2012/5/13エントリ、2012/5/15エントリにおいて、綱島街道が南武線を
またぐ上丸子跨線橋の完成が2018年度まで遅延したことをお伝え
しました。
上丸子跨線橋の工事は2008年に着工し、2012年度には完成する
予定とされていましたが、隣接する東海道新幹線への影響が懸念
されたことから、JR東海との調整が難航し、工事が停止している
状況でした。
このたび、完成遅延が確定するに至るまでの経緯(川崎市見解に
よる)が確認できましたので、お伝えします。
■上丸子跨線橋
■上丸子跨線橋拡幅工事の経緯
2000年度~: JR東日本協議開始
2003年2月: JR東海計画協議開始
2003年7月: JR東海協議回答
2005年度: JR東日本概略設計実施
2006年度: JR東日本詳細設計実施
2007年3月: 川崎市からJR東海に対し事業計画の一部変更に
伴う計画変更協議依頼
2007年5月: JR東海計画変更協議回答
2007年11月: JR東日本と工事施行協定締結
2007年12月: 地元説明会開催(1回目)
2008年4月: 支障移設工、仮管路橋設置工事着手
2008年5月: JR東海実施協議開始
2008年6月: JR東海より、計画の施工方法では東海道新幹線へ
与える影響が大きいため、JR東海の指定する
施工方法及び厳しい施工条件が示される
2008年7月: JR東海の指定工法をJR東日本が検討した結果
、 多大な事業期間の変更及び多大な事業費の増加が
生じる可能性があると報告を受ける
2008年8月: JR東日本との協議の結果、東海道新幹線への影響
縮小に向けた工法を検討することに
2008年8月: 地元説明会開催(2回目)
2008年度~: 新駅工事、連絡通路工事、人道地下通路工事及び
区画整理事業等が開始し、騒音・振動の低減について
周辺住民から10月以降多数の要望が入る
2009年5月: 川崎市からJR東日本に対し、新幹線への影響低減の
ほか、施工中の騒音・振動レベルの低減を図る工法を
選定するよう依頼
2009年8月: 仮管路橋設置工事完了
2010年5月: JR東海と工法変更について事前協議開始
2011年3月: 工法変更に時間を要していることから、JR東日本と
変更工事施行協定を締結(1年間の工事延期)
2011年7月: 川崎市がJR東日本より工法の見直し案の提示受ける
2011年8月: 川崎市がJR東日本に対し最良案の詳細設計を依頼
2011年8月: 地元説明会開催(3回目)
2012年3月: JR東日本より工法変更に伴う詳細な説明を川崎市が
精査し、妥当と判断
上記は前述の通り川崎市による見解ですので、今後JR東日本
およびJR東海から異なる見解が示される可能性がないとはいえ
ません。
こういった問題では、「言った、言わない」の水掛け論に始まり、
関係当事者がお互いに責任のなすりあいをするケースが一般には
多いですね。
一方当事者のみの見解を鵜呑みにはできないことをあらかじめ
ご留意ください。
経緯のうち、重要と思われるポイントは赤文字にしています。
やはり最大のポイントは、2008年6月から8月にかけての時期で
しょう。
■2008年6月から8月にかけての動き
①JR東海が指定する工法と厳しい施工条件が示される
②JR東日本がその工法及び条件では大幅な工期延長と多額の
費用増額となる可能性を伝達する
③JR東日本と新幹線への影響を低減する工法検討を開始
この2008年の時点で、すでに拡幅時期の大幅な遅延見込みは
明らかだったものと思われます。
■JR東海が影響を懸念した東海道新幹線と上丸子跨線橋
もう1点、新たな話として、今回の工法変更は近隣住民からの
騒音・振動低減要望にも応えたものでもある、との川崎市の見解が
確認されました。
新駅工事等の駅周辺工事が本格化した2008年以降、騒音・
振動等に関して周辺住民より多数の意見が寄せられ、これを
受けて2009年5月に工法の選定をJR東日本に依頼した、という部分
です。
今回採用された工法では杭施工がなくなるため、工事中の騒音・
振動が軽減されます。また、工事完了後は住宅地近くが鋼管杭
擁壁となることにより、橋梁の継ぎ目で発生する騒音・振動が
軽減される見込みとされています。
協議の途中、近隣説明会も3回行われていますので、それらの
場において、工法については説明が行われていたのでしょう。
おそらくは、工期の遅延についてもある程度の状況説明があった
ものと思われます。
ただ、これはあくまでも工事近隣居住者向けの限定された説明会
であり、上丸子跨線橋を利用する幅広い市民、関連当事者に
対して発表や説明が行われたものではありません。
また、工事がさらに長期間にわたることを周辺住民の皆さんが
積極的に望んだとは考えにくく、ここに来て騒音・振動低減の話を
跨線橋完成遅延の問題に絡めてきたのは、少々川崎市側の言い訳
めいて聞こえます。
■上丸子跨線橋の下をくぐる南武線
全体として経緯を見ると、2008年6月にJR東海から「厳しい条件」
が示されて以降、今日に至るまで約4年近く工法の協議に時間を
要したことになります。
また、2003年2月のJR東海とのファーストコンタクトから「厳しい
条件」の提示までは5年4ヶ月の年月が経過しています。
この年月があれば、より早い段階でのしかるべき工法の確認が
不可能であった、とは考えにくいのではないでしょうか。
川崎市と、JR東日本、JR東海との三者間協議は決して簡単では
なかったと思いますが、市民に向けた適時の情報開示も含め、
疑問を感じざるを得ないところです。
※ ※ ※
今後、5月下旬には、新たな工法に基づく上丸子跨線橋拡幅工事
に関し、近隣住民向けの説明会が行われる予定です。
ただ、綱島街道は主要な幹線道路であり、周辺ではこの拡幅を
想定した大規模再開発事業が進められています。
川崎市民はもとより、綱島街道を通過するだけの市外関係者に
とっても幅広くかかわりのある事案です。
今回の工法変更では新たに工費が約27億円加算される見込みでも
ありますし、その費用は結局のところ川崎市民が負担することになる
ものと思われます。
その意味で、川崎市民全体が当事者といえるでしょう。
6月に開催される川崎市議会では、いずれにせよ本事案が取り
上げられるものと思いますが、代表質問で聞かれたから答弁する
ということではなく、早い段階での公式なリリースが望まれるところ
です。
■上丸子跨線橋と鉄道路線
【関連リンク】
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2008/9/1エントリ 綱島街道の陸橋拡幅工事開始
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