2009年6月に、
川崎市議会第2回定例会が開催されました。その
最終日となる6月30日の一般質問において、
武蔵小杉駅南口地区
西街区第一種市街地再開発事業で整備される新中原図書館に関
する答弁がありましたので、ご紹介します。
公明党の志村勝議員の一般質問に対して、川崎市教育長および
阿部市長が答弁を行ったものです。
■武蔵小杉駅南口地区西街区(小杉駅南部地区A地区)
なお、答弁は分量が長くなっていますので、引用終了後に
要約を
しております。読むのが面倒な方は、引用を飛ばしてお読みいただ
いても本エントリの内容はご理解いただけるようになっております。
---以下、答弁を引用---
◆志村議員
読書活動の拠点となる中央図書館的な新中原図書館の整備につ
いて伺いたいと思います。平成2年、
中央図書館整備計画基本計画
の報告書が出されまして、平成4年には
仮称総合文化施設計画、
これはかつての
中央図書館を含めた文化施設を津田山に進めて
いくような計画があったわけであります。
平成8年には2010年の
2010プランの第2次中期計画が凍結し、
平成10年には、
中期計画のローリングに際して実施された事業評
価で、中央図書館については機能、規模、設置場所、整備手法など
について再検討を行うという結論が出ました。平成10年10月に図書
館協議会から中央図書館の早期実現についてという意見の具申が
あったわけでございますが、平成11年、2010年の
2010プランの第
3次中期計画に
中央図書館の整備事業として位置づけられ、ずっと
来まして、平成14年、その間にはいろいろ小杉駅南口の再開発の
問題等もございましたが、そこに置くような形。
阿部市長さんが誕生されて、平成14年3月、武蔵小杉の予定地に
対するいろんな新たな方向が出てまいりました。9月の行財政改革
プランに基づいて小杉駅周辺地区の再開発事業の見直しが行われ、
中央図書館の整備についても抜本的な見直しが行われて、中止と
いう形になりました。
11月、図書館協議会からさらに、ぜひ中央図書館建設の見直しの
新たな取り組みをお願いしたいと、このような要望が出てきたわけで
ございまして、平成15年には政調会議でもって、
小杉駅南口の西街
区における保留床の取得面積については、民間主導による事業を
推進する必要と逼迫した財政状況を勘案し、行財政改革プランを踏
まえ、財政面から検討を加えた結果、
公共公益施設として中原図書
館を中心に5,000㎡とするものとしたと、
中原図書館に中央図書館的
機能を持たせることも今後検討すると、このようになって今日ある
わけでございます。
この辺の長い経過の中で、この図書館のことについて、教育委員会
は今日までさまざまな協議、そして取り組みに対する視察等もやって
いただいているわけでございまして、話に漏れ聞きますと、前にも質問
させていただきましたが、小杉の再開発ビルのツーフロアに中央図書
館的な川崎市の総合図書館といいましょうか、これを考えて具体的に
なってきているわけでございます。この辺をお聞かせいただきたいと
思います。
●教育長
新しくできます新中原図書館についての御質問でございますが、先
ほど御質問の中にもありましたように、
再開発ビルのツーフロアを利用
して、今、計画を進めているところでございます。多少具体的に申し
上げますと、まず、
敷地面積につきましては、今御指摘にありました
ように4,000㎡以上から5,000㎡までの間で面積を確保してまいりた
いと考えております。
ほかの図書館につきましては
1,000㎡弱から2,500㎡でございます
ので、そういう意味で言いますと、新しくできます中原図書館は、その
図書館に比べればかなり広い面積を確保することができるということ
でございます。また、特徴といたしましては、まず、立地条件が非常
にいいということでございまして、不動産の広告で言えば、
武蔵小杉
駅ゼロ分の立地と言えるような絶好の立地にあるということでござい
ます。
また、新しく
ITを全面的に活用した図書館にしてまいりたいと考えて
おりまして、
自動書庫の導入等を進めまして、効率化を進め、自動
書庫を導入することによりまして、
自動貸し出し機の導入もすること
ができますので、貸し出し時間の短縮も図られるというようなことに
なっております。
そして、コンピューターシステムや物流管理等々について、物流管
理を他の図書館も含めて一元的に行うことも考えておりますので、
そういう意味におきましては、
中央図書館的な機能が発揮される図
書館になるのではないかと考えております。それから、駅ゼロ分の
立地にありますので、従来と違ってビジネスマンが通勤の帰りにも
気軽に立ち寄れる図書館にしていきたいと考えておりますので、
開館時間についてもほかの図書館よりは延長して、気軽に通勤帰
りに立ち寄れるビジネス支援を兼ねた図書館にしてまいりたいと
考えております。以上でございます。
◆志村議員
教育長、実はつい先日、私は
埼玉県川口市の駅前にある中央図書
館に行ってまいりました。非常にすばらしい図書館でありまして、
スペース的には、川崎の予定しているところはツーフロアですが、
川口は
3フロアになっていまして、その3層の一番上の部分につい
てはまた別なもので使っているんだけれども、図書館と一体的な
整合性を持っているようなものになっておりました。
今後のことも含めてぜひこれは参考にすべきだなということを感じ
て、いろんなことを自分なりに調べて帰ってきたわけでございます。
この川口の図書館は、具体的に今回の小杉のスペースとちょうど
相マッチするような状況の中で、機能的にも、また利用していく中で、
ちょうど日曜日でございましたので、子どもたちもいっぱい来ていま
したし、大人の方たちもたくさん来ている。さらに、川崎の図書館の
中にも、ちょうど今お話があったように、いろんな新しい図書館の
自動貸し出しシステムとかのお話が出ているわけでございます。
川口のように、
本当にここまで便利に図書館の機能は今進んでい
るんだなということを感じて帰ってきたんですが、川崎が今取り組ん
でいこうとしている
図書館の機能の面でもう少し具体的にお聞かせ
いただけるとありがたいと思います。
●教育長
新中原図書館の具体的な機能についての御質問でございますが、
私も、今、先生からお話のありました川口市立中央図書館には
訪ねて、やはり今度新しくできる新中原図書館の参考になる図書
館システムだなということを確認して帰ってまいりました。
よく
中央図書館といいますと、従来はかなり大きな面積を有して、蔵
書を非常に多くして市民の利用に供するというような図書館のイメー
ジがございますが、最近はIT機能等々を活用いたしますし、それか
ら、
同じ敷地面積、保有面積でありましても、先ほども申し上げまし
た自動書庫等々を導入いたしますと、閲覧のスペース等も十分に
確保できるというようなことでございます。したがいまして、そういう
機能を発揮して、先ほど申し上げました自動貸し出し機等々で利便
性の高い図書館にしていくということと、もう一つは、最近の図書館
は単に本を読む、借りるということだけではなくて、
ゆったりとした時
間を図書館で過ごすというようなことも非常に重要な機能であると
考えておりますし、それから、
親がお子さんを連れて一緒に読書を
楽しむというようなことにも十分配慮をしていかなければいけないと
考えております。
そういう意味では、図書館内の動線についても十分考えて、
親子の
読み聞かせができるような空間も確保してまいりたいと考えておりま
す。
全体としては、先ほども申し上げましたように、ほかの図書館より
も面積を確保できるということもありますし、
IT機能を十分活用すれ
ば、中央図書館的な機能を発揮できるような図書館になるのでは
ないかと考えております。以上でございます。
◆志村議員
セルフチェックといいますか、
自動貸し出し返却装置ですとか、さら
には
自動貸し出しシステムですとか、
ICタグといった中で、ここまで
と思うぐらい、私自身が知らない言葉だらけの一番新しい先端の
図書館の機能というものをかいま見たわけでありますが、自動的な
書庫もすべて中まで見せていただきました。
だから、
1万㎡なんて言っていたような中央図書館的なものという
イメージから、今の図書館のあり方、また川崎市の中央図書館的な
機能を備えた図書館というイメージが、私自身は相当変わった思い
なんです。そんな状況で、今回、川口のを見てまいりました。
そして、いよいよ新しい小杉の再開発が本当に目の当たりに、あと
何年かで具体的な計画が進んでいくわけでございます。平成20年
度に基本計画、平成21年度には実施設計がもう3,840万円で日本
設計さんが進んでいるようでございますが、平成23年度には着工、
平成24年度には竣工、開館という方向になっていくわけでございま
す。この小杉の西街区、東電の地下化で変電施設が中に入るわけ
でございまして、当初はちょっとおくれてしまうのかななんて心配し
ておりましたが、もうすぐ川崎市民待望のすばらしい図書館がスタ
ートする準備ができていくわけでございます。
そこで、ちょっと市長に伺いたいと思います。
かつての中央図書館
的な機能ということで、スペースの問題等でさんざん、市長さんが
市長さんとして誕生してきたころからのさまざまな経緯もあったと
思うんですが、
中央図書館的機能を備えた中原図書館という形で
今教育委員会のほうでも説明をしているような状況で、私たちも
紛
らわしいなという気がしているわけでございます。
今は1万㎡などという広い広さは要らない。本当に市民の皆さんが
このような形で非常に使い勝手がいい、かといって広いだけじゃ
ないさまざまなサービスが、また必要な本を見ることができる、借
りることができる。子どもたちも、おじいちゃん、おばあちゃんまで、
そういった意味では利用が図れるということになってくる新たな時代
状況の中での新しい図書館の方向が見えてきたときに、今のいろ
いろな事前のやりとりの中でも、各区の図書館、地区館、そして
この中央図書館的な中原図書館となっているわけでございますが、
もう中央図書館ということで、ある面ではきちんと決めてもいいん
じゃないかな、こんな気もするわけでございますが、市長の率直な
御見解を聞かせていただきたいと思います。
●阿部市長
新中原図書館についてのお尋ねでございますが、新中原図書館に
つきましては、
従来の広いスペースに大量の蔵書を抱えてサービス
を行う形の図書館ではなくて、交通至便な立地環境や近年のITの
飛躍的発展を十分に生かして、子どもからお年寄りまでのあらゆる
世代の利用者が快適に利用でき、また、ビジネスマンが会社帰りに
立ち寄りながら情報収集に活用できる図書館として、
効率的で利便
性の高い図書館にしていきたいと考えております。新中原図書館は
他の市立図書館に比べ面積も広く、本市の中央部に位置しており、
また、
ITを活用したサービスや市立図書館全体の物流管理を行う
ことなども想定しておりますので、読書のまち・かわさきの中心的
な施設として、
区の図書館であると同時に中央図書館的な機能を
あわせ持つ図書館として整備してまいりたいと存じます。以上で
ございます。
◆志村議員
「いつでも」「ささえる」「にぎわう」「どこからでも」「むすびあう」「はや
く・ていねい」、新しい図書館のコンセプトの読書のまちに非常にふさ
わしい拠点としてぜひ進めていくという中で、教育委員会の担当の
窓口の方も、まだまだ過去の中央図書館構想の、さまざまな学者の
方々も含めたやりとりの中で経過したことがあって、中央図書館的
とか、この図書館に対する、いいんじゃないのというぐらい、これは
もう川崎らしい本当にどこにも誇れるような利用勝手のいいすばらし
い図書館になるということからいって、現場の職員の方がどこかに
引っかかっている部分がありまして、
中央図書館的の「的」というの
は取ってもいいんじゃないかと思うんだけれども、もう一回この辺の
市長の見解を聞かせてください。
●阿部市長
新中原図書館についてのお尋ねでございますけれども、中央図書
館という名前、またコンセプトで整備した場合と、中原図書館に中央
図書館的機能を持たせるということについてのイメージ、印象は違い
まして、
あくまでも中原図書館が機能アップしたというぐあいに私ども
は考えているところでございます。以上でございます。
◆志村議員
これ以上やってもしようがないんですけれども、ただ、中央図書館と
いうものがイメージ的には大きなもので、内容的にも伴ったものとい
うイメージはある面ではぬぐい去ってもいいのかなと。本当の意味で
川崎らしい川崎の中央図書館はこれなんだというぐらい、さらに地区
館との、さらにはまたいろんな市民の皆さんの利用勝手を図れるよう
な、内容をよくしていくようなことでよろしいんじゃないかなということを
申し述べておきたいと思います。
---以上、引用おわり---
上記の答弁内容を読み込むと、新中原図書館をどのようなかたちで
整備するのか、その全体的な考え方がわかります。答弁内容を要約
しますと、以下のようになります。
■一般質問の要約
・川崎市中央図書館構想は1990年(平成2年)に基本計画が作られ
たが、建設地が津田山→武蔵小杉と変遷し、その後2002年(平成
14年)に中央図書館としての構想は廃止。武蔵小杉駅南口地区西
街区に新中原図書館として整備を行うこととなった
・西街区で川崎市が取得する保留床は4,000~5,000㎡。他の図書
館が1,000~2,500㎡であることから相対的に大規模な図書館と
なる
・駅徒歩0分の立地を活かし、ビジネスマンが利用できる図書館と
するべく開館時間を他の図書館よりも延長する
・自動書庫・自動貸し出し機の導入により貸し出し時間を短縮
・コンピューターシステム、物流の管理を他の図書館も含めて一元
的に行い、中央図書館的な機能を発揮
・従来型の「中央図書館」は大規模面積に大量の蔵書というスタイ
ルであったが、自動書庫のようなITの活用により省スペースで十分
な所蔵ができ、閲覧スペースや読み聞かせスペースなども確保し
ていきたい
・上記をもって「中央図書館的」な機能を持つ図書館として整備を
行うが、川崎市の見解としては中央図書館ではない
(志村議員から「中央図書館」と明確に位置づけるべきでは?と
いう質問を受けたもの)
大体こんなところですが、個人的に注目したのは
開館時間の延長!
ですね。現在の中原図書館は
平日19:00までとなっていますから、
これが
少なくとも20:00あたりまでは延長されることになるものと
思います。
仕事帰りのサラリーマンでも利用できるような利便性を追求する
ものですが、駅隣接ということも踏まえると、これはかなり便利に
なるように思います。
その他、この新中原図書館整備の経緯も見ると、確かに
図書館の
ありかたというのも大分変わったのかな、という気がします。
現在ではICタグや自動書架の設置、図書館間のネットワーク化、
連携が進んでいますので、
以前謳われたような「大中央図書館」
のような大艦巨砲主義は効率的とはいえなくなってきている現状が
あります。
ITの活用により省スペースでスマートに、という流れは、財政や
人的なリソースの制約も考えると必然といえるでしょう。特に市域が
細長く、
「市民の誰もが集まる中心地」が存在しない川崎市において
は、
ある一箇所に巨艦を置くよりもIT等により各図書館の連携を強化
する方向性が正しいように思います。
とはいえ、新中原図書館は既存の図書館に比べ大きなスペースを
有するものにはなっており、規模面でもそれなりのものです。2012
年度(平成24年度)の完成まではまだ3年かかりますが、この武蔵
小杉再開発事業の目玉のひとつとして期待が高まりますね。
なお、答弁中に出てくる
川口市の中央図書館とは、川口駅前の再開
発ビル
「キュポ・ラ」の5~6階にあり、7階にはワークスタジオ・視聴覚
スタジオ・視聴覚教材の貸し出し等を行う
「メディアセブン」が入って
いるもので、中央図書館とは一体の施設のようになっています。
下層階は商業施設となっており、丁度武蔵小杉駅南口地区西街区
の再開発ビルと立地・構成が似通っていますので、モデルケースと
して志村議員も川崎市教育長も視察をしているものと思います。
■エムズタウン 川口キュポ・ラ
http://www.maruetsu-kaihatsu.co.jp/mstown/p_kawaguchi.htm
■メディアセブン 公式ウェブサイト
http://www.mediaseven.jp/open/common/link.jsf?act=toppage
しかし、キュポ・ラを運営するエムズタウン(株式会社マルエツ開発)
のサイトを見ると、ビル内に
文教堂が入っていますが、
図書館と本屋
が同じビル、というのもありなんですね。
図書館は上層階にあって、
閲覧室から駅前広場を一望できるようで、
窓際の席が気持ちよさそうです。
乳幼児スペースはガラスで囲われ、
授乳室も完備、児童書担当職員への相談もできるようになっています。
単に蔵書数ということだけでなく、機能面でかなり充実した図書館の
ようですが、このあたりを視察されたのであれば、是非新中原図書館
にも反映していってほしいところです。
個人的な希望になりますが、
新中原図書館の5階でも多少は市街
地を見渡せる視界が広がると思いますので、
眺めの良い閲覧室が
できるとうれしいです。・・・いや、もちろん眺めじゃなくて本を読むのが
主眼ですけれど。
これまでの武蔵小杉再開発では高層ビルは多数建ちながらも、
「市
民の誰もが入れる眺めの良い場所」というものはないものですから、
そういう場所がひとつあると良いように思います。
なお、一般質問中
「2011年度(平成23年度)着工、2012年度(平成
24年度)竣工・開館」というくだりがありますが、これは志村議員の
言い間違いか勘違い、もしくは再開発ビル自体の形が出来上がった
のちの新中原図書館の開館準備期間を指しているものと思います。
2012年度の竣工は現在の予定通りですが、1年前の着工で間に合
うわけがありませんね。再開発ビルについては、
変電所地下化完了
後の2009年度着工、2012年度竣工となる予定です(もちろん延期
される可能性はありますが)。
順調に進むことを祈りつつ、今後具体化される新中原図書館の概要
をウォッチしていきたいと思います。
■現在の中原図書館
【関連リンク】
川口市メディアセブン 公式ウェブサイト
武蔵小杉ライフ:再開発情報:小杉駅南部地区A地区
2008/5/3エントリ 中原変電所工事の建造物
2008/7/12エントリ 中原変電所工事の建造物・2008年7月
2008/8/28エントリ 東急武蔵小杉駅舎上部開発と東西街区
2009/1/13エントリ 東京急行電鉄、武蔵小杉駅ビルへ動く
2009/1/15エントリ 武蔵小杉ライフ版「武蔵小杉に関するアンケート」
2009/3/13エントリ 「武蔵小杉に関するアンケート」集計結果レポート
2009/6/30エントリ 中原変電所地下化工事の地上に貯水槽出現
2009/7/23エントリ 中原図書館の食事スペースと階段席
2009/8/10エントリ 武蔵小杉駅南口地区西街区の駐輪場移転、
道路整備工事着工へ