武蔵小杉ブログ(武蔵小杉ライフ 公式ブログ)

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2011年
12月03日

アリオ武蔵小杉の建設と、パークシティ武蔵小杉の用途地域変更

hatsushimo.gif

現在、東京機械製作所玉川製造所跡地に、大型複合商業施設
「アリオ武蔵小杉」を建設するための環境アセスメント
が進められ
ています。
アリオ武蔵小杉は、高さ31m、最高部40mの建物として計画され
ていますが、これを進めるにあたり、北側のパークシティ武蔵小杉
の用地が「第二種住居地域」
であることがハードルとなっています。

■アリオ武蔵小杉のイメージパース
アリオ武蔵小杉のイメージパース

第二種住居地域は、4m水平面で冬至8時~16時の間の日陰が
3時間未満となるよう日照が保証
されています。この規定に照らす
と、現在の計画のアリオ武蔵小杉の建築許可を出すことができ
ません。


■川崎市まちづくり局 川崎都市計画用途地域の変更(小杉駅
南部地区)の素案

http://www.city.kawasaki.jp/50/50tosike/home/
osirase/tosikeikaku/sinmaruko_h23/soan/
soan_youto_sinmaruko_h23.htm


これを解消するために、川崎市まちづくり局はパークシティ武蔵
小杉を第二種住居地域から「商業地域」に変更する都市計画の
変更
を打ち出しています。
商業地域は前述のような日照の保証がありませんので、アリオ
武蔵小杉の建設が可能
となる、というわけです。

■アリオ武蔵小杉建設予定地とパークシティ武蔵小杉
アリオ武蔵小杉建設予定地とパークシティ武蔵小杉

川崎市まちづくり局はこの用途地域の変更を「従来からの周知事項」
であるとしていますが、この点について、これまでの都市計画マス
タープランなど行政文書において当該記述は見受けられませんで
したし、
私も正直なところ聞いたことがありませんでした。

これを受けて、2011年11月26日に開催された都市計画公聴会
では、パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー管理組合が公述人
として立ち、用途変更にあたっての代替案を提示されていました。

       ※       ※       ※

<公述申述書の要旨>※公述は一般に公開されているものです。
1.建築基準法第56条の2第1項 ただし書適用を求める件

■これまで行政はミッドスカイタワー敷地を商業地域に用途変更
することは既決定であり、周知事項と説明してきた。しかしミッド
スカイタワーが販売された平成20年以前に川崎市が発表した
行政文書のどこにも当該記述は見当たらない。
■用途地域が第二種住居地域であることに着目してミッドスカイ
タワーを購入された者も相当数認められる。
■本年8月末になって初めて川崎市まちづくり局職員より、管理
組合に対して非公式の打診を受けた。我々の要請に応える形で
9月30日に区分所有者向けの非公式説明会を実施した。
■上記において、区分所有者が納得できる説明はなされていない。
■以上の経緯に鑑み、多くの区分所有者にとっては、商業地域
への用途変更は予見可能な事情と解することは困難である。

■そこで我々は川崎市に対し用途地域の変更の撤回を求めるが、
東京機械製作所再開発事業の遅延は本意でない。また、無限の
将来にわたって現在の用途地域の維持を求めるものではない。
■我々が主張しているのは、これまで享受してきた第二種住居
地域としての法益を奪う前に、他の代替措置を検討し、当該代替
措置では、都市計画行政の目的を遂行する上で、重大な公益
侵害があること若しくは他の利害関係者に対して回復しがたい
急迫な権益侵害があることを実証したうえで、利害関係人からの
理解を得る必要があると言っているに過ぎない。
■しかしながら、これまで川崎市からは、このような実証的な
説明はなされていない。

■そこで我々は代替措置として、建築基準法第56条の2第1項
「ただし書」の適用を提案する。当該措置は既存住民の法益を
変更せずに東京機械製作所再開発を可能とする、有力な代替
措置と考えるからである。

■これに対して、川崎市は先例がないとの理由から消極的な
姿勢を示している。
■ところが、ミッドスカイタワー自体が、この「ただし書」の適用に
よって建築許可が下ろされている。「ただし書」の適用により、
北側隣接地域を第二種住居地域から変更せずにミッドスカイ
タワーが建設されたわけで、全くの同条件でないにせよ先例
は存在している。
■住民自身が考えた行政法規上の具体的なカウンター提案をも
拒否し、住民から十分な納得も得られないままで、用途地域
変更を遂行するのが、果たして望ましい自治体行政なのか、
川崎市並びに関係行政官庁は真剣に考えていただきたい。

2.建築基準法第69条などに定める建築協定に関する件
■第一の主張である「建築基準法第56条の2第1項 ただし書適用
を求める件」が実現するか否かとは別に、次の点を主張したい。
■これまで事業主の東京機械製作所さんと、快適な居住性と利便
性の高い商業機能の共存のため、建築基準法第69条に基づく
建築協定実現に向けて作業を進めてきており、当事者間合意に
向けての調整は最終段階に達している。
■建築協定の内容には、ミッドスカイタワーの居住階層住民の
日照状態に関して、地表12m平面で冬至8時~16時の間の日陰
が3時間未満とする等も含めている。
■さらに、将来当事者が変更しても互いに協定の効果が持続する
ことが法律上担保された特殊な協定であり、川崎市の認可が
必要である。
■仮に第一の主張が不調に終わり、ミッドスカイタワー敷地が商業
地域に変更されたとしても、本協定は東京機械製作所再開発
事業での建物が及ぼす日照に関しては、ミッドスカイタワー
居住者が最低限の日照状態を確保するための制度的手当てで
ある。
■川崎市からは、先の住民説明会においても「できるかぎりの
支援はする」とのお言葉をいただいている。
■川崎市に対して、当該建築協定の実現に向けて、積極的かつ
前向きな指導をするとともに、申請後は速やかな認可を行うよう
要請する。

       ※       ※       ※

公述申述書の内容(要旨)は、以上です。
上記では、用途地域の変更の予見が可能であったとは解釈できず、
用途地域の変更撤回を求める一方で、東京機械製作所の再開発の
遅延を望むものではない
としています。

そこで双方の利害を調整するために提案されたのが「建築基準
法第56条の2第1項 ただし書」
の適用です。
これは、日影規制に抵触しつつも例外的に建築許可を認めるという
方策
であり、パークシティ武蔵小杉の用途地域を第二種住居地域
から変更せずにアリオ武蔵小杉を建設することが可能
となるもの
です。

この適用では、具体的にはミッドスカイタワーの4階(居住層)以上
には所定の日陰規制を敷き、それ以下は受忍する
ということになり
ます。
用途地域が商業施設に変更されますと一気に日照の担保がなく
なりますが、最低限の担保は維持しつつ、隣接地の再開発事業の
推進は可能となる、というプラン
です。

■ミッドスカイタワーの南側(写真右手が東京機械製作所)
ミッドスカイタワーの南側(写真右手が東京機械製作所)

公述申述書にある「前例」とは、ミッドスカイタワー建設時にこの
「ただし書」が適用
されたというものです。

ミッドスカイタワーは、これを建設することにより北側のフーディアム
武蔵小杉(同様に第二種住居地域)への日照が不足
となるため、
そのままでは建築許可を下すことができませんでした。
ここで「ただし書」を適用することにより、建築許可を下したわけです。

その際の許可理由は、「フーディアムは第二種住居地域であっても
住居ではないため、影響が少ない」
ということによるものでした。

■「ただし書」が適用されたフーディアム武蔵小杉
「ただし書」が適用されたフーディアム武蔵小杉

       ※       ※       ※

もうひとつ、「2.建築基準法第69条などに定める建築協定に
関する件」
として後半に記載されているのは、前述の「ただし書」の
提案が受け入れられなかった場合の「次善の策」ともいえるもの
です。

これは川崎市の認可のもと、東京機械製作所とミッドスカイタワーの
間で独自に建築協定を交わすもので、公述申述書にもある通り、
当事者が変更になっても有効
となるものです。

当事者である東京機械製作所の業績、経営状況はたいへんに
厳しいものがあり、将来的にはアリオ武蔵小杉も第三者に売却
される可能性
が否定できません。
そうなった際、こういった公的に認められた協定が重要ということ
ではないでしょうか。

       ※       ※       ※

いずれにしましても、川崎市においては、本件に限らず十分に
情報提供を行ったうえで都市計画を進めていってほしい
ところです。
パークシティ武蔵小杉の用地の用途変更については、当然ながら
「従来から既決定で周知事項」であったエビデンスが求められまし
たが、回答は「それはないが、うちうちでは決めていた」というもの
でした。

それではさすがに、理解を得ることは難しいのでは…と思う次第
です。

都市計画に当たって利害が衝突したりするのは当然おこること
ですので、やはり行政が情報は速やかに出していくこと、早い段階
で話し合いの場を持つこと、柔軟性を保つこと
が大切かと思います。

【関連リンク】
武蔵小杉ライフ:再開発情報:東京機械製作所地区(大規模工場
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