2010/9/18エントリで、
武蔵小杉駅南口地区西街区の権利床と
テナントについて、コメントの返信で行きがかり上簡単に言及して
おりました。
かなり前からいずれあらためて、と考えていたのですが、そろそろ
一度整理しておこうと思います。
■建設が進む武蔵小杉駅南口地区西街区の再開発ビル
現状を押さえるには、まず
西街区の再開発スキームをおさらいする
必要があります。
武蔵小杉駅南口地区西街区は、
組合施行による再開発事業であり、
地区内の複数の地権者の権利を一旦再開発組合に集約したのち、
従来地権者が保有していた権利と等価で再開発ビルの床の権利を
再分配しています。
この行為を
「権利変換」といい、地権者に分配される再開発ビルの
床を
「権利床」といいます。
再開発スキームによって土地が集約され、高さ制限や容積率の
緩和などのメリットも享受するなどして事業が大型化しますので、
再開発ビルには、
従来の地権者による「権利床」を上回る延床
面積が生み出されます。
この床は再開発組合によってデベロッパーなどに売却されることに
なり、再開発の事業費を賄うことになるわけですが、この床のことを
「保留床」といいます。
保留床は再開発組合(が委託する特定業務代行者)によって売却
など処分されますので、これは現段階でどうなるかはわかりません。
一方、
権利床については、当初の所有者から別の事業者に売却や
賃貸がなされる可能性はありつつも、とりあえずの所有者をトレース
することができます。
・・・では、
西街区の地権者とは誰かという話ですが、
名義としては
39に分割されており、主だったところでは、
■東京急行電鉄
■東京電力・東電不動産(旧東新ビルディング)
■パチンコ店「KOSUGI PLAZA」のビル(個人)
■川崎市
■マルエツ開発
といったところであり、その他は個人の方が権利を保有されてい
ます。
西街区のタワーマンション
「エクラスタワー武蔵小杉」には、あらか
じめ地権者の方に割り当てられている「地権者住戸」が40戸あり
ますので、上記のうち
個人の方の多くは、この地権者住戸を取得
していることになります。
なお、地権者39に対して地権者住戸が40戸と数が合いませんが、
これは個人地権者1名=地権者住戸1戸ではなく、
個人地権者1名
が複数戸を地権者住戸として持っているケースがあることを確認
しています。
個人の方の大半を除くと、西街区の商業施設で事業を営む可能性
があるのは、上記でピックアップした5者ということになるでしょう。
■東京電力・東電不動産が保有していた中原変電所
順番に
権利床保有者の状況を整理して行きますと、まず、
東京急行
電鉄は現状の南口の駅前広場など駅施設にかかる土地を保有、
東京電力・東電不動産は中原変電所の土地を保有しているものです。
両グループは西街区のタワーマンション
「エクラスタワー武蔵小杉」
の売主となっており、権利床の少なくとも一部がエクラスタワー分と
して変換され、それを分譲販売することで利益を得ることになって
いるものと思います。
加えて商業施設部分にも権利床の持分を残したり、あるいは保留
床を追加取得したりして、自グループのテナントを出店したり、テナ
ント貸しなどをする可能性もありますので、このあたりはまだよくわか
っていないところです。
■パチンコ店「KOSUGI PLAZA」のビル
続いて
パチンコ店「KOSUGI PLAZA」やマンガ喫茶の入ったビルは、
そのまま西街区の再開発ビルの南端に移転するような格好になる
ことがわかっています。
パチンコ店が再開発ビル1階南端に入居することについては確定
した話で、その
上層フロアにも「アミューズメント系」のテナントが入る
とのことですので、ある程度展開が想像しやすいところです。
3番目の
川崎市ですが、これは中原変電所と旧こすぎFROMの間
の
小杉第一公園を保有していたものです。川崎市は西街区では
新中原図書館の整備を行いますが、これは別途保留床を取得して
おり(
2010/12/8エントリ)、
土地の権利ついては、そのまま小杉第一
公園の敷地南側への移設に使われるものと思われます。
■「こすぎFROM」のあった北側エリア
最後は
マルエツ開発で、これは
従前の「こすぎFROM」を保有して
いたものです。
マルエツ開発はエクラスタワー武蔵小杉の売主には入っていま
せんし、地権者住戸を単発で取得して賃貸したりということもほぼ
考えられませんので、
権利床を純粋に商業施設のテナント持分と
して活用することになります。
マルエツ開発の自グループのテナントを入れるか、他社のテナント
を入れるか、あるいはそもそも売却してしまうか、という3択になり
ますが、駅前の価値の高い土地ですので、財務的に困窮してい
ない限りは売却は無いであろう、と思います。
■小杉町3丁目東地区のマルエツ小杉店
マルエツ系といえば、すぐ近隣の
小杉町3丁目東地区も再開発が
計画されており、現状のマルエツ小杉店の土地は都市計画道路
予定地となっていますので、この
マルエツ小杉店を移転させると
いったアレンジも可能性としては想定が可能です。
西街区のテナントに関して現状わかっている情報としては、エクラス
タワー武蔵小杉の分譲告知により、
西街区の商業施設の1階には
スーパーマーケットが入居することが明らかになっています(
2010/
9/18エントリ)。
大口の地権者であるマルエツ開発は基本的には再開発ビルの
有利な場所を確保するであろうことを考え合わせると、この1階
店舗をマルエツ開発が取得するというのは、違和感ないところで
はありますね。
また、
権利床を持っているにもかかわらずみすみす競合他社の
スーパー出店を駅前に許してしまうというのも、マルエツの立場を
考えればあまり上手くない展開です。
ただ一方で
東京急行電鉄も系列スーパーを有するという点では
立場的に近いものがあります。
最終的なスーパーマーケットの事業者はがどこになるかは、
現時点では公表されていません。
※ ※ ※
現状はおおよそこんなところです。
商業施設についてまとめると、
■パチンコ店+アミューズメント系が確定
■1階はパチンコ店とスーパーマーケット
■マルエツ開発が何らかのテナントを展開することが有力
■その他の保留床の取得先は不明
というところになりますね。
今後の権利床・保留床のゆくえについても、引き続きウォッチして
いきたいと思います。
■西街区再開発ビルの平面図
【関連リンク】
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