【Reporter:はつしも】
川崎フロンターレ・富士通が、どなたでも等々力陸上競技場まで来場できるようにすることを目的とした「街歩きバリアフリーマップ」を共同で作成し、配布 しています。
このマップでは、武蔵小杉駅・武蔵中原駅・新丸子駅から等々力陸上競技場までの段差や歩道の状況などをバリアフリーの観点から調査し、現地の状況がわかるように細かく情報が盛り込まれています。
今回は両社と武蔵小杉住民の方のご協力のもと、3月12日のホームゲーム「川崎フロンターレvs名古屋グランパス戦」において、
実際に車いすの方がこのマップを使って武蔵小杉駅から等々力陸上競技場まで観戦に訪れた模様を取材 させていただきました。
■川崎フロンターレ×富士通による「街歩きバリアフリーマップ」
©KAWASAKI FRONTALE
©KAWASAKI FRONTALE
まずこちらが、川崎フロンターレ×富士通による「街歩きバリアフリーマップ」です。
周辺各駅から
等々力陸上競技場までのアクセスルートに加えて、等々力陸上競技場内のバリアフリー情報も掲載 されています。
等々力陸上競技場内のマップは従来から情報がありましたが、今回特筆すべき点は、
各駅から等々力陸上競技場までの徒歩ルートの、詳細にわたるリアルな情報 が盛り込まれていることです。
また
マップ上に掲載されたQRコードからは、車いす目線での映像を確認できる動画にアクセス することも可能です。
■武蔵小杉駅から等々力陸上競技場Bゲートまでの動画
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■新丸子駅から等々力陸上競技場Bゲートまでの動画
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■武蔵中原駅から等々力陸上競技場Bゲートまでの動画
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■武蔵小杉駅発直行バス降車場から等々力陸上競技場Bゲートまでの動画
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■等々力陸上競技場前Bゲートから観客席までの動画
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上記の
マップや動画は、川崎フロンターレの公式ウェブサイトにも掲載 されていますので、ご参照ください。
■実際にマップを参照しつつ、JR武蔵小杉駅からスタート
さて、今回は
武蔵小杉在住の車いすの方が実際にマップを参照しながら、武蔵小杉駅北口から等々力陸上競技場まで観戦に向かうところを取材 させていただきました。
武蔵小杉駅北口からは直行バスも多く発着しており、ホームゲーム開催当日は多くの方が集まります。
前掲の動画では、
直行バスに乗って降車したところから等々力陸上競技場までの「車いす目線」での動画も収録 されていますが、今回は武蔵小杉駅から徒歩(車いす)で向かいます。
■小杉ビルディング前の段差
武蔵小杉駅北口ロータリーを出発すると、さっそく
小杉ビルディング前の歩道に大きめの凹凸 があります。
これまで普段、正直なところ気に留めたことが無かったのですが、車いすや、あるいは足元が不自由な高齢者の方などは想像以上の障害になることがあります。
「街歩きバリアフリーマップ」にも、「路面凹凸あり」として写真入りで掲載 されていました。
■武蔵小杉タワープレイス前
■日本医科大学武蔵小杉病院付近
「街歩きバリアフリーマップ」には、
比較的段差が少ないルート が記載されています。
今回はそれに沿って等々力陸上競技場で向かいました。
南武沿線道路から
武蔵小杉タワープレイス前を通って日本医科大学武蔵小杉病院・川崎市立小杉小学校前を通過 していきます。
このあたりは
再開発や建て替えによって歩道が広く整備され、車道を渡る境目の部分も段差が緩和されていますので、比較的スムーズに進む ことができました。
■「こすぎ公園」の多目的トイレを通過
■「こすぎ公園」の多目的トイレ
■多目的トイレのおむつ交換台とベビーシート
再開発によって新設された小杉小学校の北側には、
「こすぎ公園」の多目的トイレ があります。
こちらも
車いすで利用でき、おむつ交換台やベビーシートがあるトイレとしてマップに掲載 されていました。
このエリアも歩道がきちんと整備されていますので、通りやすい部分です。
■歩道がなくなる住宅街
ただ、
こすぎ公園を過ぎると住宅街に入り、歩道が無くなります。
幸いそれほど車の交通量が多い道路ではないのですが、
道路の白線上に電信柱がありますので、ここは車いすやベビーカーではどう頑張っても車道に出ざるを得ません。
「街歩きバリアフリーマップ」にも、
写真入りで「歩道なし」と情報が掲載 されていました。
■中原街道で歩道整備中のエリア
中原街道に出ると、西明寺手前の「カギ道」付近で道路工事中 でした。
ここは従来は歩道がほとんどなく危ない場所だったのですが、
現在は暫定的な歩行スペース が作られていました。
「街歩きバリアフリーマップ」でも工事中の写真が掲載され、「車・自転車に注意」と注意喚起 がありました。
中原街道の整備完了後はきちんとした歩道になる予定ですので、今後情報更新等もされると良さそうです。
■小杉神社前の信号
そして
等々力緑地に入る直前で、小杉神社前の信号があるのですが、この信号は青信号が極端に短くなっています。
青信号になって渡り始めても、一般の歩行者でも渡り切る前に点滅し始めるくらいの短さです。
これが
ベビーカーや車いすですと、より一層ハードルが高くなる でしょう。
「街歩きバリアフリーマップ」にも、
「青信号の時間が短い」と記載 されていました。
こうした事前情報がないと、少し時間が経過してから知らずに車いすで渡り始めると、すぐに赤信号になり立往生してしまうことにもなりかねませんので、重要なポイント ではないでしょうか。
■危険個所の坂道
またマップには、
黄色で「危険箇所」が表示 されています。
そのひとつが小杉神社前の信号を渡った先で、ここはゆるやかな傾斜 になっています。
車いすやベビーカーでの通行の際には、留意する必要があります。
■府中街道の危険箇所
また今回は通行していませんが、
小杉十字路の先の府中街道にも危険箇所 があります。
ここは
急に歩道がなくなっていて、なおかつ車の交通量も極めて多いために注意が必要 です。
マップには
「狭い道、側溝のふたに注意」 と写真と共に掲載されていました。
■狭く凹凸の多い府中街道の歩道
また
府中街道には、歩道があっても狭く、さらに凹凸が多い場所 があります。
こうした場所は車いすやベビーカーでは通行しづらいですので、あらかじめ回避しておきたいところです。
ただ、
初めてくる方など、通常のマップを見ただけでは現地がこういう状況にあるということはわかりません。
「Googleストリートビュー」で逐一辿っていくのも骨が折れますし、
「街歩きバリアフリーマップ」で簡便に確認できるのは良い と思いました。
■無事に等々力陸上競技場に到着
このようなわけで、
無事に等々力陸上競技場まで到着 することができました。
お話を伺うと、
「マップであらかじめ状況が分かるのはありがたいです。おかげさまで安全に等々力陸上競技場まで到着することができました」
と笑顔を見せてくださいました。
ここから
等々力陸上競技場内の車いす席までのルートについても、マップが役立ちます。
さて、今回は
川崎フロンターレで本プロジェクトを担当される事業推進部の三浦さん にお話を伺いました。
三浦さんは本サイトでも昨年取材させていただいた、
発達障がい児向けのサッカー体験を推進する「えがお共創プロジェクト」も担当 されています。
<川崎フロンターレ 三浦さん取材>
--「街歩きバリアフリーマップ」を富士通さんと共同で作成されたきっかけは。
発達障がい児に向けたサッカー教室や観戦を推進する「えがお共創プロジェクト」で富士通さんとご縁がありました。両社とも、ユニバーサルな「共生社会」の実現に向けて、当然サッカー観戦もどなたでもできるようにしたいとの一致した思いがありました。
実際に観戦にいらしている車いすやベビーカーの方は、多くは車で来場されていました。車が無い方は来られないのだろうか、という問題意識にいたり、等々力陸上競技場までの道に対して困難がある方向けにマップを提供したい、ということで川崎フロンターレと富士通さんで協力して動画付きのマップを作成することになりました。
クラブとして通常「推奨ルート」というのは出しにくいのですが、今回は「バリアフリー観点」での情報提供、ガイドという位置づけになっています。
--マップはどのように活用していただきたいですか。
一般にGoogleマップなどで最短ルートで来る方も多いと思いますが、実際にどういう道なのかは来てみないとわかりません。事前にマップで把握してもらうと良いと思います。
また「えがお共創プロジェクト」で発達障がいの子どもたちをスタジアムに迎えるにあたって、事前にどういう場所なのかわかっているとスムーズに来やすいという特性もあります。なるべく不安感無く、来ていただきたいと思います。
このマップは、車いすやベビーカー、高齢者の方などに限らず、あらゆる立場の方、特に初めて等々力陸上競技場まで来る方をサポートするもので、ホームページの開催情報にも掲載しています。
--作成にあたって、子どもたちの協力も得たということですが。
今回は川崎フロンターレの中原のスクール生と一緒に、実際にマップを使って歩いてみました。今まではあまり意識せず適当に来ていたものが、マップで示されることによってきちんと意識ができたようです。また、車いすに実際に乗ってみて、車いす目線も実感できました。今後、交通ルールを順守するための啓発効果としても良かったと思います。
--マップはどこで配布していますか。
武蔵小杉駅北口のオフィシャルグッズショップ「アズーロ・ネロ」のほか、中原区内の全小学校、また川崎フロンターレのホームページや事務所で配布しています。また、今後は各駅にも設置できればと考えています。ぜひご利用ください。
--歩道の状況や、等々力陸上競技場の改修など環境変化もあると思いますが、今後の取り組みはいかがでしょうか。
勿論今回で終わりということではなく、クラブとしても継続的に取り組みたいと思っています。等々力だけでなくクラブの各施設もありますし、さらに長い目でみると等々力陸上競技場の全面改修も計画されています。
スタジアムの収容が増えるということはインフラの整備も必要です。来場はできたけれども帰れない、車でないと来られないということではいけないですし、一つの課題として認識しています。川崎市など関係各所とも連携しながら取り組んでまいりたいと思います。
今回の取材は
富士通企業スポーツ推進室で本プロジェクトを担当される田中さんにもご協力 をいただき、基本的には上記の川崎フロンターレ三浦さんと共通する取り組みのコンセプトを伺いました。
やはり両社で一致した思いがあって、かたちになったものと思います。
川崎フロンターレでは、この「街歩きバリアフリーマップ」の取り組みをJリーグの社会連携プロジェクト「2022シャレン!アウォーズ」にエントリー しています。
「シャレン!」とは、Jリーグがより豊かな社会を共創していくための取り組みで、「社会連携」を略した言葉です。
3者以上の協力により、幅広い社会テーマに取り組むものとしており、一般からのアイデアもフリーに募集しています。
「2022シャレン!アウォーズ」では、全国58クラブの社会連携の取り組みの中で優れたものが表彰 されます。
川崎フロンターレが継続している
発達障がい児向けのサッカー体験「えがお共創プロジェクト」は社会的にも高い評価を受け、2020年5月に「2020Jリーグシャレン!アウォーズ」の「Jリーグチェアマン特別賞」を受賞 していました。
■「2022シャレン!アウォーズ」川崎フロンターレへ投票用のツイート
「2022シャレン!アウォーズ」では、各クラブの取り組みに対して、3月15日(火)までのtwitterのリツイート数と審査によって表彰が決定 されます。
川崎フロンターレには上記の「シャレン!」公式twitterの投稿をリツイートすることで投票 ができますので、この取り組みがお心に沿う方は、投票してみてはいかがでしょうか。
川崎フロンターレでは今季より「SDGs」の推進を掲げており、
「街歩きバリアフリーマップ」はSDGsの17のゴールのうち「人や国の不平等をなくそう」「住み続けられるまちづくりを」に資するもの と位置づけられています。
車いすやベビーカーでも住みやすいまち、通行しやすいまちは誰にとってもハッピーなものであるはずで、サッカーを通じて貢献する取り組みには本サイトとしても共感するところです。
【関連リンク】
・
川崎フロンターレ 川崎フロンターレ×富士通株式会社「街歩きバリアフリーマップ」作成のお知らせ
・
2022シャレン!アウォーズ ウェブサイト
(えがお共創プロジェクト関連)
・シャレン!Jリーグ社会連携ウェブサイト 2020Jリーグシャレン!アウォーズ・Jリーグチェアマン特別賞『発達障がい児向けサッカー×ユニバーサルツーリズム/川崎フロンターレ』活動レポート
・川崎フロンターレ 「発達障がい児向けサッカー×ユニバーサルツーリズム」の取り組み 2020Jリーグシャレン!アウォーズ「Jリーグチェアマン特別賞」受賞のお知らせ
・2020/6/18エントリ Jリーグ社会連携で表彰、川崎フロンターレの「発達障がい児向けサッカー×ユニバーサルツーリズム」番外編トークイベント開催レポート
・
2020/11/22エントリ 川崎フロンターレが11/21大分戦で開催、「発達障がい児向け親子サッカー教室&パブリックビューイング」密着取材レポート
・
2021/11/21エントリ 川崎フロンターレ・川崎市・JTB・ANA・富士通らが「2021えがお共創プロジェクト」開催、等々力陸上競技場で発達障がい児向けサッカー教室やパブリックビューイング実施