展開していくかたちですが、現地で自立的に発展していくフェーズになれば、「海外で培った経験」を日本、川崎に還元していくこともできるのではないでしょうか。
「地域、社会に欠かせない存在になる」川崎フロンターレのビジョンをもとに、今後も活動を発展させていくことと思います。
【関連リンク】
・日越外交関係樹立50周年記念特設サイト
・独立行政法人国際協力機構(JICA)スポーツと開発
・川崎フロンターレウェブサイト 川崎フロンターレSDGs
・2022/4/3エントリ 川崎フロンターレが抗菌・防カビ等技術企業「染めQテクノロジィ」とSDGs協業に調印、6/18「かわさきSDGsランド」出展など活動推進
・2022/8/9エントリ 川崎市・川崎フロンターレがSDGs協定締結し会見、地域社会のインフラ目指し「かわさきこども食堂ネットワーク」をパートナーと支援
・2022/9/1エントリ 武蔵小杉で創業「コールドクター」が川崎フロンターレ・川崎市消防局と「救急車の適正利用」取り組み会見、小林悠選手からもメッセージ
・2023/6/9エントリ 川崎フロンターレの「かわさきこども食堂ネットワーク」支援にウエインズトヨタ神奈川が参画、営業所を寄贈品置き場に提供