一部メディア等でも報道されていたように、2011年10月3日に、川崎
市と日本医科大学が、同大学用地における小学校設置に向けた
協定を締結しています。
これは、5月にリリースされた「基本合意」に続くもので、より具体的な
情報があきらかになっています。
■川崎市報道発表資料 小杉駅周辺地区における小学校の新設
に向けた協定の締結について(PDF)
http://www.city.kawasaki.jp/88/88kikaku/home/
tekiseikibo2/siryou/kosugi2.pdf
■協定の主な内容
○学校予定地:中原区小杉町二丁目295 番1 他
※現・日本医科大学新丸子校舎所在地の一部
○面積:約10,010 ㎡(歩道状空地を整備)
○契約形態:事業用定期借地権
(2015年4月1日~2048年3月31日の33 年間)
○地代:2014年度に両者が実施する鑑定評価に基づき協議
○開校予定:2017 年度
■今後の予定
2012年度 基本構想
2013~2014年度 設計等
2015~2016年度 建設工事
2017年4月 小学校開校
■小学校の新設予定地マップ
学校予定地については、これまで一部媒体で新丸子校舎の
グラウンド用地であるかのような記事もあったのですが、現在の
「新丸子校舎」所在地の一部であることが確認されました。
川崎市の報道発表資料にはありませんが、別途確認したところに
よると、小学校新設用地として提供されるのは、敷地の南側と
されています。
地図ソフトで算出しますと、新丸子校舎の用地全体が概算13,800㎡
であるのに対して、小学校新設に割り当てられるのは約10,010㎡と
なっています。
上記のマップで示したように、小学校新設に用地を提供したのちも、
約3,790㎡ほどのスペースが残されます。
これはまた、別途用地活用されることになるのでしょう。
また、周辺は歩道状空地が整備されるとのことですので、より安全な
通学路になれば良いと思います。
報道発表資料本文にはこれまでの検討経過も簡単に記載されて
いますが、それによると2008年9月に「教育環境整備推進会議」
が発足したのがスタートとされています。
小学校が開校するのが2017年4月ですから、検討開始から開校
まで8年半を要することになります。学区の再編なども含め、やはり
小学校新設というのはかなり重たい話になりますね。
武蔵小杉再開発に当たっては、川崎市は「従来のキャパシティで
問題ない」という立場に立って開発を推進してきました(市議会で
質問を受けて教育長がその旨答弁をした記録があります)。
しかしながら、いざ小学校がパンクする事態に至っても、すぐに
小学校を新設することは不可能なわけです。
完全に推計通りにいかないのは当然としても、やはり見通しが
甘かったと言わざるを得ないところでしょう。
■33年間の定期借地権が設定される日本医科大学新丸子校舎
さて、今回の基本協定では、小学校の新設用地は売買ではなく、
33年間の定期借地権による賃借となっています。
これは、現在の急激な人口増が永続的に続くものではなく、いずれ
川崎市も人口減の時代を迎えるであろうことを踏まえた結果です。
とりあえず33年間は小学校として用地活用し、その後については、
2048年時点での社会情勢を踏まえてあらためて日本医科大学と
協議を行うこととなっています。
2005年度国勢調査をベースにした2007年の川崎市発表によれば、
中原区の将来推計人口は2035年の24万2,600人がピークとされて
いました。その推計が正しければ、それ以降は中原区の人口が
減少に転じることになります。
ただ、2007/6/8エントリでも取り上げたように、この4年前、2003年の
川崎市発表では、中原区の人口ピークは2015年とされていました。
わずか4年間で20年もピークが延びたことになります。
現在、すでに中原区の人口は23万人を突破しており、2010年度
国勢調査をベースにした将来推計人口では、また多少ピークが
延びるかもしれませんね。
30年以上先の状況を正確に推測するのはなかなか難しいです
から、とりあえず定期借地権を設定して将来において判断する、
というのは合理的な考え方ではないでしょうか。
■近接地で開発が行われる(仮称)小杉町2丁目開発計画
なお、2011/10/22エントリで詳細情報を取り上げた、JX日鉱日石エネ
ルギー社宅跡地の「(仮称)小杉町2丁目開発計画」によるツイン
タワーは、未定ではありますが、位置関係からするとこの新設小学
校の学区になりそうです。
54階建て・180mのツインタワーマンションは2016年度の完成を予定
しており、その翌年に小学校が開校することになります。
ツインタワーの開発計画は、
○川崎市にコンベンションセンターの整備意向があったこと
(スペースを提供する事業者側に高さ制限・容積率の緩和などの
メリットを提供する必要が発生)
○学区内に小学校新設の目途がついたこと
この2点が直接的・間接的に関連しているのではないでしょうか。
小学校に限りませんけれども、やはり開発に並行した都市基盤の
整備が必須となりますね。
【関連リンク】
2007/6/8エントリ 武蔵小杉の将来推計人口
2008/12/19エントリ 武蔵小杉再開発地区の小学校がキャパオーバーに
2009/4/29エントリ 上丸子小・下沼部小の仮設校舎、間に合わず
2010/6/2エントリ 日本医科大学用地に川崎市立小学校を新設
2010/9/15エントリ 今井小学校の新校舎建設工事着工
2010/11/5エントリ 西中原中学校の大規模改修工事
2011/5/4エントリ 西中原中学校の新校舎完成
2011/5/23エントリ 今井小学校の新校舎建設中
2011/9/1エントリ 今井小学校の新校舎供用開始
2011/10/22エントリ (仮称)小杉町2丁目開発計画のフロアマップと
イメージ図